ただただ酒の友として
醸造家と一口に言っても価値観や考え方は十人十色で、「いかなる想いを持って酒を醸すか」、その姿勢に個性が生まれます。
「美味しい酒を造ること」「売れる酒を作ること」「デザイン通りに創ること」
造り手の数だけ答えがあり、絶対的な正解はありません。
この明確な答えなき問いに対する自問自答は、この先も酒を醸し続ける限り付き纏う永遠のテーマでしょう。
令和4年10月現在の私はこの問いに対して「景色を引き出すこと」と答えてみたい。
酒の生命(価値)は買い求めたときに生ずるのではなく、それを味わうその刹那のひとときにこそ生まれるものだと思います。
特にテーブルシーンおいて、
四季折々の料理や風情に誘われて、知らず知らずに人々が集い談笑すること。
それを生み出した日本固有の豊かな風土やその土地に想いを馳せてみること。
醸造家は米と酒、生産者と消費者のあわいに立つその立場から、生産者とも消費者とも就かない視点に立ってそれらと相対することができる稀有なポジションに立たされているのかもしれません。
そして農業も醸造も人の手によって生み出される営みで、私たちの取捨選択によってその有り様は大きく変化してゆきます。
だからこそ、私たち造り手はどこでだれがどのような想いで育ててきたものなのかを、飲み手の皆さまに届けてゆきたい。
稲を育てる人、米を磨く人、酒を醸す人、それぞれがみな極上の一杯を提供できるようにと祈りを込めて造られる手のひらの芸術を皆さまに味わってほしい。
だから私は米も酒も、人も自然も、花も鳥も風も月も、みな一様に友と呼びたい。
テーブルシーンを取り巻くその全てと、それらを育んできた伝統や文化、風土、人々の営みにオマージュを捧げて、ただただ酒の友として、酒のある景色がよりいっそう美しいものであること、そして「芳扇」が皆さまにとって気の置けない友としてほんのり花を添えることを願っています。
でじま芳扇堂の主要銘柄「芳扇」は、人とヒト、人とコト、人とトコロを結びつける友として、皆さまの暮らしに豊かな景色を魅せる酒で在り続けます。
■「芳扇 友」
・原料 :米、米麹
・原料米:レイホウ100%使用
・生産地:熊本県阿蘇市
・生産者:内田農場
※「つぶつぶ」改め「友」に決定しました。