第5回 ハチミツご購入者配信レポート
HANAPの橋澤です。
最近は、半袖だと肌寒くなってホットのドリンクが美味しくなってきましたね。
我が家の寒い朝晩の定番は、ホットミルクにハチミツを入れて飲みます。
コクのあるタイプのハチミツが、ホットミルクには良く合うと思います。
それでは、今回もHANAPのハチミツ生産の近況をレポートさせて頂きます。
【ハチミツの生産レポート】
-9月後半-
前回のレポートでも報告しましたオオスズメバチの襲撃がなかなか終わらず、毎日のように虫取り網を片手に蜂場のパトロールをすることが日課になりました。
ミツバチが元気良くたくさん出入りしている巣箱ほどオオスズメバチに狙われるようです。
4~5匹以上のオオスズメバチが来てしまった巣箱の前には、勇敢に戦った数千匹のミツバチたちの無残な姿があり、悲しい気持ちになります。
様々な対策を試しているのですが、来年はもっと徹底した対策をしなければと痛感します。
9月の終わりに大多喜町と長生村で夏の間に貯えられたハチミツを採蜜しました。
しかし、スズメバチの影響でミツバチが減ったため、期待したよりは少ない量の採蜜になりました。
大多喜町は、8月にたくさん採れたカラスザンショウの蜜に、イタドリなどの山に自生する植物の蜜が混じった感じの味わいになっています。
オレンジのような甘味と酸味があり濃厚だけどスッキリした風味です。
長生村のハチミツは、ヒマワリの花と蕎麦の花が主な蜜源だと思います。
ヒマワリのフルーティな酸味と蕎麦の独特な土っぽい香りとコクがあります。
去年の夏に採れた蕎麦のハチミツとも全く違う風味になっているのが、不思議で面白いです。
周辺の空き地や道路の脇などで、セイタカアワダチソウの蕾が黄色く色付いてきました。
セイタカアワダチソウは、秋の終わりに貴重な蜜源となる植物です。
セイタカアワダチソウは、外来種で、空き地にあっという間に広がり、その名の通り背が高く2m近くに成長するため、厄介者とされています。
繁殖力が強いので、日本在来のススキなどが駆逐されると心配されましたが、最近ではススキの方が勢力を伸ばしているとも言われています。
さらに、花粉症の原因とも言われますが、ブタクサと似ているだけで、セイタカアワダチソウは花粉を殆ど空中に飛ばさないので花粉症には関係ありません。
花粉症を起こすのは、スギなど風に乗せてたくさんの花粉を遠くまで飛ばす「風媒花」の植物です。
セイタカアワダチソウのように、蜜を出す植物は昆虫に受粉をしてもらう「虫媒花」ですので、大量の花粉を大気に飛ばすことはありません。
そんな誤解を受けやすい気の毒なセイタカアワダチソウですが、海外ではハーブとして使われ、花や若芽を食用にすることもあります。春菊を青臭くしたような味だそうです。
また、アワダチソウというくらいで、特に花の蕾をお風呂に入れると泡立ちます。サポニンという成分があるためです。
セイタカアワダチソウのハチミツは、納豆や靴下のような独特な香りがあり、日本では臭いから採らないという養蜂家も多いようです。
しかし、味は美味しく、海外では「ゴールデンロッドハニー」として人気があります。
香水でもそうですが、料理でも臭いものって少し入ると、いい感じのアクセントになることがあると思います。
ブルーチーズやピータンなどもその例かも知れません。
普通のハチミツに飽きた方には、きっと面白いハチミツになるんじゃないかなと思います。
【ミツバチの生態⑤】
今回は、ハチミツがどうやって出来るのかについて紹介したいと思います。
皆さんは、ハチミツって何かご存知でしょうか?
ちゃんと説明しようと思うと、意外と難しいことって多いですよね。
実はハチミツも知っているようで、ちゃんと理解している人って少ないんじゃないかなって思います。
「ミツバチがたくさんの花々を飛び回って集めた蜜を貯めたもの」や「ミツバチが体から出す蜜」って答えるかも知れませんね。
詳しく言うとちょっと違います。
花の蜜を集めただけではハチミツではありませんし、ミツバチは体内でハチミツを合成して作るわけでもありません。
せっかくの機会なので、ちょっと(かなり)詳しく説明させてもらいます!
ミツバチは確かに、たくさんの花を訪れて、蜜や花粉を巣に持ち帰ります。
これはベテランの働きバチの仕事です。
(詳しくは第2回のレポートを参照)
セイヨウミツバチの場合、巣箱から2~3km以内の花から蜜を集めて来ることが多いです。
良い蜜源を見つけると、仲間にも教えながら1日に10回以上往復することもあります。
小さな体で1日に数十kmも飛んで蜜を集めるんだから凄いですよね!
ミツバチの体重は約0.1g。その体の半分弱である40㎎ほどの花の蜜を、蜜胃という蜜を運ぶための袋に入れて運びます。
蜜集めに飛び立つミツバチは身軽で素早く、迷いなく一直線に飛んでいきますが、蜜を蜜胃にたくさん貯めて帰ってきたミツバチは、お腹を膨らませて、ヨロヨロと不器用そうに飛んで帰ってきます。
この時、蜜胃の中では、インベルターゼという酵素が分泌されます。
このインベルターゼの働きで、花の蜜の主成分であるショ糖(砂糖と同じ糖)は、ブドウ糖と果糖に分解されます。
蜜を持ち帰ったミツバチは、巣で待っている食料貯蔵係の若い働きバチに蜜を口移しで渡します。
実は、ミツバチにも花の蜜の好みがあります。基本的には糖度が高い蜜が好きです。
食料調達係になったばかりのミツバチは、糖度が低い蜜を採ってくることがありますが、糖度が低い蜜は、食料貯蔵係になかなか受け取ってもらえないんです。
そのため、質の低い蜜を持って帰ってきたミツバチは、またすぐに蜜集めには行けません。
逆に、糖度が高く質の良い蜜を持って帰ってきたミツバチは、すぐに食料貯蔵係に受け取ってもらえるので、またすぐに蜜集めに出かけられます。
この結果、群としてはより質の良い蜜が優先的に集められる仕組みになっているんです。
食料貯蔵係も受け取った蜜を蜜胃に入れます。
この貯蔵係の蜜胃でもインベルターゼが分泌されます。
このように、最低でも2匹の蜜胃を経て、ショ糖は、ブドウ糖と果糖に分解されます。
ブドウ糖と果糖は、どちらも単糖類と言って、人間にとってもそれ以上消化する必要がなく、直接腸で吸収されて、素早くエネルギー源として利用されます。
ミツバチにとっても、即効性のあるエネルギー源となるので、利用性が良くなるんですね。
もう一つ、食料貯蔵係の大切な仕事があります。
それは、巣に貯めた蜜の水分を減らして糖度を上げることです。
花の蜜は水分が多く、そのままではとても腐りやすいんです。
そこで、羽で扇いで、せっせと蜜の水分を飛ばします。
十分に糖度が上がった蜜は、栄養豊富で保存性の良い保存食になります。
そうです。
ハチミツとは、「ミツバチが花の蜜を原料に加工した保存食」なんです。
※花の蜜以外にも植物が出す蜜(花外蜜腺から出る蜜)やアブラムシなどが植物の汁液を吸って出した蜜などを原料にミツバチがハチミツにしたものもあり、これは「甘露ハチミツ」と言います。
自然界で、このような「食品加工」をして保存食を作り出す生き物はそうはいません。
地球上で初めて作られた加工食品は、人類が誕生するはるか昔にミツバチが作っていたんです。
しっかりと糖度が上がって熟成し終わったハチミツは、ミツロウで蓋をされます。
こうなると、何年も保存可能な状態になり、品質の良いハチミツとなります。
数万匹のミツバチたちの努力の結晶がハチミツです。
もちろん、ミツバチたちは、人間のためにハチミツを作ってあげてるつもりはありません。
花が少ない時期が来た時の備えとして、花がたくさん咲いている時期に出来るだけ多くのハチミツを作り貯えておきます。
私たちは、ハチミツがたくさん貯えられて巣箱から、その群れの生存に問題がない分のハチミツを分けて貰っています。
次回レポートもお楽しみに!