中村氏:技術的なことでは、元々手間の掛かる手仕事ですから、如何に効率よく、早く、破綻なく仕上げられるかということを念頭に作業します。破綻なくというのは、端正な見た目とか、細部へのこだわりのことで、結局エンドユーザーの方々が、安心して気持ちよく使って頂ける仕様になっているかどうかということです。特に、細部へのこだわりという点では、修業時代から師匠に大分厳しく指導されました。例えばそれは、ぐい呑みなどの飲み口のところで、最後の最後もしかしたら0.1mmにも満たない糸くずほどの切り子が出る程度に軽く削って仕上げますが、出来上がりを指先でなぞって少しでも角があるような感触があれば、全て突き返されました。使う人の身になって細かなところへも気を抜いてはならないという無言の戒めであったと思います。ひとつの製品に込められた、ものづくりへのおもいや背景を感じることで、より身近に感じ器への愛着もわきます。
伝統工芸 の付いた活動報告
「普段の制作で重きをおいていること」/ 中村氏
2021/12/27 13:55
「錫の魅力とは」/ 中村氏
2021/12/23 15:33
中村氏:錫は、実際にも見た目にも柔らかく、そして温かみのある優しい金属だと思います。ロクロ挽きの錫製品は、ツヤを良く仕上げるのが基本です。作業が進み日が沈みかかってやや薄暗くなってきた頃、同じものを20個ほど並べてあるのを、ふと手を止めて眺めたときの何とも言えない光沢は大変魅力的です。やや黄色味を帯びた嫌みのないツヤです。先代が独立するときに、この錫の光沢に魅了されていたことから「錫の光=錫光」と屋号を決めた所以になっています。TSUKURIBAスタッフも実際に工房にお邪魔させて頂きました。金属のキリッとしたクールなイメージが強い印象だった錫ですが、実際に手に取り、使わせて頂くと、しっくりと手に馴染む肌触り、なんともいえない優しいツヤ、錫への印象が変わりました。普段の食卓にはちょっと高いかな?と思っていた錫の酒器ですが、その日の晩から3オンスのタンブラーは毎日の晩酌のお供です。