『公害スタディーズ;悶え、哀しみ、闘い、語りつぐ』の編集委員8名のメッセージを順に掲載します。
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「公害」、そう聞いて皆さんはどのようなイメージを抱くでしょうか。
コンビナートの工場群がしきりに吐き出す煙でしょうか。川や海に注ぎこまれる汚染水でしょうか。あるいは、人間にも多大な被害が生じたことを知っている人もいるかもしれません。
しかし、それらのイメージは、ともすれば「モノクロ」のものとして想起されるのではないかと思います。その背景にあるのは、日本社会に根強く存在する「公害は高度経済成長期に生じた」という集合的な記憶です。だから、今を生きる若者世代にとって公害は「過去」のことであり、自分自身を公害の「非当事者」と自己規定しがちなのではないかと思います。
誰よりもかつての私自身がそうでした。しかし、本書はそうしたイメージにあらがい、明確に公害を「現在」のものとして語り直す試みです。本書を読み進めながら、「本当に公害は過去のことなのか?本当に私は公害の非当事者なのか?」と自分自身に問いかけてみてください。そうすることで、私たちが生きる現代社会をその当事者としてより解像度を高めて眺めてみることができるでしょう。