昨日は河野酢味噌さんで造っていただいている「木桶味噌」の、仕込んでから初めての口切りの日。口切りとは、木桶の蓋を開けること。河野さんが、その様子を見せてくださいました。
木桶を覆っているカバーを外すと…
茶色く澄んだ液体が出ています。
これはなんでしょう?
河野さん:「味噌だまりです。アメとも呼びますが、味噌から出る液体です。味噌は蒸した大豆と米麹からできていて、その味噌の水分に加え、木桶自体も水を吸っているので、木桶からの水分も混ざっています。」
木桶も水を吸っているんですね。
河野さん:「仕込んだ味噌の水分を木桶が吸ってしまうと、味噌が乾いてかたくなってしまうので、仕込む前に木桶に水を飲ませます。この新桶は2年乾かした杉の木で作った1000リットル用の木桶で、1月に木桶を制作して3月の仕込みまでの間にだいたい70~80リットルの水を飲みました。その木桶の水が、浸透圧の影響で味噌に移るとき、木香(もっこう)も同時に味噌に移ります。」
木桶が水を飲む…木桶は生き物ですね。
木香が移った味噌の香りはどんなものですか?
河野さん:「それが…なぜか”鰹節”の香りがするんです。材料に鰹由来のものは入れていないのに、濃く煮だした鰹出汁のような。私たちも今回新桶で初めて味噌を仕込んだので、これは初めての体験で驚きました。普通の味噌とは全然違います。
通常の味噌は、まず酒造が新桶を作って酒を造ったあとの木桶を譲り受けて組み直し、味噌の木桶として長年使い込んでいるので、木香は無く、いわゆる味噌らしい香りがするんです。」
鰹節…!不思議ですね。出てきた味噌だまりはこの後どうなるのでしょう?
河野さん:「河野酢味噌では、基本的に”出てくるものは余分なもの”と考えるので、戻さずに捨てています。味噌だまりには、余分なものが入っていて、どうしても”におい”がしてきてしまうんです。古い木桶だともっと濁った味噌だまりですが、新桶のアメ(味噌だまり)の色は澄んでいてきれいですね。今回の味噌だまりはだいたい25~30kg出ました。」
そんなに出るんですね!味噌だまりを取り除き、このあとはいよいよ味噌を掘って麹を追い足し、熟成に向かいます。それはまた、今後の記事でレポートします。
木桶味噌の出来上がりまで、お楽しみに!