2022/02/15 06:02

皆さん、今晩は。

今夜は前回に続き、「六書」の「会意文字」についてのお話です。楽しんで読んでいただければと思います。

(三)会意文字

会意とは、「意を会する」という意味です。象形や指事の既成の文字を二つ以上組み合わせて、各文字の持つ意を合わせて、新たな意味を表した文字の事です。

例えば、「二」は、指事文字の「一」を二つ並べて「二」を表しました。一説に、上の「一」は天、下の「一」は地を表していると言います。万物の根本をなす天地の気が始めて別れたとき、軽く清い物は天となり、重く濁った物は地となりました。そこで、「一」は天の数、「二」は地の数とも言います。「三」も会意文字です。「一」と「二」を合わせた文字で、『説文解字』には、「三」とは数の名、天地人の道、と説明されています。

では「四」とは何でしょう。「四」は、会意文字でもあり指事文字でもあります。実は、大篆(=籀文、ちゅうぶん)では、この文字は、横棒四つで表現されており、「二」を二つ重ねた会意文字でした。しかし、小篆で書かれている『説文解字』では、四方の形に象る「口」と、これを分かつ意を表す「ハ」とからなり、四方や四隅をそれぞれ四つの部分に分けた形を表す指事文字、と説明されています。

※『説文解字』に掲載されている、小篆・古文・籀文の「四」。
小篆古文籀文

この他にも、「鳥」と「口」を合わせて「鳴」く。子の辞の本義は、鳥のなき声です。或いは、「分」は、わかつという意味の「ハ」と「刀」で、刀で物を分別する意を表す等々が、この文字に分類されます。古代中国人の考え方や生活を、よく表現している造字の方法です。

※『説文解字』に掲載されている、小篆の「鳴」「分」の原文です。

鳴鳥聲也 「鳴(めい)は鳥の声なり」
分別也  「分(ぶん)は別つなり」

(四)形声文字

形声は、『周礼注』では諧声(かいせい)、『漢書芸文志』では象声と書かれています。諧は合わせるという意味で、意府に音符を合わせると言う意味です。二つを合わせて一文字とし、半分は形義(意味)を表し、半分は音声(音符)を表すので「形声」と言います。会意文字と同様に二つの部分から成りますが、音符のあるのが形声文字です。

唐の学者 賈公彦(かこうげん)は、『周礼疏 地官 保氏』に出てくる「六書」についての説明で、形声文字を次の六つに分類し、例を挙げています。()の中が声の音です。

①左形右声、江(こう)・河(か)の類
②右形左声、鳩(きゅう)・鴿(こう)の類
③上形下声、草(そう)・藻(そう)の類
④下形上声、婆(は)・娑(さ)の類
⑤外形内声、圃(ほ)・國(こく)の類
⑥内形外声、問(もん)・衡(こう)の類

※合には(こう)の音、或には(こく)の音があり、波には(は)・婆には(は・ば)の音があります。

要するに、氵さんずい、草冠・木偏・虫偏等々の意味を表す部分と、音符によって造られた文字の事で、造りやすい方法であったらしく、漢字中これに類する文字が最も多く含まれています。

(五)仮借文字

仮借と転注は造字ではなく、使用方法の説明です。「仮借文字(かしゃもじ)」は、仮も借も「かりる」の意です。漢字の文字数が少なかった時代に、言葉があって文字が無かった場合に、音の同じ文字を借用する方法、或いは、他の字の音義っを借りる方法です。

例えば、「北」、この文字は、『説文通訓定声』によれば、左を向いた人と右を向いた人が背中合わせに立っている指事文字で、もともとは「背く」の意味でした。二人が同じ方向を向いて前後に従う「从(從う)」に対して、背くのが「北」でした。人は座っても立っても、闇に背いて明るい方を向きます。そこで、南の反対側を借用して「北」と言うようになりました。「北」の「背く」という本義が消失すると、「北」に「月(にくづき)」を加えて「背」の文字が造られました。

※小篆の「从(從う)」「北」「背」
从(從う)



或いは、「其(き)」は「箕」(音き、訓み、穀物を乾かす道具)の原字で「箕(み)」の形に象った象形文字でした。しかし、「其」は、人、または物事の指示代名詞「その」「それ」として借用されるようになったので、「み」は竹で造るので、「其」に「竹冠」がついて「箕」の字ができた等々が仮借文字です。しかし、「仮借」と「転注」は混同されていて、上記の「北」の説明は、実は「転注」の説明である、という説もあります。

※次に挙げるのは、全て「其(箕)」です。この文字は「竹」と「其」の象形と、「箕」を乗せる台とからなります。
「其」の象形

「箕」を乗せる台(音き)

もともと「其」は「箕」の象形なので、時代の古い籀文の「箕」には「竹冠」はありませんが、小篆には付いています。
古い籀文の「其」

小篆の「箕」

※以下は全て「其(=箕)」の古文で、二つ目は箕を手で動かしている象形。三つ目は口の大きい箕の象形です。  

この他、「仮借」とは「当て字」でもあります。例えば『三国志』に掲載されている倭国のヒメコを「卑弥呼」、仏典の中の「南無阿弥陀仏」「菩薩」、国名の「埃及(エジプト)」「希臘(ギリシャ)」、都市名の「倫敦(ロンドン)」等々、中国では、現在でもこの方法を行っており、既に紹介した米大統領の名前以外にも、「陀思妥耶夫斯基(ドストエフスキー)」「海涅(ハイネ)」等々、枚挙にいとまありません。

長くなりました。今夜はこの辺で失礼します。

本日が皆様にとって、好い一日でありますように。