第4回 ハチミツご購入者配信レポート
HANAPの橋澤です。
少しずつ日が短くなり、すっかり秋ですね。
長生村では綺麗な15夜のお月様が見えましたが、皆様はいかがでしたでしょうか。
それでは、今回もHANAPのハチミツ生産の近況をレポートさせて頂きます。
【ハチミツの生産レポート】
-9月前半-
9月に入って今のところ、どの蜂場も採蜜が出来るほどはハチミツがまだ溜まっていません。
ハチミツが採れないからといって、ミツバチたちのお世話は手を抜けません。
ミツバチたちが暮らしていけるだけのハチミツがちゃんとあるか、ダニが寄生していないか、女王バチはしっかり産卵をしているか、働きバチは十分な数がいるか、などを確認しながら、適切なお世話をしなければいけません。
そして、この時期の一番の問題はスズメバチです!
スズメバチにも色んな種類がいるのですが、養蜂で一番問題になるのはオオスズメバチという大型のスズメバチです。
オオスズメバチの集団に襲われた巣箱の前には、数千匹ものミツバチの死体が山のようになり、最悪の場合、群は壊滅してしまいます。
そうならないように、ミツバチを襲いに来たスズメバチを捕らえるトラップを巣箱に取り付けたり、あの手この手でスズメバチから防御するのですが、これさえやれば完璧に防げるという方法はなかなかありません。
一番の防御方法は、虫取り網で蜂場に来たオオスズメバチを片っ端から捕まえることです。
しかし、一日中巣箱を見張っているわけにも行きません。
残念ながら、今年は7つの群がオオスズメバチの集団に襲われてしまいました。全滅は免れましたが、ミツバチの数が半減してしまい、群には深刻なダメージです。
養蜂家にとっては厄介者のオオスズメバチですが、自然界でほぼ最強の肉食昆虫であるオオスズメバチがいなくなってしまっては、生態系に大きな影響が出ます。
外来種であるセイヨウミツバチが日本では(一部の地域を除き)野生化できないのは、オオスズメバチのお陰でもあります。セイヨウミツバチが野生化できないお陰で、在来種であるニホンミツバチの住処が守られているとも言えます。
オオスズメバチの襲撃シーズンが早く納まるのを望みながら、これも豊かな自然の一部で養蜂を出来ている証かなとも思います。
長生村では、名産品でもある「ながいきそば」の蕎麦の花が咲き始めました。
「ながいきそば」は乾麺だけでなく、お菓子や焼酎にもなっています。私のオススメはながいきそば焼酎!クセがなくとても飲みやすい美味しい焼酎です。
今年も美味しい蕎麦の実がたくさんできるように、そしてたくさん採蜜できるようにミツバチたちに頑張ってもらっています。
【ミツバチの生態④】
以前ご紹介したようにミツバチたちは何万匹もの働きバチが様々な役割を分担しながら、協力し合って暮らしています。
このような高度な社会を築くミツバチたちは、お互いにコミュニケーションをとって様々な情報を伝え合っています。
もちろん、人間のように言葉を話したり、文字を書いたりはしません。
しかし、ミツバチたちも本当に複雑な情報を、ミツバチたちの「声」で伝え合っています。
その主な方法は、音と香り(フェロモン)です。
実際に、巣箱を開けるとミツバチたちの様々な「声」を聴きます。
警戒心の強い群では、巣箱の蓋を開けただけで、ブンブンと羽を鳴らしながらミツバチが出てきます。しかし、暖かく天気が良い日など、ミツバチの機嫌が良いと、巣箱を開けても静かに大人しくしています。
他にもパイピングと言われる独特な羽音を聞くこともあります。
パイピングの音は、働きバチと女王バチとで違います。特に産まれた(羽化した)ばかりの女王バチは頻繁にパイピングをして、自分の誕生を伝えます。
この新女王バチの「声」を聴くのは、養蜂家としてとても嬉しい瞬間でもあります。
女王バチが巣箱の中で元気にしているかは、常に働きバチたちにとって重要な情報です。女王バチが健在化は、女王バチが出すフェロモンを認識していると言われています。
働きバチたちは、近くに他の巣箱があっても必ず自分の巣箱に帰ります。
それは、正確に巣箱の場所を記憶していることもありますが、仲間の働きバチが出すフェロモンの香りを認識しているためです。実際に、巣箱の入り口には、お尻を高く上げて羽ばたくことで自分たちの香りを知らせている働きバチの姿をよく目にします。
本当に様々な方法で情報を伝え合っていますが、中でも一番有名なミツバチのコミュニケーションと言えば、ハチの字ダンスだと思います。
これは、カール・フォン・フリッシュ博士というオーストリアの動物行動学者が発見し、1973年にノーベル賞を受賞しました。
蜜が一杯取れる良い蜜源を見つけた働きバチは、その場所を巣に帰って仲間に教えます。
ミツバチの巣は垂直に吊り下がった板状になっています。この巣の垂直方向に対してaの角度で羽音を鳴らしお尻を振りながら進みます。一定の尻振りをした後、円を描きながら回り、またaの角度に尻振りして進み、今度は逆方向に円を描きながら回り、またaの角度に尻振りを繰り返します。これがハチの字ダンスというものです。
aの方向は、太陽と蜜源の位置関係を意味し、太陽からaの角度の方角に蜜源があることを意味しています。
さらに、尻振りの時間によって、蜜源までの距離を教えています。1.5秒だとニホンミツバチでは700m、セイヨウミツバチでは1,250mの距離を意味します。この時間が長くなるほど、蜜源の場所は遠くなります。
ミツバチが持つ非常に正確な感覚があってこその情報伝達方法ですね。
ミツバチは良く観察すると本当に様々な「声」で話し合っているのが分かります。私たちがまだ知らない彼女たちの「声」がいっぱいあるんだろうなって思います。
次回レポートもお楽しみに!