
皆様お世話になっております。2019年から2021年にかけてSOLAHANPU薄い財布Tenuis 3 及び Tenuis 3 Leather TL をクラウドファンディングでご支援して頂いた方へ当時の遅延や品質問題についての大切なお知らせがございます。ご支援して頂いた皆様に明確な説明をしておらず数年が過ぎてしまいましたが生産体制が改善した現在の状況ならば改めてお伝えする事が出来ると思いお知らせさせて頂くに至りました。
2019年8月より始まった弊社薄い財布Tenuis 3 のキャンペーンは10月の最終日には4,633名の方から44,039,903円ものご支援を頂き大成功をおさめる事ができました。これはまさに皆様からの共感や応援を頂き、その気持ちが一丸となってご支援という形として現れた結果だと当時も今も思っております。しかしながら当時はお約束の納品時期から4か月以上の遅延、及び品質に関する問題、何より皆様を不安なお気持ちにさせてしまった事等、全て弊社の至らなかった反省すべき点であり、心より深くお詫び申し上げます。
生産体制の変化
SOLAHANPUは2016年より日本で正式に活動を始めましたが、初期の頃はまだ売れる数量が多くなかったので小数名の職人生産体制、2017年後半よりかばん製品を導入すると同時に販売数量も増えてきたので台湾工場での生産に移行、しかし品質や材料及び遅延の問題が発生し始め2019年中頃には生産体制改善の必要性を感じ始めました。実はその間の2018年に生産拠点を求めタイで10日間ほど10社の工場と交渉しに行ったのですが色々な理由により結果的に取引できるところは見つかりませんでした。更に遡り2010年頃から日本関東地域で工場探しをしていましたがこちらの製品をうまく生産できるところは見つかりませんでした。そして現在、2023年以降はようやく日本で品質、納期、ある程度のロットが生産できる工場と提携し現在は生産体制が過去最良の状態になっておりようやく皆様に、そして弊社にとっても納得いく形が出来上がって来てはいるものの、単純に日本生産だからよくなったわけでは無い経緯がございます。無論当時のクラウドファンディングでは海外生産による負の面の影響が大きく皆様に甚大なご迷惑をおかけしてしまったのは事実であり多くの方よりお叱りを受けた事も真摯に受け止めさせて頂いておりますが、2010年より2022年まで弊社が掛け合った日本工場でも細部が制作できない工場も少なくなく、日本国内だけでも本当に提携できる工場を見つけるのに大変な思いをしてきました。
Tenuis3キャンペーンについて ‐ 2019年
そして2019年、以前の国内少人数職人生産に戻すか他の方法にするか検討していた際Tenuis3のキャンペーンの支援数がこちらの予想をはるかに超えて増えていくと同時に対応できる生産方法を検討したところ中国の工場に行きつきました。なぜ中国かというと、弊社スタッフのうち2名は中国に10年以上滞在したことがあり、2010年ごろ現地の工場で最初は失敗もあったものの次第にある程度の生産が出来た経験及び世界各国のブランドもの等質の良い生産ができる工場がある事も把握していたつもりだったので当キャンペーンが終了する前から現地に飛び何社か良さそうなところと交渉し試作まで進めました。通常、2,3回ほどの試作を経て問題無ければ本生産依頼、契約となります。そして契約をした1社で本生産を始め途中経過のその年の11月、12月は都度日本から現地に飛び状況確認に行っていましたが、材料遅延、裁断遅延、 生産に入ってからも試作ではきれいに出来ていたのに本生産ではカードポケットの折り作業、縫い付け作業がうまく行かない等の状況が発生し、何度か繰り返すうちに時間がかかり全体進行度が遅れ気味になっていきました。
そして2020年1月初旬、再度中国広東省広州の工場へ視察に行ったところ、例のコロナ騒動がついに始まってしまいました。その頃すでに中国では大きな騒ぎになっており、国内移動や国外へ出るのもいくつもの検問で健康申告票やらを記入、なんとか日本に戻る事が出来ましたがその後は世界中の人々が知る通り各国間移動や特に中国への移動はほぼ不可となりました。これ以降はリモートでのやりとりとなり、こちらが指摘した工場が出来るか出来ないか危うい部分の部分完成品等を中国、日本間で送りあい確認、指示という繰り返しが続きましたが正直ある程度改善してもいざこちらが見ていない部分の生産となると確認しようがなく、現地の日系品質管理業者と提携するも結局細かいところまで見れないので「確認」という言葉が形骸化し最終的な完成品を待つしかできない状況となってしまいました。
材料を送りあう事もコロナの影響で遅延、価格高騰、そして工場でコロナでの工場休業命令等があったりと災難が続きました。しかしながらコロナの影響はむしろ間接的であり一番の問題は工場で試作通りの良い品質の生産が出来ない、何度もやり直してるうちに遅延、それ以外の原因でも単純に遅延、と当時何名かの方に「ちゃんと管理ができていない」とお叱りを受けましたが実際のところ該当工場に本生産を任せた時点で既に弊社の管理下ではなく、完全に工場独自の裁量で全て決められる状況になっておりました。決して弊社に責任が無いと言っているわけではなく、皆様に対してはあくまで弊社の責任ですが実際の状況をお伝えさせて頂くという点で説明させて頂いております。当時はほぼ毎日ビデオチャット、メール、電話等で工場と連絡をとってはおりましたが工場側の曖昧な回答が多く、進行度やちゃんとできているかという点が全く分からない状況が続きました。その後も時間だけが過ぎていき2020年4月から5月にかけようやく工場で生産が終わり工場自身や品質管理業者等の検品を経たとしても不安な気持ちでいっぱいだったのを覚えております。工場から弊社への出荷前に弊社自ら検品する事ができない、工場には前金の50%を契約時に払っており残り全額支払わないと日本へ発送してくれない状況だったので仕方なく全額支払いをし、完成品を全て日本に送ってもらう事にしました。
しかしながら。。。受け取った品物を開けてみると、理想とは程遠い品質の製品が何千個も弊社スタッフの目の前に広がりました。事前にあれだけやり直ししたカードポケットの端の輪郭合わせ、中間をまっすぐ縫う線、コインポケットのファスナーの付け方、全体的にのりがはみ出している、表面帆布にシミや傷がある等、さらにコインポケットディバイダー用、隠しポケット縁用としてこちらが供給した日本製PP(ポリプロピレン素材)が中国製の低品質なものにすり替えられていた等、すべての面で一定基準未満だと感じました。(日本製のものは片面がつや無しで程よいしなりがありそう簡単に折れません、中国製のものは最初から硬く、両面ともつやが強く割れやすい)スタッフ一同頭が真っ白になり工場側と部分やり直し、再生産、材料および金銭面での補償などについて話し合いましたが全く話が進まず話は終了、契約内容では不備があった場合の対応や補償について記載がありますが工場側がそもそも品質に関して不備自体が存在しない、遅延に関してもコロナ状況なのに苦労して対応してあげた、と主張していたのでこれ以上の話が出来ず終わってしまいました。こちらとしても既にここまで皆様をお待たせしている、この生産に既に資金の大半をつぎ込んでいる、他に生産できる方法が無い事から手元にある中から本当に財布として機能しないものだけを抜き取ってから皆様にお届けするという決定をさせて頂きました。当然の事ながら多くの方より厳しいご意見を頂いた事を鮮明に覚えております。これまで各段階の状況についてもこちらから活動報告で皆様にはっきりした回答が出来なかったも生産状況が把握できない、もしくは簡単なところで何度もやり直し等の状況が続いたからというのが一つの理由ですが正直こんなめちゃくちゃな状況を皆様にお伝えしていいものかどうか相当迷い、当時は敢えて説明しないという選択をしてしまいました。今思えばこういう状況だとしてもやはりお伝えした方が良かったのか等この点についても深く反省しております。
Tenuis3 Leather TLキャンペーンについて‐ 2021年
当キャンペーンは2021年4月から6月まで開催、2409名の方より23,973,570円ものご支援獲得、同年12月にお届けの予定でした。まだコロナ状況が続いており海外に行けない状況ではありましたが前回の工場との提携は考えず、コロナ前に現地に行き直接交渉したことがある別の工場での生産に決めました。前回もこの工場もどちらも世界的に有名なブランドを生産しているのと前回よりも規模が大きい事から今度こそ大丈夫だろうと言う思いで決定に至りました。
試作や話し合い、契約を終え、本生産作業の始まりですがここからスムーズに行かなくなりました。まずは弊社自体のミスでキャンペーン終了後すぐの7月初旬にイタリア革タンナー(革メーカー)に発注をしましたが、量が多いのとイタリアでは8月いっぱいほとんどの企業が夏季休暇らしく9月初旬の発送となると聞きました。発注量に比例する準備時間及び現地の夏休みを計算していなかった点は弊社のミスとなります。しかしながらイタリア現地でも9月初旬の発送予定がなぜか準備開始になっており結局9月末まで待つ事が必須となり、更に10月初旬にイタリアから中国工場に向けて発送した革材料が中国通関で引っかかり、工場の担当者も積極的に輸入受け入れの為の通関手続きに協力してくれず、結局10月中旬に工場に届く事となりました。
工場に先に到着していた財布内側の山羊革部分の裁断及び制作は既に始まっていたのですが類似製品生産時の前の工場と同じくカードポケットの部分に関してはやはり試作時は良くても本生産ではうまく行っていない状況が発生し、何度か抜き打ちで半完成品を送ってもらいこちらで確認、指示をしてまたやり直すという作業を何回かしてるうちに恐らく2年前の別工場での状況と同じになってしまうという懸念が芽生えました。その後話し合い、やり直しを重ねましたがそれでもうまく行かず工場側も次第に「試作でうまくいっても本生産では質が落ちて当たり前、細かい要求ばかりで困る、外国の客は品質に関して口うるさい」と投げやりになっていきました。そこで途中まで一つの工場で進めてきた結果、苦渋の決断ですが別の工場に引き継いでもらい生産をと考えました。しかし現工場が全ての材料を保管、こちらも前金を既に支払っている、コロナ状況なので現地まで飛べない等、交渉するにはこちらに不利な状況だでした。本来の契約内容に則ってのこちらの要求など受け入れられず結局生産が全行程完成していないのに前金に加えある程度の違約金の様なものを支払わないと材料を転送してくれないという状況になってしまいました。それでもここでは生産完成が出来ないと判断したので以前提携のあった台湾工場に移すことにしました。
この台湾工場でも2017年の提携初期のころ品質問題が発生、その後品質は改善されたが納期遅延問題がひどく2019年中ごろまでで提携は終了しておりましたが、2021年のこの状況で中国で散々な目にあったばかりだったので人間同士の交流は中国企業よりある程度まともに出来る(あくまで個人的見解ですが中国での商取引は問題時に感情的になり喧嘩、挑戦的な態度を取られることが多いと感じています)ととらえていた弊社はこの台湾工場に依頼するしかないという判断に至りました。しかしこれもこれでまた別の問題を引き起こしてしまう事となります。
2021年年末から2022年年始にかけ中国から無事に全ての材料輸送を終え、台湾工場で途中工程から引継ぎとなりましたがここである問題が浮上しました。既に裁断してある全ての部品の大きさがこちらが用意した各部品の寸法図と違うと報告を受け、1つずつ照合確認してみると確かにいくつかの部品が抜型通りでは無いようでした。本来全ての部品寸法は弊社で決め、そのデータを渡して工場が抜型と呼ばれる裁断用の型をさらに別の業者に発注するのがおおまかな流れなのですが、前の中国工場に確認すると最初はこちらのデータ通りの抜型を作成したはずという回答でしたが、更に追求すると「データ通りにやるより全ての部品をある程度大きめに裁断し、後でまとめて決まった抜き型で裁断した方が効率が良かったからこうした」という回答が返ってきて弊社としては本来データ通りに裁断して組み立てる流れを説明し工場側も納得し始めたのにも関わらず状況が良く理解できませんでした。制作するものによってはそういうやりかたも有効かもしれませんが最低でも弊社の該当財布、更に制作方法を双方確認し約束した状況下だったので、既に大きな問題が発生しいる状況で更なる打撃でした。
なので台湾工場ではそのまま貼り付けるにしてもサイズが合わないので、革を無理やり引っ張って合わせるか更に裁断しないといけないかの状況になってしまいました。結局裁断する事にしましたがすでにある程度裁断してあるので例として薄く柔らかい山羊革の端3mmだけを裁断しなけれればならない等ここでも新たな本来不要な作業が発生しました。全て手作業で何とか裁断した後、部品の貼り合わせを行うのですが結局中国での最初の裁断の影響なのか、はたまた台湾工場での貼り合わせが単純に出来ないのか、どちらにしても貼り合わせの精度、中国工場と同じカードポケット部分の作業等、台湾工場でもうまく出来ないという状況が顕著になってきました。途中経過を見るため、例により半完成品の郵送でのやりとりで数百個の抜き打ち検査、指示等を何度か実施、しかし結果的に我々が見た数百個は問題無かったとしても見なかった部分に関してはやはり最終的に品質問題になってしまいました。中国工場、台湾工場それぞれ出来るところ出来ないところがあり、総合的にはどっちもどっちだと感じましたが台湾工場に関しては中国よりも納期概念が無く、2021年1月から完成の6月まで、本当にこちらも途中進行度が全く分からない状況が続いており、こちらから皆様へ通知する活動報告でも当時明確なお知らせが出来ず大変心苦しい情況でございました。連絡自体は取れていたのですが伝達事項が曖昧で既に終わったと報告を受けていた工程が実は終わっていなかった、後〇か月、〇週間内には終わると言う情報もいつも曖昧で次の報告時にはまた全く別の回答になっている等です。かといって全く工場側と連携が取れていない、無視されている、はぐらかされている等の内容は更なる不安を煽ってしまうと考え、結局何もうまく伝えられず曖昧な状況のまま皆様を予定時期より半年も遅れ、大変長くお待たせしてしまうという一大惨事となってしまいました。今思えばこれも正直にお伝えした方が良かったかもしれません。
そして同年6月ようやく必死の思いで待ち続けた完成品が日本に届きました。しかし、、、前回中国の時と同様、またしても理想には程遠い品質となってしまいました。しかしながら後が無い状況なのでお客様に発送するしかないという判断をさせて頂きました。本当に本当に皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいで、メールにて厳しいお言葉を頂いたりと弊社にとっても痛恨の、本当に深いお詫びと反省の気持ちでいっぱいでした。
その後の生産体制の変化 - 2023年以降
その後2022年夏ごろ、海外生産での失敗からやはり日本国内で無いとだめでは無いかと思い、再度提携工場探しを始めました。数社を訪問しお話しさせて頂いたり、試作をお願いしたりしましたがやはりそう簡単ではありませんでした 。2010年頃の工場探しの際に既に分かっていた事ですが、日本の工場や企業であっても中国を始めアジア各国に委託生産、もしくは自社工場を海外に設置し生産のところが多い等、日本での縫製品の生産拠点は年々減っています。経済や人手等の影響がありますが日本は熟練の職人さんが高齢(細かい作業は難しい場合もあるようです)な事が多く、更に若い職人志望の方が育ちにくい等、絶対数が減っているので更に探しにくい業界だと思います。しかし探し続けるうちについに提携の可能性がありそうな1社が見つかりました。関東圏内、規模、品質、納期、交流等全ての面で良さそうなので2023年度より業務提携を始めました。海外工場であれだけ失敗が続き、日本国内でも「そもそも作り方に無理がある」と言う声がありましたが最終的にこれらを丁寧に生産できる工場が見つかりやはり弊社内で元々決めていた制作工程は問題無かったという結果になりました。これ以降に公開した製品のクラウドファンディングキャンペーンでは遅延や品質問題等は無く順調に進んでおります。ただ願わくばもっと早くにこういう生産体制を確立できていれば、特に2019年、2021年クラウドファンディングキャンペーン時にこんな生産体制がすでに整っていたら、、、等考えてしまいますが既に過ぎてしまった以上、この後悔の念を今後の改善と発展につなげていきたいと願います。しかし今後も妥協はせず、更なる生産速度の効率化や品質向上等を意識しつつ、SOLAHANPUを応援して頂いている皆様の「体験」にも注力していきたいと思っております。
最後に
工場生産に関して、アジア各国で見るような大手の日系企業が自社工場で管理、もしくは委託関係でも依頼側企業に実力があればある程度は海外工場での生産がうまくいくかもしれません。もしくはある程度は対応してくれたとしても弊社のTenuisの様な構造は海外では元から生産が難しかったのかもしれません。実際に今日本生産でようやくうまく行っているので弊社にとっては「日本では生産可能、海外では生産不可」が事実なのだと思います。
余談ですがかのユニクロに関する本を読んだことがあり、確か同社も以前中国やアジアで生産がうまく行かなかった時期があり最終的に海外現地工場は持たないが中国の大規模な数社の工場と提携、専属工場ではないので他社の製品も製造するがユニクロが月間もしくは年間でものすごい数量の発注をするという契約で、日本の自社から「匠チーム」の様な職人集団を現地工場に各10名ほど派遣して、もちろん該当工場との契約上許可されている行為なのでそこで生産現場を間近で見ながら品質管理を行うという方法を実践されているとの事でした。弊社とは直接関係の無い例ですが過去の大きな失敗を反省するとともに本当に色々な事を勉強していかないといけないと感じております。
ここまで長文となってしまいましがこの度の内容に関して、事実として工場と弊社間で起こった事をお伝えさせて頂いております。しかし皆様にとっては工場の問題は直接的ではなく、あくまで弊社のミスであり、皆様へお伝えする方法、タイミング、説明内容、お伝えすべき内容を伝えていなかった等、全てが至っておらず、ここまでの弊社の数々の失敗に関して大変深くお詫び申し上げます。お詫びしても皆様お一人お一人に弊社が与えてしまった裏切りの感覚、不信感、苛立ち、及び様々な負の面の印象等は簡単に消え去るものでは無い事は重々に承知しております。皆様にとっては今更ただの弁明及び迷惑になってしまうかもれませんがもしお読み頂けるのであれば弊社としても多少の使命は果たせた事になるかもしれないという気持ちで書かせて頂いております。
心より深くお詫び申し上げます。
ありがとうございました。





