「ただの人」も読みたいハンドブック
私は、25年前に、離婚してシングルマザーとなった。娘は当時4歳。
10代を母子家庭で過ごした私は、「娘とはお互い煮詰まりたくない」と考え、複数の大人と子どもでのシェアハウス生活に加わった。ともに暮らすメンバーと、遊びにきて一緒に過ごしてくれる大人と子どもたち。たくさんの人とのゆるやかで継続的な関わりのおかげで、私はなんとか養育を続けることができた。とても助かった。
この経験から、子育ては家族以外の人にもひらかれていたら、もっと親子ともにラクで楽しい豊かなものになると思っている。
「実家が太い」という言葉がある。何か困った時に頼れる家、お金、家族のあたたかい支援などがあることを差す。
太い実家を持つ友人のことを羨ましいと思うこともある。でもその代わり、私は血縁でないたくさんの人との関わりが太くなった。
6年前から我が家では、実子が巣立った1部屋を、若い人にルームシェアして、ともに暮らすことを続けている。私が受けとったもののささやかな恩送りでもある。若い人が家にいるだけで空気が華やぐし、作り置きのご飯を食べてくれるのも嬉しい。我が家を巣立ったシェアメイトが、「帰省」するように時々顔を見せてくれるのも幸せだ。支援というより恵まれたご縁のように感じている。
施設や養育家庭などを出たあとの人たちにも、そんな関わりがいろんなかたちで保障されていてほしい。
太い実家がなくとも、頼れる太い社会資源があちこちにあるから大丈夫だよと言いたい。
このハンドブックを、アフターケア事業に携わる人たちはもちろんのこと、支援者以外の多くの人が手にすることで、誰もが、ゆるやかで継続的な関わりの一員になることができるのではないかと期待する。
役割や資格を持った支援者以外に、社会にはたくさんの人がいる。私もその一人だ。
私の子育てに、支援者ではない「ただの人」がたくさん関わってくれたように、私のゆるやかで継続的な関わりが、誰かの助けになっていたらいいなと思う。
そのためにはどんな困りごとがあって、支援を専業にしている人たちが実際どんなふうに寄り添っているのかを知りたい。
知ることで、身近な誰かが困ったときに、必要な支援者につなぐこともできる。
関わりかたも、より適切になるかもしれない。
ハンドブックが、各地で頑張ってくださっている支援者のみなさんにも、私のようなそれ以外のたくさんの「ただの人」にも、届きますように。
太い社会になりますように。
えんじゅのみなさん、この取り組みをありがとうございます!応援しています。
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エンライト 編集部 NPO法人リスニングママ・プロジェクト 発起人・理事 高橋ライチさんよりメッセージをいただきました。
ライチさん、ありがとうございます!