2018/04/24 13:50

皆さま、


4月18日、ムザファラバードからイスラマバードに移動して、カシミール政府の宿舎カシミールハウスに2泊して、金曜日の夜遅い便で、バンコクに飛び、そこで20時間のトランジットして、福岡空港に22日朝、おかげさまで無事帰国しました。ご支援ありがとうございました。

今回は、パキスタン国内の移動と宿泊はすべて現地政府持ちだったため、日本からの往復航空券と、空港アクセスだけのミニマムな金額で、すみました。 (15万円)

カシミールハウスでは、ルームサービスのお茶やご飯がタダなので、ここにこもっていれば、お金はいりません。


タイ航空が、木曜日発着がないために、イスラマバードに2泊することになったのですが、おかげで4月20日から使用するイスラマバード新空港から帰国かと期待していたら、なんと直前に2週間延期となりました。結局、古い空港から帰国します。
  
1. インドのカシミール地方の学者との出会い

今回の旅で一番うれしかったのは、イスラマバードでもムザファラバードでも同じ宿になった、インドのカシミール地方のスリナガルから参加した言語学者に、デジタル言語学を評価してもらえたことです。

スリナガルは、ムザファラバードの上流にあり、距離は170kmほど、まっすぐ来れば車で4時間くらいで来れるそうなのですが、国境が閉鎖されているために、デリー、イスラマバードを経由して大回りしてこなければいけない、そうです。

彼は隔年に行われるカシミール国際言語学会に、三回とも出ている皆勤者です。

宿の彼の部屋で雑談を混じえながら行った僕の説明を、大変喜んでくださり、いろいろ知らない学者や本を教えて貰いました。

往復航空券代は出せないが、現地滞在費はすべて持つから、講義しにこないかと、言ってくださったので、どうせなら集中講義にしてもらいたいとお願いしました。実現するといいなあ、と思っています。

2. カシミールの高山の山頂で即身成仏した聖者

僕は旅先で雨に振られたことがあまりないので、先日の福井(4月というのに、雪まで積もった)永平寺は珍しい経験でした。そして、今回のカシミール国際言語学会も、月曜火曜は雨降りでした。

学会が閉会して、水曜日は巡検でしたが、朝からとてもキレイな、青空でした。

学会で一緒に写真を撮った学生や先生とは、「水曜日の巡検行きますか。その時、また話しましょう。」と言い交わしていたのですが、、、。

なんとインドのカシミール地方からいらした先生と、僕と、パキスタンの年輩の先生の三人だけは、特別にガイドの先生が二人エスコートとして随行して、ハイエースでカシミール国家迎賓館の裏手から一気に3000m登り、ピルチナシ(ピルは山、チナシはそこで即身成仏した聖者の名)に登りました。

イギリス統治下に造った道路ですが、みるみる下界が小さくなっていくのに驚きました。周囲の山の頂が、下に見えてきます。

カシミールでは、山の斜面に家を建てて、道路から急峻な階段を登るか下るかして家にたどり着きます。

かなりの高度になっても、山の斜面に家と畑があることにも、びっくりしました。


好天のもと、車で山頂に着き、聖者の棺の置かれた廟を訪れて、山小屋でチャイを飲もうとしたら、いきなり驟雨となりました。

この驟雨は、僕には聖者の歓迎に思えました。

釈迦や道元のように、ヒトは生まれた状態では動物に過ぎないが、修行と学習によって、人間になる、ということを悟り、人々にそれを伝えようとするが、伝わらなかった。

彼にできる最後のことは、地球の平和と人類の知的成長を祈ること。そこで、富士山並に高い山の頂上で、ひたすら祈りを捧げる。

動物に過ぎないヒトが、いつか言葉の力に気付いて悟ることを、聖者は命の限り祈り続けたのではないか。 

そんなことを考えながら山頂を降りて、昼食会場の2500mのあたりにある観光省のゲストハウスに着く頃には、雨は上がっていました。

イスラマバードに戻って、宿舎の近くのモスクの早朝礼拝に、隅のほうで座っていたら、ふとひらめいたことがあります。

コーランの言葉は、一言一句変えてはならないというムハンマドの言葉は、実は、「俺の言葉は、一言一句変えてはならない」ではなかったか。

微妙な違いともいえなくもないですが、やはり大きな違いです。イスラム社会は、もっと革新的でなければならないと思うので。


3. 5月初旬にヨルダンで文明論の学会、7月初旬にアイルランドで意味論の学会


さて、これからの予定なしですが、5月初旬にヨルダンで文明論の学会、7月初旬をアイルランドのダブリンで意味論の学会(昨年サンクトペテルブルクで行われた学会の続き)に参加します。


また、昨年9月にスペインのマヨルカ島で開かれた、チョムスキー派の言語獲得の学会から、論文集が刊行されることになり、一章を担当しており、その締め切りが今月末です。

 

帰国して最初に読んだメールは、ロシア認知言語学会からで、昨年7月にサンクトペテルブルクで行った講演内容をまとめた論文が受理されたことを伝えてくれました。いくつか修正指定があつたので、手直ししているところです。

 

それでは皆さま、お元気で

得丸久文