2022/02/16 17:55

皆さん、今晩は。

ところで、皆さん、ディズニーのあの熊は何色だと思いますか?「黄色」に見えますか?

○「黄熊(ぷぅ)」の秘密

2位の「黄熊(きぐま)」という熟語は、日本にも中国にもあります。しかし、ディズニーの、あの熊の事を「黄熊」という日本人には会ったことがありません。だいたい、私達には、あの熊の色は「黄色」には見えません。せいぜい「橙色」か「黄土色」です。しかし、中国人はあの熊を「黄熊」と言います。例えば、この様な言い方をします。

迪士尼小黄熊叫什么?
(ディズニーの小さな黄熊はなんて名前?)
迪士尼维尼小熊
(ディズニーの小熊のウィニーだよ)

迪士尼(díshìní)はディズニー、维尼(wéiní)は原作の『Winnie-the-Pooh』の「Winnie」の音訳です。中国では、「プーさん」よりも、「 ウィニー」が使われています。

実は中国のインターネット上では、「熊のプーさん」は政治的な意味を持っています。

始まりは、2013年6月7日から、米カリフォルニア州で開かれた、オバマ習近平会談での事。8日、両首脳は並んで庭園を散策し、習氏は太ってにこやかで、オバマ氏は長身で痩せており、とても良い雰囲気の中で交流が行われた、と報じられました。中国で最初のプーさん騒動が起きるのは、この会談の直後の事です。6月14日の「sina全球新聞」は、次のように伝えています。

「(総合外電報道)中国国家主席習近平は、先週土曜(8日)、カリフォルニア州の別荘で、オバマ大統領と会談した。二人が肩を並べて歩き、くつろいで別荘を散歩する姿は、ネットユーザーに、アニメの小熊のウィニーと友人のティガーの同行する場面を連想させた。二つの画像を対比させ、人々は意味を悟って笑った。ユーザーはひとめ見るなり「体つきも、顔つきもそっくりだ。」、と驚いた…。英国のBBC中文網の報道によれば、北京Sinovation Ventures取締役社長 李開復は、一昨日ミニブログ上で、「新浪は、昨日、多くの小熊のウィニーとティガーが削除された、と報じた。ポジティブエネルギー(原文「正能量」)を持つ漫画だ、何がいけないんだ、悪だくみでもしたのか?」、と…。」(「sina全球新聞」『オバマ習近平の別荘での散策 新たな工夫のkusoコラは結局削除された(欧习庄园漫步 创意kuso图竟被封杀)』2013年06月14日 06:45)

オバマ大統領をティガーに見立てても、米国から苦情は出ませんが、中共首脳部は、国家主席を侮辱する画像として、習近平主席を熊のプーさんに見立てる事を禁止しました。大陸では非常に熱心に削除されたようで、最も盛んな時には、画像を貼り付けてから一分後には削除された、と台湾のメディアが報じています。

ただ、これで習主席と「プーさん」の関係が切れたわけではありません。

2015年9月3日、北京天安門で「中国人民抗日戦争及び世界反ファシスト勝利70周年記念大会」と題する式典が開かれました。日本は負けた覚えはありませんが、兎も角も、国家を挙げての式典の様子は、ユーザーに投稿を促し、早速、習主席が検閲車に乗った写真と、同車に乗ったウィニーの写真とを並べた画像がアップされました。これはミニブログ上で瞬く間に広がりました。15年に、中国で最も削除された書き込みは、熊のプーさんの人形が、車に乗っている物でした。

何故、「熊のプー」さんが、国家主席を侮辱する画像になるのかと言えば、それは恐らく、以下の様な理由であろうと思います。

「中国新聞社網11月21日電、海外メディアの20日の報道によれば、´熊のウィニー´(Winnie-the-Pooh)は、深く子供達に愛される漫画のイメージがあり、多くのおもちゃ・書籍・ゲームが、この赤い服を着た小熊を主題としている。しかし、あらゆる人が皆´熊のウィニー´ を愛しているわけではないようだ。ポーランド中部の小さな町トゥシン(Tuszyn)の地方当局は、´ウィニー´が子供の遊び場で使用されることを禁止する決定を下した。原因は、その服が´不適切´で、しかも性別に疑問があるからだ。

報道は、次のように述べている。もしデザインだけを見るならば、´熊のウィニー´は一枚の赤い上着しか着ておらず、下には何もつけていないように見える。しかも、´ウィニー´という名前は英語圏では一般に女児の名前として使われるが、´熊のウィニー´の動画は男性の声優を使っており、ポーランド当局がこの様な決定を下すのも無理もない事だ、と。トゥシン地方当局の報道官の説明では、問題は´ウィニー´の衣装ダンスの中身が不足しており、彼は´半裸´状態でいるので、子供にとって完全に相応しくないんだ、と。報道官は更に一歩進んで、ポーランドでは、熊の玩具は一般的に全て頭から足まで完全に服を着ているんだ、と述べた…。」(「中国新聞」『ポーランドの小さな町で゛熊のウィニー゛を禁止:服が整わず 性別不明で(波兰小镇封杀゛维尼熊゛:衣着不整 性别不明』2014年11月21日10:26)

これはポーランドでの話ですが、中国では「黄色」は、最も尊い皇帝の用いる禁色である一方、嫌らしい・堕落した物を表す色でもあります。例えば、中国語の「黄話」は「猥談」、「掃黄」は「ポルノ一掃」、「黄色小説」は「ピンク小説」と訳されています。つまり、国家主席に対して、ズボンをはいていない「黄熊」となると、非常に無礼な事になるのです。

さて、13年に2位になった「黄熊(ぷう)」は、14年には1位に輝きますが、中国で「熊のウィニー」が盛んに削除される15年には、30位から外れています。不思議な事に、この名は、中国情勢に呼応しているように見えるのです。そもそも「黄熊(ぷう)」と言うのは、日本人の感性ではありません。この「ランキング」に携わっている人物は、少なくとも中国で「黄熊」が「プーさん」の事を指し、しかも、習近平氏を揶揄する意味を含んでいる事を踏まえて、この名を作った可能性が高いのです。

それでは、今夜はこの辺で失礼します。

本日が皆様にとって、好い一日でありますように。