皆さまこんにちは。とらいふ武蔵野運営企画推進室の河原です。
今日は、先日とらいふ武蔵野で起きたある事例から、緊急時におけるACPというテーマでお話したいと思います。
(ACP:Advance(前もって)Care(ケアを)Planning(計画する)の略語で、将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロ セスのこと)
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4月●日 9時33分
事務所で仕事をしていたところ、看護師から内線電話が入りました。
「入浴後、Aさんの様子がおかしく、脳に異変がある可能性があります」
居室に駆けつけたところ、ベッドに横たわるAさんは、左半身に力が入らず、顔をしきりに右に向けて、呂律が回りにくい状態でした。脳卒中の疑いが強いと判断し、直ちに娘様ヘ連絡し、救急要請をすることになりました。9:50 救急隊到着。10:10 搬送先が決定しB病院へ搬送となりました。
MRIの検査の結果、脳梗塞の診断がつき、神経内科の医師から次のような説明がありました。
「現在は発症から4.5時間以内なので、血管に詰まった血栓を溶かす治療(t-PA療法)を実施できます。ただ、超高齢の方なので治療効果があるかはなんとも言えず、薬の副作用として出血のリスクが心配されます」
施設職員から、Aさんは過去に原因不明の下血があったこと、2年前の面談でAさんと家族から身体拘束(安全のために体を紐などで縛り行動を抑制すること)は極力避けたいという意思表明があったことを医師に伝えると、
「では尚さら慎重に考えましょう。積極的な治療を望まないのであれば、入院せず施設に戻るという選択肢もあります」という返答がありました。
家族・主治医・施設職員による話し合いを行い、入院した場合としなかった場合のメリット・デメリットを比較して「t-PA療法は実施せず、脳梗塞再発予防の治療導入のために入院する」ことを決定。「身体拘束を最小限にするため、病院と施設で連携しながら早期退院を目指す」という方針を3者で確認し合いました。主治医の配慮により、とらいふ武蔵野の嘱託医の回診日(3日後)に合わせてて退院調整をしてくださることに。
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Aさんの経過は良好で、まもなく退院されることが決まっています。
Aさんの事例を振り返り、
●発症から搬送までの早期対応が行えたこと
●急性期の治療方針選択の場面において、主治医からの十分な情報提供があり、それをもとに家族・主治医・施設職員の3者がAさんにとっての最善を考えて方針を決定できたこと
●入院時から退院支援についての話し合いができたこと
これらのことにより、早期退院という結果に繋げることができたと考えています。
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時間が勝負の脳卒中治療において、発症のサインをしっかりキャッチして早期に医療機関に繋ぐことはとても大切です。
そしてまた、超高齢の、認知症等により意思決定が難しい状況にあるご入居者に対して、「平常時から本人・家族との関係性を築きながら継続的なACPを行い、緊急時のACPに繋げられるようにすること」の重要性について、私たち施設職員がしっかり認識して取り組む必要があると、あらためて学ばせていただきました。
「Aさんが幸運の持ち主だった、で終わらせないよう、いつでもどの職員でも同じような対応ができるよう、振り返りと学びの機会を持つように」
翌朝、顧問からこんな助言をいただきました。
Aさんから学ばせていただいたことを、とらいふのスタンダードケアとして定着させていけるように取り組みたいと思います。
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長文にお付き合いいただき、ありがとうございます。
ACP推進のための交流会、もしもの会を4月23日に開催いたします。
ご興味をお持ちの方は、ぜひお問合せください♪
とらいふ武蔵野
河原優子