2023/02/09 17:46

公演関係者のからのコメントや、マームとジプシーがお世話になっている方々より応援コメントを続々といただいております。初めてマームとジプシーを知ってくださった方もいらっしゃると思いますので、コメントをいただいた方との関係性と共に活動報告にも日々紹介させていただきます。

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井出亮(京都芸術劇場/京都芸術大学舞台芸術研究センター プロデューサー)

『A-S』(2016年7月)という作品を初めてマームとジプシーの皆さんと一緒に創った際に、藤田さんの眼差しと創作の手法が意外なほど“演劇的”だったことに驚きました。それまでいくつかの作品を観客として観ていて、ジャンルの垣根を超えたアーティストとの作業を見ていて、何となくいわゆる「演劇」との距離がある印象(というより先入観)を勝手に抱いていたから、「どっぷりと演劇の人やん」とホッとして、だからこそ演劇そのものを拡張するような作品を創ることができるんだ、『cocoon』を観たときに一緒に仕事がしたいと思ったのはだからだったのかと妙に納得したことを覚えています。

ここでいう“演劇的”ってどういうことかを説明するのはむずかしいのですが、演劇作品を創っていくそのプロセスには当たり前に“演劇的”な要素がたくさん詰まっています。集まった出演者、スタッフとのコミュニケーションからはじまり、実は作品そのものと同じくらい面白いことが稽古場や現場では起こっていて、そこに一般の方や本学学生が関わることで演劇の面白さや価値がもっと伝わると考え、マームとジプシーと共に一般参加型の企画を続けています。感染症の影響を受けオンラインでのワークショップも取り入れながら実施した『待ち合わせていた風景を記録する』(2021年3月)、『川を渡る』(2022年3月)では「劇場に人が集うという営み」そのものをテーマに幅広い年齢層の参加者と作品づくりを行いました。出演者・スタッフ、そして観客が居てようやく作品として成立するのが演劇で、集うのを避ける、簡単には集えないという状況でも、藤田さんとマームとジプシーの皆さんが真摯に取り組んでくださり、今しか創れない多分に“演劇的”な作品となりました。この京都での丁寧な作業を目にしたうえで、2020年に延期となった『cocoon』の上演に向けた長期かつ困難な状況での根気のいる作業の一端を知ると、‟演劇的”な濃密さに満ちたプロセスをうらやましく思いつつ、身震いもしました。確かに、彼らならそこまでやるだろうと。果たして個人的にも念願だった『cocoon』京都公演(2022年7月)はこれまで観たマームとジプシーの中で最もと言っていい厚みのある作品になっていました。

この約3年の間に「劇場に人が集うという営み」の脆弱さを痛感しましたが、逆にその価値の大きさを考えることができました。この価値を今まで以上に拡げていくことをマームとジプシーとともに続けてきたい。もっとたくさんの方にこの作業を知ってもらいたい。

みなさん、ぜひ応援をお願いいたします。

藤田さん、みなさん、京都でもまた集いましょう。

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京都芸術劇場は、京都芸術大学の中にある劇場です。学生が演劇活動をする実践的な場として利用されていたり、一般の市民の皆さんにも開かれた劇場としての役割を果たされています。

2016年「A-S」、2019年「madogiwa」、2022年「川を渡る」など、演劇を学んでいる学生、市民の皆さんと舞台を共に作ってきました。

その他にも、2019年子どももおとなも一緒に楽しむ舞台「めにみえない みみにしたい」、そして今回の「cocoon」も共催で上演をさせていただき、その度に企画で関わった皆さんが観にきてくださいます。

学生の皆さん・市民の皆さんとの舞台は、そこでしか見ることの出来ない景色がたくさんあります。私たちのように、過ごしている大半の時間を演劇が占めるのではなく、それぞれの生活やこれまで歩んできた時間がある中に演劇があることがとても面白く作用し、想像もつかない作品へと昇華されていきます。ひとりひとりの線と線が交わるような貴重な時間を、井出さんと今後も考えていけたら嬉しいです。