こんにちは。
ゲームさんぽ制作チーム(白夜書房の佐藤)です。
支援者の皆様に、ゲームさんぽ本の作業工程とともに編集者の仕事を紹介する。そんなテーマを掲げてここまで文章を書いてきました。こうしてラストを迎えてみてあらためて思うのは、書くって大変だということ。
私の場合は誰の目も通さずに配信しているわけですが、作家さんやライターさんの立場になれば、自分の書いた原稿を編集者に読まれて意見を言われるなんて、ある意味地獄なのでは……自分が取材した原稿を上司に見せてよくダメ出しされたっけ、なんて過去の経験を思い出しました。
「原稿をもらったりデザインがあがったりしたら、なるべく早く感想とともに返信しろ」「編集者は24時間対応できてなんぼ(今のご時世だとアウトっすね……)」なんて言われたこともありますが、その意図もうっすら、ようやくわかったような気がします。
はい、サクッと本題に行きましょう。ゲームさんぽ本の製作を語る上で欠かせないのが、クラウドファンディングです。通常の本づくりに比べてイレギュラー要素の多いものとなりました。
その最たるものが、製作費に事実上の制限がかからなかったこと。第1回でお話ししましたが、本をつくるためには社内会議で企画を通す必要があります。企画内容や市場調査だけでなく、原価計算も必要です。本のサイズやページ数、部数と販売価格に対して、印税、編集費、紙代・印刷代など、必要経費を計算して、商品として成り立つかどうかを事前に計算するわけです。
つまり、会議が通った時点で、だいたいの体裁も予算も決まっています。ですから、「この原稿、めちゃくちゃおもしろいですね。100ページ増やしましょう」「ハードカバーにして豪華なつくりにしましょう」なんてことにはならないのです。
ところがクラウドファンディングで多くの方にご支援いただいたことで、当初の240ページから336ページ(フルカラー)に仕様が変更し、資料的価値の高い豪華仕様の限定版も製作することができました。
※詳細はこちらを! 特に限定版はクラファンによる製作費があったからこそ実現できた仕様でした
おまけに、CGクリエイターの榊原寛さんのインタビューも追加で収録。本書では唯一のゲーム制作者へのインタビュー(しかも超有名ゲームの『サイバーパンク2077』!)で、ゲーム制作の裏側を知ることができる貴重や資料として、本書がより充実した内容になりました。
とはいえ、クラウドファンディングの実施はこれまで経験のなかったことであり、進行管理の上では先の読めなさが大変な部分だったとも言えます。中でも、最後の最後まで総ページ数が決まらなかったこと、それに付随して台割を切ることができず、けっこうヒヤヒヤしたものです。
進行管理において、台割は非常に重要です。全部で何ページあるのか、どのページに何が載っているかなど、本づくりにおいて欠かせない設計図のようなものだからです(ちなみに台割をつくることを台割を切ると言います)。
ゲームさんぽ本では「何ページに収める必要がある」という制約がなかったために、「とりあえずデザイナーさんに本文を流し込んでもらって、様子を見てみよう」という判断になったわけですね。そうして336ページで落ち着いたのは2月に入ってからだったような……。
11月17日に「リターン発送遅延のお知らせとお詫び」という報告をしましたが、このときの私は「2月に入ってもページ数決まってないから」とは思いもしなかったことでしょう……。
私はこれまで、「編集は何を入れるかよりも、何を入れないか(優先するか)を考える」ことが大事だと思ってきました(これも上記の活動報告で書きました。1000文字の原稿を書いたら300文字にしろ、的な)。それは基本的には変わっていませんし、本書でも削った部分は多々あります(当初は終章にいいださんとなむさんによる「ふりかえり」の対話も入る予定だった)。
特に書籍は一つのテーマに絞って書かれるものなので、雑誌ほどあれもこれもといろいろな記事を盛り込むものではありません。同じ弁当でも幕の内弁当的なものはつくらないのです。それに、「なんでも自由にやっていいよ」と言われるよりも「ある程度の制約の中で考えるほうがアイデアは出やすい」とも思います。
それでも、こうして「増やし続ける」方向で本が完成してみると、やはり長いことには必然があると思うんですよね。ゲームさんぽ誕生の背景を掘り下げることも、10名の専門家の皆様にご登場いただいたのも、A5版で脚注がもりもり入っていることも、ゲームさんぽを書籍化するには必要不可欠な要素でした。
ふつうでは体験できない工程を見て知ることができ、個人的にも大変勉強になりました。だからといって、「これからの本づくりはクラファンだ!」と短絡的に考えたりはしません。ゲームさんぽが、なむさんが発明した2017年から今に至るまで、多くの人に愛されてきたからこそのクラファンの成功であり、同じことはそう簡単に再現できるものではないからです(何でもかんでもお願いベースではダメってことですね)。
というわけで、全6回に渡りゲームさんぽ本の作業工程をつまびらかにしながら(なったか?)、編集者の仕事を紹介してきました。その裏側を知ることで、少しでもゲームさんぽ本の楽しみ方が広がれば幸いです。