クラファンでつながった仲間
クラファン終了まで残り46日となりました。現在94%の達成率。あともう少しです。
支援してくださっている方はのべ152人。すごい数字です。感謝しております。
クラファンが始まって、初めに一気に埋まったのが文字入力のリターンでした。
【スタッフになって本に名前を載せる権利】
下川さんの手書きの原稿を、入力する作業です。完成した本に、スタッフとして名前を載せます。
こちらが募集した5枠が、あっという間に集まりました。支援金を支払った人達に入力させるという、一風変わったリターンなのですが、最近はこのような「チーム参加型」のリターンが人気です。さっそくその5人に連絡を取り、チームを結成しました。
初めに、5人に意気込みを伺ったのですが、その中で一通のメールが私たち理事の心を強く揺さぶりました。
メールより
このプロジェクトのぺージを読んで、2年半前に脳梗塞で高次脳機能障害になった弟と一緒に支援したいと思いました。
リターンにエントリー出来てとても嬉しいです。
入力作業を主に弟に手伝ってもらいたいと思っています。
弟は仕事もなく家にずっといますので、この話をしたときとても喜んでくれて、早速、新聞の記事を使って入力の練習を始めています。
左手しか使えないこともあり、時間がかかってしまいますので、編集作業が遅れることのないよう、フォローは私が責任をもっていたします。
そして、本をひとりでも多くの人の手にとってもらって、下川さんのやりがいに結びつくよう、がんばります!
高次脳機能障害者である下川さんの手記を出版したいと思ってすすめてきたこのプロジェクトですが、当初から私は、下川さんと同じような人が必ずいるはずだと思っていました。つまり、病気になってから職を失っている人。けれども、これまで自分がやってきた仕事と似ていることや自分が好きなことで社会と関わりたいと思っている人です。そして、同じように、何か社会と関わって欲しいと願っている家族もいるはずだと。
彼の病気について、私は詳しく伺ったことがありませんが、メールに書かれている症状から「前頭葉」という最も高次な脳の働きを司る場所の機能が低下しているのではと推測しています。(その後、左前頭葉に梗塞があることを教えてくださいました)前頭葉損傷の場合、いわゆる「やる気」が起きない人が多いのです。病気になって2年半、もう一度、慣れない左手で時間がかかることではあるけれど、この作業に取り組んでみようと思ってくれたことに、強く心を打たれました。しかも、新聞を使って練習を始めるなんて!
リハビリの先
医療におけるリハビリだけでは、どうしても越えられない壁があります。そう、リハビリの先には「何か」が必要なのです。その「何か」のために、地味でしかない、苦痛でしかないリハビリを、患者さんは頑張るのです。その「何か」とは「社会とのつながり」であったり「自分の役割」なのでしょう。
例えば、
車椅子に座れるようになりたい、それは車椅子で出かけたい場所があるからです。
言葉が喋れるようになりたい、それは話をしたい相手がいるからです。
リハビリの「先」がないと、やる気が起きにくいのに、医療の現場ではそれを「意欲低下」とカルテに書いて、症状の一つとして終わりにしていることが非常に多いのです。
私はそうではないと思います。リハビリをする気が起きないのは、その人にとって、そのリハビリをすることで何かを得られる希望がないからで、ごくごく当たり前のことではないかと思います。高次脳機能障害者ならなおさらです。
私は、普通の人でさえ、その先に何かがないとできない単純作業を、この弟さんが「やろう」と思ってくれたこと、そのことに感動しました。
リレーされる思い
メールより
新聞のコラムで練習をしているときに、ちゃんとできるかどうか様子を見ていたのですが、 私が言わなくても勝手に練習しているところをみると、PCでの文字入力作業自体、彼にとって全然苦にならないのだとわかりました。もともとSEの仕事をしていたので、パソコン作業が好きなのでしょう。
ただ、本人の集中力を考えると、1回の作業として、新聞のコラムの量ぐらいがちょうどいいのかなと感じました。1日家にいるので、体力に合わせてやってもらったらいいと判断しています。
根を詰めてやると疲れてしまうこともわかったので、原稿の入力は最初は1日1枚から始めました。だんだん慣れてきて、今日は、休憩を取りながらですが、2枚と少し、約90分、作業してくれました。入力作業の感想を聞くと「やりごたえがあった」とのことです。
高次脳機能障害の下川さん、その下川さんの原稿を入力する高次脳機能障害の弟さん。思いはリレーされています。
「まずは目の前の一人から!」と始めたこのプロジェクトですが、今回のことを含め、もう数名の患者さんととつながることができました。「自分がやりたいこと、得意なことで、社会と関わりたい」これは、障害があろうとなかろうと、みんなが望むことだと思います。
まだ先かなと思っていたそんな活動を、すでに始めることができて、大変嬉しく思っています。