皆様こんにちは。蒸し暑い日々が続いていますが、体調など崩されていませんでしょうか。
さて、久米島調査レポート第2弾は 無脊椎動物編です。
レポート第1弾の前回は魚類編をお伝えいたしました。
https://camp-fire.jp/projects/595272/activities/485396
今回は無脊椎動物(エビ,カニ,イカ,タコ,クラゲ,ゴカイ他)をご報告いたします。また、今回は動画を多めに掲載しておりますので、彼らの泳ぎ方についても映像でお楽しみください。貴重な世界初の映像が、この活動報告に盛りだくさんです。
①サメハダホウズキイカ
サメハダホウズキイカ Cranchia scabra Leach, 1817 の幼体 外套長15mmです。まだ触腕の2本だけが発達していて、その他の腕は短いです。久米島で遭遇するサメハダホウズキイカ科間では、トウガタイカに次いで多いかもしれません。動画も撮影したので、彼らの動きも是非ご覧ください。象の鼻の様に触腕を動かす動作が興味深いです。
真正面から見ると、ほとんど真円です。
外套膜の表面はざらざらした感じで、まさに鮫肌ですね。
②アサヒガニ科のゾエア幼生
調査期間中に複数個体確認できたアサヒガニ科 Raninidae の一種のゾエア幼生です。全長37mmほどと大型で、巨大な棘には前後に2か所ずつ赤い模様があるのが個性的です。詳細な種名までは、今のところ確定できていません。詳細がわかり次第、追ってご報告させていただきます。
③ヒカリボヤの1種で暮らすウキエビ
夜の海にはまさに神秘的な世界が広がっています。今回はこのつるっとしたタイプのヒカリボヤ とウキエビ Funchalia taaningi Burkenroad, 1940 の組み合わせが多かったです。このつるっとしたタイプのヒカリボヤ、早く名前を確定したいです。よく見ると、小さな小さなウキエビのメガロパ幼生たちも成体と一緒のヒカリボヤの中に何匹か居るのが写っていました。ウキエビはクルマエビ科の一種なので、卵を直接海に放つタイプの産卵をします。そのため、幼生は比較的早い段階から、偶然見つけたヒカリボヤに入って中で暮らしているのではないかと思います。成体もそれはあえて排除しないようですね。
④クコノミクラゲ
クコノミクラゲ Eutiara decorata Berberian, Michenet and Goy, 2021 は2022年に和名がついたばかりのエボシクラゲ科の新しいクラゲです。その独特な外見の姿が、文字通りクコの実(乾燥させた)に似ることから、その名がつけられました。もともと、フレンチポリネシアのタヒチから初の報告があったクラゲですが、日本の海域からの報告は2番目になります。この発表はこれまでの私の活動が大きく関係していて、北里大学の渡部舞さん(現、新江ノ島水族館)と、三宅裕志先生にまとめていただき、(※1)の発表に至りました。私の活動は、このような学術的な貢献にもつながっています。
⑤ヨウラククラゲをぶら下げたヨロンエビのフィロソーマ幼生
ヨロンエビ Palinurellus wieneckii (de Man, 1881) というイセエビの仲間のフィロソーマ幼生です。フィロソーマ幼生は餌を取る道具としてクラゲを脚に付ける行動がよく知られていますが、ヨロンエビの場合はヨウラククラゲ Agalma okenii Eschscholtz, 1825 を脚にたくさん付けながら泳いでいることが多いです。他のクダクラゲも利用することはありますが、ヨロンエビは特にクダクラゲ類を、中でもヨウラククラゲを好んで利用しています。多い時には4匹のヨウラククラゲをそれぞれの脚に付けているのが確認できます。
⑥ヒゲナガモエビ属のゾエア幼生、複数種
ヒゲナガモエビ属 Lysmata の中でも大型のゾエア幼生が知られている種類として、アカシマシラヒゲエビ Lysmata amboinensis (De Man, 1888) やシロボシアカモエビ(ホワイトソックス)Lysmata debelius Bruce, 1983 などが知られています。今回は少なくとも2種類の大型の幼生との遭遇が気になりました。普段はあまり遭遇しないタイプです。現時点では、いずれも詳細な種について断定できないでいますが、何かわかり次第ご報告させていただきます。
脚のオールが2対のタイプのこちらは "Lysmata Z"↑↓
↓ヒゲナガモエビ属 Lysmata の大型ゾエア幼生 のうち脚のオールが3対のタイプこちらを通称 "Lysmata X" と呼んでいます。
通称 "Lysmata X" が、ヒドロクラゲを保持してダンスするように廻っていました。餌を取る道具として利用しているのかもしれませんが、定かではありません。※この子は最大になる第5脚がなぜか両方とも欠損しているようです。
⑦オヨギゴカイの一種
オヨギゴカイ Tomopteris の1種です。今回の調査では別々の日に合わせて2個体を目撃しましたが、これまで私が遭遇したことなかった、かなり大型種で全長10㎝程でした。おそらく深海棲種と思われます。その泳ぎ方を鮮明に捉えた映像はかなり貴重です。是非ご覧ください。
https://youtu.be/pCdBfzq0zVU
以上、6月の調査結果の概要をお伝えいたしました。研究発表の都合上、ここですべてを明らかにする事は今はできないものもありますが、これからさらに精査をし、発表へと繋げていきたいと思います。また、新たに判りましたことがありましたら、ご報告させていただきます。次回の調査は7月末に行う予定です。引き続きよろしくお願いいたします。
峯水 亮