昨夜、NHKスペシャル「鯨獲りの海」が放送されましたが、みなさんご覧になりましたか。元NHKディレクターとして見た感想としては、まあ事前の予想通りでした。共同船舶の捕鯨船団に同乗してその航海を記録するというものでしたが、どうも担当ディレクターは捕鯨のことを事前にちゃんと勉強していなかった様子で、「ひと航海同乗すればなにか物語ができるだろう」くらいの感覚で取材してしまった感じ。ただただ鯨を撃つ過程を追っているのですが、「人の物語」になっていない。かろうじて砲手の世代交代のストーリーが織り込まれていましたが、彼らの背景や関係性、それに鯨に対する想いがきちんと描けていない。捕鯨の番組を作ることで、何を訴えたいのか。それが感じられず、当たり障りのないことを述べている感じ。鯨を撃つ瞬間はよく撮れていました。手に汗握る感じもあり、「鯨ってこうやって捕るんだ」ということがよくわかりました。ただ、人によっては残酷に映り、彼らをより反捕鯨に駆り立てる原動力になってしまったのではないかと危惧します。そしてより明らかになったのは、元南氷洋捕鯨であるいまの遠洋捕鯨は、日本の捕鯨の400年にわたる伝統や文化とはまったく関係がないということです。ただただ鯨を撃って、母船で解体し、肉として加工する。そこには古来日本人が抱いてきた鯨に対する畏敬の念がない。鯨が捕れたことを喜び、調理して味わう地域住民の姿がない。他の生物の命をいただいて生きることに、「いただきます」という言葉で感謝する日本人の心は、どこにも描けていませんでした。だから番組のスタンスとしても結局「これが日本の捕鯨だ、日本の文化として絶対に残すべきだ」という強いメッセージが出せなかったのです。迫りくる食糧危機のなかで、捕鯨の重要性は増していくことでしょう。しかしきのうの番組では、そもそも日本人にとって鯨とはなにか、を描き出すことはできていませんでした。ただ、鯨を撃つ瞬間をはじめ、あれだけ綿密に捕鯨を撮られてしまうと、「ひみつくじら」にとっても厳しいのは事実。今年の夏の撮影をどのように行うか、課題を突き付けられたような気がします。




