第6回(最終回) ハチミツご購入者配信レポート
HANAPの橋澤です。
最近は、今年の採蜜作業もほぼ終了になり、ミツバチの冬越しに向けて、準備を進めています。
ミツバチは他の多くの昆虫とは違い、冬眠をしません。寒い冬を巣箱の中で、身を寄せ合い、温め合って乗り越えます。そのためのエネルギー源がハチミツです。
そのため、冬越しするには、十分にハチミツが溜まっていること、温め合える仲間がたくさんいることが必要になります。
1群も逃さず元気に冬を越して、来年も春から美味しいハチミツがたくさん採れるように、日々ミツバチの管理をさせてもらっています。
早くも最後の配信レポートとなりました。
拙いレポートですが、ミツバチやハチミツのことを知って楽しんでもらえたら幸いです。
それでは、今回もHANAPのハチミツ生産の近況をレポートさせて頂きます。
【ハチミツの生産レポート】
-10月-
10月の主な蜜源植物は、なんといってもセイタカアワダチソウです。
セイタカアワダチソウの話は前回のレポートでも紹介させて頂きましたが、この時期、そこら中で黄色く咲き誇るセイタカアワダチソウには、蜜や花粉を求めてミツバチだけでなく本当に様々な種類の昆虫が集まります。
多くの虫たちにとって冬の前の貴重な蜜源なのだなと思います。
娘は散歩に行くと、黄色いお花にどんな虫が来ているか探すのが日課になりました。
ミツバチもセイタカアワダチソウの蜜をたくさん集めてきます。
数日ぶりに天気が良く暖かい日には、ミツバチも待ってましたと一気に蜜を集めに飛び回ります。
そんな日の夕方には、養蜂場の近くを通ると異臭騒ぎになるほど、セイタカアワダチソウの蜜の独特な香りが立ち込めます。
長生村では、この時期に蕎麦の花も咲きます。
他にも、秋にはアキノノゲシ、センダングサ、ナツユキカズラなどミツバチが好む様々な雑草の花が咲いています。
そのような花々からできた秋の百花蜜は、採蜜地により風味は違うのですが、濃厚で凝縮したコクがあります。春の華やかさとは違い、力強い円熟したような味わいがあります。
そのまま味わうには好みが分かれるハチミツもありますが、タレやドレッシングなどを作るのに使うと、ひと味違う美味しいお料理の引き立て役になってくれます。
【日本のハチミツと養蜂業界について】
今回は、国内で流通するハチミツと養蜂産業について少しご紹介しようと思います。
農林水産省の報告によると、令和2年度の国内のハチミツ消費量は、約5.2万トンで最近は健康志向のためか増加傾向にあります。
このうち、国産と輸入はどれくらいの割合だと思いますか?
国内のハチミツ生産量は、3千トン弱でほぼ横ばいです。つまり、ハチミツの国内自給率は僅か6%程度しかありません。
残りの約94%は輸入に頼っています。
主な輸入先は、中国で輸入ハチミツの69%を占めます。次いで、アルゼンチン産が10%、カナダ産が8%となります。
特に中国産のハチミツが多いのは、価格が安いからです。
テレビのドキュメンタリー番組などの話では、中国で養蜂の仕事は不安定で稼ぎが少なく家族を養うのは難しいため、後継者が減っているそうです。中国でも、品質を高めて少しでも高く販売出来れば生産者は助かりますが、多くの場合、簡単ではないようです。
私は、国産ハチミツの生産と消費がもっと増えればいいなと思いますが、輸入ハチミツが悪いとは思いません。
海外には、日本では採れない風味の美味しいハチミツもたくさんあります。
輸入ハチミツ=安物ではなく、日本よりももっと厳しい基準を設けて生産されているハチミツや、ニュージーランドのマヌカハニーのように特有の効能を持つハチミツなど、高級なハチミツもたくさんあります。
そのようなちょっと珍しいハチミツが、ハチミツに興味を持ったり好きになったりするきっかけになることも多いと思います。
ただ、日本にも美味しいハチミツがたくさんあること、産地や季節によって本当に様々な風味のハチミツを楽しめることを、より多くの方に知ってもらえたら嬉しいなと思っています。
国内の養蜂家(趣味養蜂等も含む)の戸数は、令和3年1月時点で、1万5百戸以上で、近年は増加し続けています。しかし、10群以上飼育している戸数は約3千戸でほぼ横ばいです。
環境保全や趣味などでミツバチを飼育する方は増えていますが、養蜂を生業としている方は減少傾向にあるようです。
養蜂家の高齢化や後継者不足などの問題もありますが、昔に比べてミカンやレンゲなどの蜜源植物の栽培面積が減少しており、養蜂に適した環境が減っていると言われています。
山があっても杉などの針葉樹ばかりでは、ミツバチは暮らしていけません。
田んぼや畑があっても、農薬をたくさん使っていると、やはりミツバチにとっては暮らしにくい環境になります。
また、ほぼ全ての養蜂家にとって問題になるのが、ミツバチに寄生するダニです。
ダニに対して何の対策も取らないと、秋にダニがたくさん発生し、冬を乗り越えられなくなります。また、この寄生ダニが、ミツバチの感染症を広げる要因にもなります。
そのため、一般的には採蜜をしない時期に薬剤を使ってダニを駆除する必要がありますが、薬剤に耐性を持つダニの出現が問題視されています。
課題も多い養蜂業界ですが、養蜂が衰退してしまうと、人類は食料危機になると言われています。
なぜなら、養蜂産業はハチミツの生産以外にも重要な役割があるからです。
それは、野菜や果実などの受粉を助ける「花粉交配」の仕事です。
つまり、ミツバチが一度にたくさんの花に訪れるため、植物にとって非常に優秀な受粉を助けるパートナー(送粉者)になってくれるということです。
日本での養蜂の経済価値は、約80億円でそのうちハチミツの生産が56億円だそうです。しかし、花粉交配の経済価値は、約1,800億円と試算されています。
最近では、花粉交配用のミツバチが不足しているという話も聞きます。
そのため、日本でも養蜂産業をもっと盛り上げたり、適切なミツバチの飼育を促進したりするために養蜂振興法という法律があります。
それにより、現在は趣味であってもミツバチを飼育するには、法律はもちろん様々な決まりを理解し適切な飼育に努める義務があります。そして、国や地方公共団体と協力して蜜源植物の増加やミツバチの飼育技術の普及や向上も図られています。
薬だけに頼らないダニ対策も様々な方法が提唱されてきています。
田畑に使う農薬も、改正農薬取締法により、ミツバチへの農薬の影響を再評価する取り組みがされています。
私たちHANAPも、国産ハチミツや養蜂の魅力を伝えたり、蜜源植物を増やしたり、独自に飼育技術の向上にも努めて、いずれは日本の養蜂業界にも微力ながら貢献できる存在になっていければと考えています。
【最後に】
この度は、養蜂を始めたばかりのまだまだ未熟なHANAPの応援、ハチミツのご購入、本当にありがとうございます。
私たちが拠点とする千葉県の外房地域は、温暖な気候でミツバチにとっても良い環境だと思います。
ハチミツは、採れた場所の自然環境によっても風味が変わります。
時期折々に様々な風味のハチミツが採れるのも、豊かな自然環境があってこそです。
そして、養蜂を始めてから今まで以上に植物や昆虫、カエルやヘビ、野鳥など、自然の生き物をとっても身近に感じるようになりました。
自然環境を守るためには、そこに住む動植物の生態系を守ることが非常に重要だと思います。
実は私たちが養蜂をしている場所には、千葉県レッドデータブックに記載されている貴重な野生生物もたくさん暮らしています。
そのような場所で、養蜂ができることが本当に幸せだと思うのですが、次の世代にもこうした環境を残すことができるように、今の私たちが何かできることはないかと考えるようになりました。
そのため、生物多様性の保全にも真剣に取り組んでいきたいと思っています。
やっともう少しで皆様に今年のHANAPハチミツをお届け出来ます。
千葉県の自然豊かな環境の中で、小さなミツバチたちが家族で協力して、時には天敵などの自然の脅威と戦いながら、その時々に咲く様々な花からの恵みを集めて凝縮したハチミツです。
そんな情景を思い描きながら、最後まで味わい楽しんで頂けたら幸せです。
そして、機会があれば実際に外房にも遊びに来て、HANAPのミツバチたちが暮らす自然を体験してもらいたいと思います。
私たちはこれから、そんな自然の恵みを体験し楽しめる場所も少しずつ作っていきたいと思っています。
これからも、私たちの活動を見守り、応援してもらえたら嬉しいです!