2022/10/06 05:29
図書館運営、物珍しさがなくなってからも
 【元駐在員 秋元さん 応援メッセージ】

サバイディー、皆さん こんにちは。

2010年にALC図書館が現在の場所に移転した当時に駐在をされていた 秋元さんから心強い応援メッセージをいただきました!

現地で ラオスの子どもたちやスタッフと過ごし、ALCの活動や図書館をずっとみてきた秋元さんだからこその視点、考え・想いが詰まったメッセージです。そして、このALC図書館存続プロジェクトの意味を、あらためて考えさせられました。

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秋元 波さん (2009~2012年 ラオス事務所駐在)

ALC図書館の子どもたちと遠足(手前中央が筆者)

ドブ川に掛かる小さな橋の手前を右に曲がるとそこからは赤土の道。道はでこぼこで、相棒の赤 い自転車が上下に弾む。雨季はシン(ラオスの民族衣装のスカート)に泥水が跳ねないよう気を遣う。大小の水たまりを避けながら進むとラオスのこども(ALC)事務所兼図書館に到着。私がラオスに駐在して一年弱でこの場所に移った。帰国から十年。赤土の道路は舗装されているようだ。

家族みんなで図書館に(5人みつかりましたか?)

近くの学校の昼休みには、一階の図書館に子どもたちが溢れるほどやってきて、汗と足の匂いが充満して、空気がモワーッとする。この場所があるから、スタッフは地方の学校を巡回して、教員が子どもが読書が好きじゃないと主張しても、いやいや、好きじゃないのは大人、子どもは本好きです、と自信を持って伝えることができる。スタッフは、不定期に開けると子どもの足が遠のくこと、面白い仕掛けをしなければ飽きられることを知っている。地方の学校巡回が読書推進の説教に終わらず、教員の声に耳を傾け、適した方法を一緒に探すプロセスにできるのは自分たちも図書館を運営しているからだ。図書館と言っても、リコーダー教室、ダンス、工作、弦楽コンサート、手品、映画上映、寿司作り、遠足、季節のイベントなど、スタッフのやりたいことや子どもの要望に応えてなんでもありなので、本が多い児童館の運営といったところか。

スタッフとその家族で図書館内に架かる虹のボードを制作。虹の色は図書貸出カードの色に対応し、カードと同じ色のところにその子の顔写真が貼られる。本を沢山借りてカード内の貸出記録がいっぱいになったら、上段の色のカードをもらえ写真も上の段に貼られるしくみ 

放課後に訪れた小学生の図書カードに貸出冊数と返却日を記入すると、ウアイ・ナミはラオ語は書けないけど、数字は書けるんだね、と言われる。別の日には、子どもたちが二階の事務所で私を見つけ、感激の声で、ここにはコピー機があるんだね。これをコピーして!と小さなカンニングシートを悪びれもせず堂々と見せてきたことがあった。日本人駐在員はどうしてもカウンターパートや教員など大人社会では距離を置かれるものだが、子どもは率直で正直で容赦ない。眉をひそめたくなる現実も含め、私はここで子どもたちから色んなことを教わった。愛おしい思い出が詰まるかけがえのない場所だ。

図書の貸出、返却を手伝うボランティアの中学生

しかし、元駐在員にとってかけがえのない図書館が、なぜラオスに行ったこともないかもしれないあなたにとって守りたい場所になるのだろう。維持できないのであれば、家賃が高騰する首都を出て、隣のヴィエンチャン県や、趣向を変えて南端のアタプー県とか、とにかく収入に見合った運営可能な場所に移転すればよいのではないか。なぜ、今の場所でなくてはいけないのか、子どもたちの需要はラオス中どこでも高く、きっと他の場所でも図書館は盛況にできる、と7月までヴィエンチャンに駐在していたスタッフの渡邉さんに伝えたところ、こんな答えが返ってきた。渡邉さんのお返事の中に、ここで継続したい理由のエッセンスが凝縮されているように思う。

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私の考えとして聴いてください。(中略)

「同じ場所・地域で継続して活動し、そのなかでさらに成長・発展していくこと」にスタッフにチャレンジしていってもらいたいから、というのが私の中での一番大きな想いです。(中略)

ラオス各地の色々な場所で、まだ本に触れたことがない子ども達に図書室支援をしていくことも重要ですが、同じ場所で、継続して図書館を運営していくこと、そしてそのなかで成長しつづけることも、とても大切だと思うのです。逆にそちらの方が、実は 結構難しい。ハックアーン(学校図書室)でもそうですが、開設してすぐは子ども達は物珍しさもあって、図書室に興味を示し頻繁に訪れてくれますし、先生のモチベーションも高いですが、5年後、10年後もその状態を保つためには、絶えず成長していくことが重要になってきます。

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渡邉さんの、物珍しさがなくなってから、成長し続けることが大切で難しい、というメッセージが胸にストンというか、ずしりと落ちた。ALC図書館はスラムや難民キャンプに位置しているわけではなく、現在のサパンモー村にあるからこそ意義がある、というわけではない。でも、図書館の需要の高さは、首都でも南端の県でも、これまで活動がなかったか、定着しなかったため滅多にないからで、ラオスで図書館運営を継続することの難しさを物語っているとも言える。同じ場所で、10年、20年と継続すること自体がチャレンジなのだ。

全国のハックアーンを巡回していると、図書室が廃れる理由は枚挙にいとまがない。教員が忙しい、場所が狭い、開放すると本が失くなるから開けない、洪水で本が流された、シロアリに食われた、研修を受けた教員が異動したのでノウハウがない、新しい本を買うお金がなく古い本ばかり、などなど。このような図書室を巡回し、再生のため活動しているのに、実は足元がおぼつかないでは、面子が潰れるだろうか?いや、ここでなんとか踏ん張り図書館を維持しようとしている彼女たちだから実践者として伴走できるのかもしれない。

子どもセンター職員向け研修(最前列は子ども席)

2010年にサパンモー村に移転するまで長年事務所兼図書館にしていた場所は、大家さんはチャンタソン代表のお父さんで、彼の家に隣接していた。彼なら、どうしても払えませんと言えば、払えるようになるまで待ってあげようと言ってくれたかもしれない(現大家さんも相当寛容だが・・・)。でも、そうやって代表のご家族におんぶに抱っこになって土壇場を乗り切るより、クラウドファンディングでたくさんの人たちに活動が認められ支えられる方が、NGOとして健全だと思う。中長期的には、収入と活動が釣り合うよう資金調達と活動規模をデザインすることが求められ、そのためにも支援者、協力者の裾野を広げることは重要で、今回のクラウドファンディングがそのきっかけになってほしいと願っている。

この資金不足を乗り越え、ALC図書館が根を張り発展していくために、どうか応援をお願いいたします。