・仏教医学書に記載の内容
・ヴェーダに記載されるウシーラ=ベチバー
・茅葺きの屋根材とベチバー
・お釈迦様の経典『ダンマパダ337 』の記載内容
福岡県八女市は、日本有数のお茶処です。
黄緑色の新芽が、色鮮やかに芽吹いています。
八女の伝統玉露を作り続けてきた高木家も、お茶摘みや野菜の苗の準備、苗床を整え、手を入れた竹林にはタケノコが伸びてきて収穫に忙しい時期となっています。
星野村には、地元の人たちの憩いの場となっている、福楽寺というお寺があり、石橋弘勝ご住職様自らが情報収集される民族の歴史や、その探究成果などを楽しみに聞きに来られる方もたくさんいらっしゃいます。その、石橋ご住職が教えて下さったベチバーに関するお話は、とある仏教医学書に書かれているお話だそうです。
ご住職と古民家でお話しをしていた時に、私がベチバー(ウシラ・Usira) について触れたところ、薬草としてはもちろん、お寺の屋根を葺く資材として珍重されている、ということをうかがったのです。
(真ん中:石橋弘勝ご住職 トレッキングコース近日予約サイト公開2023.8月 星野村 カラ迫岳標高:1006m)
南伝大蔵経の「大品(だいほん・Mahā-vagga)」の「六:薬犍度(薬・食物に関する規則が書かれた章)」で、爵金、生萱、菖蒲、白菖蒲、麦門冬、辛胡蓮、ウシラUsira(茅根香、学名:Andoropogon squarosus,Linn.)の記述があり、お寺の屋根をベチバーで葺くその方法が書かれているとのこと。
それを知らなかった私は、驚きました。
南伝大蔵経:上座部仏教に伝わるパーリ語で書かれた仏典を大成したもの。
以前から、(星野村の)古民家の屋根の葺き替えについて、大変な労力と破格の費用を要することになるので簡単には維持できない為、星野村も残すところ民家では1件となりました。『もうこのまま朽ちていくのを見守るしか無い』と嘆く9代目の茂子さんの言葉になんとも言えない状態が続いていました。
『南国のベチバーが雪降るこの里に来た意味がきっとあるはず・・・』という気持ちからキッカケになる様なことがあれば可能性はあるかもしれない。私は微力だけど方法はないものかと考えていたのです。
これまで古民家を維持してきた高木さんのご苦労は、いかほどかと想像もつきません。何とか費用の足しになり、継続するための支えにならないかと、ベチバーの栽培と商品化が始まったんです。
その矢先に、ベチバーの栽培と商品化が、屋根の葺き替えの費用捻出に役立つだけでなく、ベチバーそのものが屋根の資材として使えるという事実は、思いがけないものでした。
実際に屋根をベチバーで葺くことは、未だ実験中で実用レベルには辿り着いていませんが、今はその時期を待つことにしています。
(現在:活動報告#3にある様に茅葺き職人の上村組さんのご協力で屋根に葺くことが決まり、ベチバーの葉と杉皮を準備しています。)
ベチバーは「頭」に良い
アーユルヴェーダには『リグ・ヴェーダ』『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』の4種があり古典と呼ばれています。
『アーユルヴェーダ』は『アタルヴァ・ヴェーダ』の副ヴェーダになります。医学に関する記述が抜き出されたものが、世界最古の医学書として現代に伝わっています。
そのアーユルヴェーダの古典には「ベチバーは頭に良い」とあるそうです。
現在、(2020年当時)まだ日本に7名しかいらっしゃらないアーユルヴェーダ医師である田端瞳先生に教えていただいたお話しです。
さらに、お釈迦様の主治医はジーヴァカというアーユルヴェーダの医師だと伝えられています。
その関係性からなのか、屋根にベチバーが葺かれているというのは、前の章でも触れました、お釈迦様により伝授された仏教医学書に、そのお記述があるという繋がりも大変興味深い点です。
ベチバーに関する内容を総合すると...「頭に良い・湿温調整・忌避作用・消臭作用に長けるベチバーを屋根に葺く生活の知恵」ということになります。
(現在更にインド在住のアーユルヴェーダ医師である亀森奈緒子先生に現地調査含めて情報を戴きました。
以下、その一部抜粋: 古典書での記述について。
<チャラカ> ・総論編 4:肌を良くする、灼熱感をとる、身体の痛みをとる、嘔吐を鎮静、生殖 組織の浄化、母乳を促す
・治療編1/145 :シャダンガパーニーヤ《musta, parpataka, ベチバー、白檀、乾燥 生姜で煎じ液を作って、冷ましたもの。口渇や熱を鎮静》
<スシュルタ>
・総論編 38:解毒、肌を良くする、痒み鎮静、ニキビのようなできもの鎮静、口 渇、出血病、ピッタ性の熱、灼熱感を鎮静。
<バーヴァプラカーシャ> karpuradi varga 86-88 ・未消化物を消化する。冷性。軽性。苦味。甘味。熱、嘔吐、酒酔い、口渇、血液
組織の病気、毒、灼熱感、排尿困難、潰瘍を鎮静する。止める働き。カファとピッ タ鎮静。
<バイシャジヤ・ラトナワリ>
・ushira asava 《ベチバーなどの薬用酒》:出血病の章 ・ushiradi kvatha 《ベチバーなどの煎じ液》:熱病の章
・ushiradi churna 《ベチバーなどのパウダー》:出血病の章 ・ushiradi taila 《ベチバーなどのオイル》:排尿困難の章
*たくさんのハーブが入った薬用オイルにべチバーも使われていることが多々。)
長い年月をかけて、洗練された先人の知恵は生活の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」を上げるだけに留まらず、わたしたちの心身の活力を上げるヒントがあるように思われます。
本来、ベチバーの原産は南インドで、常夏の20度~40度のサバナ気候で育つ植物なのです。
*サバナ気候:乾季と雨季が明瞭に区別される熱帯気候。
「イネ科の植物が、積雪のある星野村に根付いたこと」、「 "頭に良い" というのは具体的にどのような作用を伝えているのか」・・・その理由を紐解くヒントを、様々な場所で巡り合う方々に頂いています。それはその必要性があるからだと、日を追う毎に思うのです。
この先、星野村の古民家の屋根は 「茅と杉皮」から「茅とベチバーと杉皮葺き」に変化していく日が来るのかもしれない。ベチバーがこの土地を選んだのかもしれない、という考えも浮かびます。(資金が調達できればまず完成します。このクラファン で400万円で前面が修復可能)
そして、星野村はヴェーダにあるような意味合いを備えた拠り所になるのではないのか・・・と考えずにはいられません。
(『野の風』はリトリートや相談、ベチバー見学にみえる拠所になりました)
これまで以上に、訪れる人に安心感をもたらす存在となり、魂の成長を促す場所へ。
今に続く270年の佇まいを残しながらも、里山の需要と供給を満たす、継続可能な姿へと進化を遂げて行く未来へ。
そうした里の存在が、人々を魅了していく様を見守りたいと思い願う日々です。
(既に次のフェーズに入りました。協議会を会社組織にして高木家を始め、星野村のハブ的な役割を果たしながら活性化をする事業を継続していきたいと思います)
ベチバーの「根」と「葉」
仏教医学書を読んだとき、こんな疑問が湧きました。
「あれっ?八女にあるベチバーは "≪学≫Vetiveria zizanioides" なのに、この本の書かれているベチバーは別物なの?」
というのも、その医学書には、ウシラ "≪学≫Andoropogon squarosus" と記述されているからでした。
私の知っている「≪学≫Vetiveria zizanioides」ではなかったのです。
しかし、その疑問はすぐに解けました!
長崎県島原市・玉峰寺のご住職である、太瑞知見さんに教えて頂いたのです。
その情報にはこうありました。
≪学≫Andoropogon squarosus, = ≪学≫Vetiveria zizanioides
同定されていました。《Materia medica より》
つまり同じベチバーなのです。
(現在学名が更に改編され、以下の通りドミニック先生よりご教示戴きました。
《学》Chrysopogon zizanioides L.Roberto)
この資料は、太瑞知見さんが九州大学の薬学部の卒論でまとめられたものの中にありました。サンスクリット語・パーリー語・英語に通じる知見さんならではの見識に触れ、それをご教授いただいて鳥肌が立つほど感動したものです。
何の意図もなしに勉学に励まれ、何十年も前に書かれた、その卒論が私の疑問を紐解くヒントになっているのですから。
知見さんはベチバーが日本で育っているのは勿論、まさか実物を見ることができるとは思いもよらなかったと、星野村へ見学にお越しになることになりました。
その時に、星野村に集まる人々や、旬のお野菜料理、それを育む土地と人にずいぶん感動されました。そのお陰で知見さんの著書「お釈迦様の薬箱」と、私どものベチバーのコラボ講座を毎年2回ずつ開催していただくことになったのです。
(現在:脳科学の観点からの瞑想とベチバー等 京都で2回/年を開催中 次回2023.11・25予定)
お釈迦様の抒情詩とも云われる経典『ダンマパダ《法句経》』の「第24・渇愛の章337」には、ベチバーの幸せの本質を求める例えが書かれています。
ウシーラ根《ベチバーの根》・ビーラナ《ベチバー葉》がわざわざ分けて書かれているお話。それには深い意味合いが含まれています。
それまでは草としか訳されず、難解で腑に落ちなかった文章ですが、星野村の自然の中でしなやかに育つベチバーの存在に触れることで、その本質を実感された知見さんから気づきを得られて、よりお釈迦さまの伝えられたかった教えに理解が深まりました。
知見さんの見解は、こうです。
『ダンマパダ(法句経)』の「第24・渇愛の章337」は、釈尊の知恵の詩集といわれる経典です。
「香りのよいベチバーの根」は、2500年前のお釈迦様の時代にも皆の知るところだったようで経典にある「ベチバーの根」は「幸せ」を象徴しています。
「葉《ビーナラ=渇愛》」、「根《ウシーラ=幸せ》」という構図です。
はびこりやすい「ベチバーの草《ビーナラ=渇愛》」を掘り起こしたのちには、「香り高きベチバーの根《ウシーラ=幸せ》」が得られると仰っています。
同じ植物を、その葉と根に対して異なる単語で表現されたのは、一方が「渇愛」、他方が「幸せ」という対局を象徴するためだったのかもしれません。
よく考えてみると、ビーナラもウシーラも「ベチバー」の一部。
ここで「ベチバー」を「私たち」に置き換えてみると、渇愛も幸せも私たちの中にあるものである、と考えられます。
私たちには、「ベチバーの草《=ビーナラ》」のように「渇愛」が生じやすいものですが、怠ることなくその「根」を掘っていくと、いつしか香り高き「ベチバーの根《=ウシーラ》」の如き「幸せ」が得られると仰っているのではないでしょうか。
バラエティー豊かなコラボ講座
お釈迦様がなぜ、敢えて「ダンマパダ337」の章でベチバーを例えられたのか。新たに分かり易く翻訳され、説教じみない笑いも交えて、楽しく分かり易くお話くださるのが、知見さんの講座です。
長閑に包まれる古民家での「10秒瞑想《瞑想の本質を知る》」がコラボ講座の概要になっています。難しいことは一切ありません。「また聴きたい、また来たい」とお客様の反応も上々で、大変人気です。(知見様大変多忙の為、星野村では来年開催予定)
京都でも、同様にコラボ講座を開催していただいていますが、星野村での開催とは趣も、場の醸し出す雰囲気も違うようで、何度受講しても愉しく興味深い講座の1つです。
ベチバー畑・蒸留の見学、旬のお野菜料理、クラフト体験、バッチフラワー体験を随時開催しております。
他にも「スペシャル蒸留会」として八女の星野村リトリートでは、人間味あふれ、植物の力に通じる先生方の出張講座の、ベチバーコラボ講座をご一緒に展開していただいています。
・村上志緒先生《薬学博士、株式会社トトラボ 代表、著書に『日本のハーブ事典《東京堂出版》』など》 *6/6開催(終了):「もっと知りたい!ベチバーと月桃のこと on ZOOM」『ベチバーで出来ること』録画視聴可能 @トトラボ オンライン
(現在:トトラボ 主宰で山梨県のプロジェクトで早川町にてリトリート開催されています。)
・ドミニック・アウストリュック先生《クレイテラピスト、アロマテラピスト、経絡療法士、アロマ・フランス コレッジ校長》
(現在:高槻のアロマフランス 店舗にて毎月蒸留口座を開催されています。)
太瑞知見さん《曹洞宗・玉峰寺ご住職、薬剤師》
只今(2020年5月)、各講座は、新型コロナウイルスの影響で自粛しております。こういう時こそ、という想いではありますが、ここは次なる準備の時間と考えています。
今後は、星野村の旬のお野菜料理や、ベチバーウォーター・バッチフラワーにもっと気軽に触れていただける場として八女で2ヶ所、八女のお茶屋的に解放する予定で準備を進めています。(現在:『野の風』にて嗅覚反応と合わせてベチバーケアをその後必要に応じてバッチフラワー のコンサルテーションを完全予約制で受けていただいております。)
ワークショップや、様々な植物療法を体験出来る安心・安全の場づくりを、この機会に進めるべくその時間を与えられたのだろうという想いです。(現在:仲間も増え2階のサロンも稼働し始め、心身ともに調えるメニューが出揃いました)野の風Instagramハイライト
ベチバーは、お釈迦様が『幸せ』と喩えられたように、他に類のない鎮静や静寂の精油であり、心が落ち着く芳香を持っています。
海外産のベチバーは少し癖のある香りですが、九州産のベチバーは好き嫌いがあまりないようです。海外産に慣れ親しんだ人は、その芳香の豊かさに驚かれます。
「ずっと香っていたい」と、根のドライハーブを鼻にすり寄せる人も。
そんな感動をお届けするのが、私の仕事なのです。
「安心」は睡眠の質を上げ、自己肯定感も上がります。
また、私は感情のバランスを調えるバッチフラワーのプロフェッショナルでもありますので、そのツールとノウハウもあります。
ネガティヴな状態から、ポジティブな状態へと無理なく導くお手伝いが出来るとご感想を多々いただいてこれまで述べ1000人以上の方へカウンセリングして参りました。
このような「安心」をお届けできるグッズをはじめ、身体の作用を邪魔することなく免疫を上げるための、助けとなるヒト、モノ、コトをパーソナライズしたお1人お1人に合わせご提案します。
日常に役立ち、無理なく気持ちよく、元の気に戻っていかれるお手伝いをしたいのです。
「ここに来て元気になった」「命の泉の湧くところ」「一時間で体中の細胞が生き返った」「とにかく気持ち良くて・・・」「八女がやめられない・・・」と言われる多くの繋がっていただいた方々へ。
そして、八女にはまだ来ることができないけれど、すでに応援いただき繋がって下さっている方々へ。(現在:ようやくお客様へ安心と調和の場を整え、お迎えする準備が出来ました)
そして、これから繋がってくださる方々と、心から寄り添い、互いを尊重し高め合う仲間になれることを心待ちにしながらベチバーを育てます。
植物に見習い、互いの相乗効果を醸し出す里山の在り方をお伝えしていきますので、晴れて日本全国コロナが収束した暁にはどうぞ八女の地へ足をお運び下さいませ。(現在:ようやくコロナは終息したとの事ですが実際発症され、その後の経過もおつらい方が多くいらっしゃいます。その様な病名のハッキリしない状態を未病と言います。その予防も含めて『野の風』のケアを受けて頂きたいと更にその需要が高まっていると実感しています)
それまで待てない・・・という方には感情を調えるベチバーの落ち着く香りや、バッチフラワーのコンサルテーションもオンラインでご提供が可能です。
(現在:リアルとオンラインどちらも承っております。リアルは京都開催日程1回/月:まちなかリトリート)薫風株式会社 HPからお問い合わせ下さい。
ちょっとしたことですが、余裕が持てると何かしら気づきのお手伝いが出来ると思いますので、ご遠慮なくお申し付けください。ピーンと張った糸は切れ易いので、少し緩めるとほぐれやすいんですよね。
モノに関しては、今、出来ることを丁寧にお届けするのが「里の作法・SAnoSA《作り手と使い手を繋げる》」です。
どうぞお気軽にお話し下さい。
『次の一歩へ』必要な時に心よりお待ち申し上げております。
(現在:『野の風』にてリボーンプログラムをご提供中。リターンにも掲載しております。トランスフォーメーションゲーム、ほぐしケア、嗅覚反応分析、ベチバーケア、バッチフラワーコンサルテーション。旬のお野菜料理を含め、お宿は温泉付きの池の山荘。遠方より2泊3日などおいで頂きご好評です)
文責:薫風株式会社 片山恵理