2023/02/05 16:38

公演関係者のからのコメントや、マームとジプシーがお世話になっている方々より応援コメントを続々といただいております。初めてマームとジプシーを知ってくださった方もいらっしゃると思いますので、コメントをいただいた方との関係性と共に活動報告にも日々紹介させていただきます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高橋源一郎(作家)


何度でも「cocoon」を

「cocoon」を最初に観たとき、ぼくを襲ったのは名状し難い感情だった。確かに「感動」はしていたのだと思う。でも、それは単純に「感動」と呼ぶことができないものだった。遥か数十年も前に、とっくに終わってしまった「戦争」。ドキュメンタリーや映画や本でなら知っている「戦争」。親や親戚がしゃべっていたけれど、ぼくには関係がないと思っていた「戦争」。しかも、その場所は、「内地」から遠い沖縄で、登場するのは、やはり自分とは縁がなさそうな少女たち。その、遠くにあったはずの「戦争」が、すぐ目の前で再現されていた。いや、「再現」ではなく、ほんとうにぼくの前で初めて起こった。気がついたら、ぼくは、あのときのあの場所に立たされていた。否応なくだ。彼女たちがそうであったように。そのような劇を観るのは初めてだった。思い出した。ぼくは「感動」したのではなく、傷ついたのだ。そして、「cocoon」を観るたびに、ぼくはまた新しく傷つき、出血する。それでも、何度でも、ぼくは「cocoon」を観たくなる。何度でも、繰り返し。どうか、「cocoon」が、もっとずっと広い場所まで届けられますように。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高橋源一郎さんとは、作者が自身の作品を朗読する東京芸術劇場の企画「自作自演」にて、藤田が2014年にご一緒しました。

ご本人がパーソナリティを務めるラジオにも何度か藤田をゲストでお招きいただき、昨年の8月にも「高橋源一郎の飛ぶ教室」に出演させていただきました。また、2016年にはゲンロンカフェの企画で対談を実施、お話をする機会をたくさんいただいています。

たびたび私たちの作品を観にきてくださり、『cocoon』も、初演、再演、今回の再再演とご来場くだいました。

ご自身も戦争をテーマとするエッセイなどを執筆され、昨年は新たに書籍を出版された中、様々な場で『cocoon』についても触れてくださっています。
『cocoon』の観劇体験と共に作品の根底にある藤田の思いを掘り下げ、演劇や文学という表現の世界には何ができるのかということを言葉にしてくださっているように感じます。