鎌倉教場の「今」をお伝えします。
今回は「馬術・弓術以外の稽古」についてです。
流鏑馬というと、華々しい騎射のシーンを思い起こす方が多いでしょう。
確かに、全力で走る馬上から矢を射る姿は勇壮そのものです。
しかも、大日本弓馬会が支援している武田流では、立ち透かしと呼ばれる技により、馬上で美しい姿勢を保つことができるので、勇壮なだけでなく美しさも兼ね備えているのです。
この騎射の技量向上のためには、「馬術」と「弓術」の稽古とともに、これらを融合させた「騎射」の稽古が必要なことは言うまでもありません。
この騎射の稽古を行うには、鎌倉教場は最高の環境です。
全長220メートルの直線馬場に的を3つ立てた稽古場など、そうそうあるものではありません。
まさに、大日本弓馬会が流鏑馬を維持継承するために、欠かせない施設です。
もっとも、流鏑馬は騎射をするだけではありません。
まず馬に馬具を装着しなければなりませんし、諸役に直垂を着てもらわなければなりません。
これらは全て門人がやることになるので、馬に馬具を装着する「馬装」や諸役に直垂を着せる「着付け」の稽古なども欠かすことができないのです。
鎌倉教場では、これらの稽古も行っています。
「馬装」は毎週の稽古のたび、熟練者の指導の下、技量が未熟な者に率先して馬装をする機会を与えることで、経験を積ませています。
自分一人で馬装できることが、馬術稽古への参加資格になっているので、皆、早く覚えようと真剣そのものです。
ただ、馬装は乗り手の命に関わる非常に重要な技術なので、生半可では認められません。
実際、後輩の馬装ミスを見落として、そのまま騎乗した先輩が落馬するという事例もあります。
そのため、射手は行事本番では、自分が乗る馬の馬装は、必ず自分で行うことが通例となっています。
任せても絶対に失敗しない完璧な馬装を身に付けられるよう、より一層の稽古精進が求められます。
この馬装の稽古は、馬を繋いで行いますが、夏の日差しが強い日は馬がバテるので、極めて手早く行う必要があることから、未熟な者にはやらせないことが多いです。
そのため、馬の日除けがあれば、日差しの強い日でも、しっかりと馬装の稽古ができるのです。
馬の日除けは、単に日差しを凌ぐだけのものではなく、馬装の稽古にも貢献できるのです。
また、「着付け」の稽古は、毎週とまではいきませんが、月に1回ほど、熟練者の指導の下、希望者に経験を積ませています。
この着付けも昇級審査の科目になっているので、皆、早く覚えようと真剣そのものです。
ただ、着付けは行事本番で諸役に直垂を身に付けてもらうために行うので、見栄えや手早さが重要です。
実際、過去には行事中に諸役の袴がずり落ちるという大失態が生じており、生半可では認められません。
もっとも、鎌倉教場には物置以外の屋根がある構造物がないため、弓道場の片隅で行うに留まっていました。
更衣用テントの中でもできますが、稽古後のテントの片付けに人手が必要なことから、あまり効率的ではありませんでした。
そこで、やはり更衣室の出番です。
更衣室さえあれば、毎週のように着付けの稽古ができるのです。
更衣室はただ単に着替えるだけの場所ではなく、着付けの稽古場でもあるのです。
皆様の一層の御支援をよろしくお願いいたします。