(油彩画のX線写真)
(株)文化財マネージメントの宮本です。
今回の修復を担当していただく、東北芸術工科大学講師の中右恵理子先生から油彩画修復について、他の作品を事例にコラムをご執筆いただきましたので掲載します。
まず今回は、修復に先立っておこなわれる調査についてです。
高橋源吉の油彩画修復を担当する中右恵理子です。
現在、山形市にある東北芸術工科大学の文化財保存修復学科で講師をしています。
高橋源吉は山寺にとても縁の深い画家で、地元で大切に保管されてきた源吉の油彩画を、より良い状態で長く保存できるよう、今回の修復作業に従事したいと思っています。
修復作業は東北芸術工科大学内にある文化財保存修復センターにて行う予定です。
通常、修復にあたっては、作品の材料や構造、損傷状態などを観察し、詳しく把握することから始めます。
お医者さんが患者さんを診断するときと同じような感じですね。
今回は大学病院にあたる施設でより専門的な検査が行われます。
一番の目的は油彩画の損傷を手当てすることですが、作品の状態を知るために、X線や赤外線を使った詳しい検査をし、絵に使用されている絵具などの材料についても分析します。
修復の機会に、高橋源吉の油彩画についての技術的な情報が明らかになることも期待できます。
赤外線では絵具の下に隠れて見えない下描き線などが見つかることがあります。
下の写真では、手すりの右側に細く写っている線は実際には絵具の下にあって見えません。
赤外線で観察すると、船の手すり部分の位置が変更されたことがわかります。
画家がどのように制作を進めたかを知るてがかりとなります。
(油彩画の通常写真・部分)
(油彩画の赤外線写真・部分)
つづいて、X線を当てて撮影するいわゆるレントゲン写真です。
絵画の見えない部分の構造や損傷がわかります。
下の写真は木枠に張られたキャンバス画で、端に木枠、釘が写っています。
釘の形がぼんやりしている箇所は金属の腐食が進んでいます。
絵に使用された絵具の材料や塗りの厚さによって明暗に違いが現れます。
技法の調査にも役立ちます。
(油彩画の通常写真・部分)
(油彩画のX線写真・部分)