クラウドファンディングの開始から、1週間が経ちました。
開始からたくさんのご支援をいただき、ありがとうございます!
50個限定のバッグも、残り13個となりました。
また、より支援していただきやすくするため、¥1000のステッカープランをリターンとして追加しました。
併せてご確認をしていただけると幸いです。
さて、今日から定期的に、今回のTIMESIBLEでコレクションを発表するデザイナーに迫ったインタビュー記事を掲載いたします。
第1回は、大阿久晃輝(おおあくこうき)。ですがその前に、今回のTIMESIBLEのコレクションについて、説明をさせていただきます。
TIMESIBLEのポップアップでは、デザイナー5名が1つのコレクションを作り上げるのではなく、それぞれが別々にコレクションを作ります。
TIMESIBLEとしての服ではなく、デザイナー個人としての服を作ることで、ポップアップに来場してくださるみなさんがデザイナーそれぞれに注目し、応援できるようにしています。
しかし、せっかく集まったメンバーですので、それぞれのコレクションの抽象的なテーマは統一しています。今回は、
「私にとっての文化とは何か」です。
それぞれが「文化」という言葉から何を思うのか、連想するのか。そしてそれをどう表現するのか。
コレクションの全貌は、ポップアップ当日をお楽しみにしていてください。
インタビューでは、そんな彼自身のコレクションについてや、生い立ち、過去に製作した服についてなどの話を伺いました。
(聞き手 鈴木遼平)
和食作りが教えてくれたこと
___ まずは、現在通っているコースから教えて下さい。
ファッション高度専門士科に通っています。
___ ファッション高度専門士科は、どんなコース?
服作りについて、他のコースより多くのことを学べる。例えば、大量生産の方法だったりもね。他のコースより在学期間も長くて、4年間通います。そのため、卒業したとき、アパレルの知識で言えばスペシャリストになれる。
___ 文化服装学院へ進学を決めた経緯は?
生い立ちからゆっくり話すね。出身は栃木県で、中学校を卒業した後、料理を学ぶ学校に進学して、和食を学びました。小さい頃からご飯を作ることが好きで、進学当時は料理人になりたかったんです。
その学校を、いろいろあって辞めることになって。そこから、元々興味のあった服に本格的にハマった。服に関わる仕事がしたいと思ったのもこの時で、実は最初、販売員になりたかった。
ファッションのイロハは、地元のセレクトショップでオーナーをしている方が教えてくれた。その方は自分のブランドも持っていて、セレクトショップとしての話だけじゃなくて、作る側の視点から見た話もいろいろしてくれて、作る側の良さを知ったんだよね。
そんな時、文化服装学院でサマーセミナーという体験入学のようなイベントがあることを知って、参加してみたんです。
そこでセレクトショップのオーナーから聞いていた作る側の楽しさを実感して!
すぐ文化服装学院に入ろうと決意したよ。
___ 和食を学んでいたっていうのが面白いね。専門的なことを2つも学んできている人ってそうそういないと思う。
実は和食を作ることと服を作ることには共通点があって(笑)。
どちらも、相当な繊細さが要求される。食の中でも和食ってとても繊細で、細かいところで手を抜いてはいけないんだよね。
ここに共通点、シンパシーがあったし、服を作る上で和食を学んだ経験は活きている。
記憶を纏う、ノスタルジックな服
___ さて、次は今回のコレクションについて聞かせてください。
「文化」という言葉から自分が何を思うかが今回の全体のテーマだけど、私は表現したい文化を18世紀ヨーロッパの日常に決めました。
___ 18世紀ヨーロッパの日常は、どんな服で表現するの?
当時の服って、現在にはない機能性を取り入れている服が多いんだよね。例えば、女性が日常的に着ていたスカートには、沢山のボタンがついていて、それぞれに機能的な意味がある。
当時の女性は馬に乗っていたんだけど、跨って乗るのは行儀が悪いとされていたんだよね。そこで、両足を左側において馬に乗るんだけど、ここでボタンが活躍する。馬に乗る時用のボタンがついていて、それをとめると
跨っていなくてもシンメトリーで綺麗に見えるシルエットを実現していた。面白いよね。
他にも家事をするときはそれ用のボタンがあって、とめると丈が短くなって動きやすくなる。
僕が今回作るのは、そういった当時の知恵を現代で再解釈して取り入れる服。他にも当時の工夫には面白いものが沢山あって、そういった現代とは異なる機能を、ブラッシュアップして提案したいと思っています。
___ たしかに晃輝の作る服は、どこか懐かしさがある気がする。
「ノスタルジー」が、自分の作る服のテーマで、素材なんかも天然繊維が好きなんだよね。化学繊維は、ファッションのビジネス化を進めてしまったと感じている。もちろん表現の幅を大きく広げたのも化学繊維だけど、、、
今回の展示会を見てもらって、天然繊維の良さを知ってもらいたい。
___ 晃輝はアルチザン系のブランド(職人的、手作業にこだわるブランド)が好きって言ってたよね。素材のこだわりからもアルチザンが好きなのが伝わる。
好きなのは「アルキビオJMリボット」というブランドなんだけど、素材にものすごく拘っているんだよね。
デザイナーが昔から趣味でヴィンテージ、というかアンティークの生地やボタンなんかを集めていたんだけど、それを使ってブランドを始めた。
インターネットに服の情報がほとんど載ってなくて、セレクトショップも値段や詳細な写真なんかをインターネットに載せてはいけないっていう、時代に逆行した面白いブランドなんだよね。
作っている服は現代的なシルエットなんだけど、それでも素材のおかげでノスタルジックで。とっても惹かれるし、自分もこんな服が作りたい。
___ ヴィンテージやアンティーク生地を使ったブランドは確かにすごく少ないけど、自分も見たら惹かれそう!
日本にはヴィンテージの生地を売っているお店が少ないんだよね。あったとしても服を作るには足りない量だったり。
ヴィンテージ生地って、そこに記憶が乗っているような気がする。ただ雰囲気がノスタルジーなだけじゃなくて、、
自分自身ではヴィンテージの生地で服を作ったことはないけど、これから機会を作ってやってみたい。
染色の技術
___ 晃輝の過去作品の中にワンピースがあるね。これもノスタルジーを感じるし、染色も「らしさ」が出ている。
このワンピースは、実は複雑な構造をしてるんです。トップスとスカートをまず別に作って、それらを合わせるように上から下まで1枚の裏地をつけています。
___ 難しい!けど面白いね。色も絶妙で、同じものは作れなさそうなほどアンニュイだよね。
染め方は、紅茶染め。
___ 紅茶で染めるの?
そう。紅茶のTバッグを14個くらい使って紅茶を作って、そこに服を入れて2時間くらい煮ると、染まるっていう方法。
___ 本当に名前の通り紅茶染め!(笑)そんな染色方法があるとは知らなかった。
最初に布の糊や汚れを取るために洗って、染めた後もミョウバンで色落ちを防ぐ媒染という作業があるから丸2日かかるけど、やり方はとっても簡単だよ。
___ 話を聞いていると難しく感じる(笑)。
ぜひやり方を調べてチャレンジしてみて欲しい!出来上がりが人によって異なるから面白くて。工程ひとつとっても染まり方が変わってくるしね。
___ 晃輝は、そういった染色技術が得意なイメージがある。
自分の中で、服を作る前の布に一手間加えることを意識して服を作るようにしている。
だもんで、なかなか売っている生地には出せない風合いを出せるんだよね。
多くの服は、シルエットがデザイナーズブランドに似ているように感じるんだけど、そんな中で古いものに良さを見出したり、染色にこだわったりしているところが、自分の強みだと思っています。
___ 「だもんで」は地元、浜松の方言!(笑)もしかして栃木でも使ったりするの?
実はクラスにも浜松出身の子がいて、(笑)
その子につられて「だもんで」を使うようになってしまった。
___ なんだか懐かしい気持ちになったよ!菫(はしもとすみれ/プロジェクトに参加するデザイナーの1人)や、プロジェクトを手伝ってくれている友達も浜松の同じ高校出身なのでプロジェクトの浜松割合が高いね。
浜松出身の知り合いははみんなおしゃれだから、街もおしゃれなイメージができた。行ってみたい。
___ 全然そんなことないよ(笑)。たまたま服が好きな浜松出身がプロジェクトのために集まった。
プロジェクト参加の経緯
___ プロジェクトに参加してくれたデザイナーは、ほとんど菫の紹介からつたって集めたけど、晃輝は違って俺がインスタグラムでナンパしたんだよね。
DMを送られたのは今年の3月で、1年生の間は製作でほとんど時間を使っていたから、新たな活動をしたいと思っていたところにDMが!
需要と供給がマッチした(笑)。
___ さっき話したワンピースの写真をインスタグラムに載せてて、迷わずすぐにDMで誘ったんだよね!一目惚れ。
DMでやり取りし始めたたときは修了ショーの準備で忙しかったけど、実はこっちのプロジェクトの話を本格的にしたくてウズウズしてた。
___ 修了ショーではどんな仕事を?
どんなファッションショーにするかなどの企画かな。そこでチーフをやっていました。
___ すごい!晃輝主導だったんだね。
修了ショーで仕事ができて光栄でした。やってよかった。
これからについて
___ 最後に、将来の夢を教えてください。
アルチザンのファッションブランドを立ち上げること。
デザインのテーマはやっぱりノスタルジー。
___ あまりシーズンにとらわれないブランドにしたいと前に言ってたね。
年に1回、コレクションを発表するくらいが丁度いいと思っています。シーズンにこだわるんじゃなくて、本当に良いと思えるものを作っていきたい。
ファッションショーもやらずに、実際に自分の服を見てもらって、たくさん吟味して買ってもらえるような、そんなブランドにしたいな。
___ ブランドを大きくしたい気持ちはある?
金持ちになるためにデザイナーをするわけではない。ただ、いいと思ってくれる人が増えるのは嬉しいよね。自分の服に魅了を感じてもらえる人が増えれば、1番。