「登山では遭難をしても「自力」下山は当たり前」
「レスキューは極力、要請してはいけません」
そんな風に教えられてきたし、僕自身もそうあるべきだと思っていました。
しかし、洪水でいろんなものが沈むという、人生の「遭難」にあって、クラウドファンディングという「レスキュー」を呼ぶことを僕は決めてしまいました。
しかしページの準備をしていても、やはり迷いはありました。
ページの最後の部分で、登山家でライターの恩田真砂美さんにコメント欄をお願いすると、こんなかたちで書き出してくれていました。
「このような形で呼びかけをされるのは大変な決断があったことと思います。」
この言葉に救われ、背中を押された気がしました。
恩田さんに言われたことで、過大解釈かもしれないけれど、登山をする者としても間違ってはいなかったんだと思うことができ、公開に踏み切れました。
恥ずかしながら、あわてて公開したためにシステムが分かっておらず、しかも他の作業が連続していたこともあり、今日になってはじめて寄付をしていただいた方々の名簿を開きました。
お名前が次々と胸に刺さってきて、今は言葉もありません。
恩田さんは『アート・オブ・フリーダム』という山の本も翻訳しています。
先ほどその本を開くと、たまたまこんな一文が。
「何かを失う、あるいはすべてを失うと、感覚は研ぎ澄まされ、残ったものへの認識も鋭くなる」
洪水で多くのものが失われ、残ったものを見て、気が付かされたこと。それは、人との出会いの大切さでした。