ここで突然みなさんに質問ですが、2ストのピストンには大体トップとセカンドの2本のピストンリングがついています。
4ストのピストンにはそれに加えてもう一組「オイルリング」がついてリング3組の構成になっているものが多いですね。
さて、このオイルリングはなんの仕事をしている、と思いますか?
多くの方はオイルを掻き落とすのがオイルリングの仕事だろう、と思っているのではありませんか?実は自分もそう思っていました。
でも、今回2スト水素バイクを開発するにあたって、あらためて考えてみたんです。
2ストの場合には混合気に混じったオイルがクランクシャフトも潤滑するし、そのまま燃焼室にも入ってピストンリングも潤滑する。上から下からオイルがリングまで届くのだろうと思います。
ところがそのオイルが潤沢そうな2ストにはオイルを掻き落とす(?)リングはついていない。
4ストの場合はクランクケースにはオイルがいっぱい入っていて、これが様々な方法で、シリンダー内壁に届けられるように工夫はされています。でも、下からだけですよね?一見2ストよりは、上までオイルは届きにくそうです。
それなのにわざわざオイルリングを追加してオイルを掻き落とす必要がどうしてあるんでしょうか。
オイルリングでオイルが掻き落とされ、さらにセカンドリングで掻き落とされ、一体オイルはどうやってトップリングまで届くのでしょう。
「さああここで、iBが得意なプラトーホーニングが威力を発揮します。ピストンリングが摺動する面は通常ホーニングの1/10の滑らかさでありながらiBの超絶技巧によって深いオイル溝が刻まれているので、ここに滞留したオイルがトップリングを潤滑するのです。」
などとしたり顔で言ったりしていますが、本当にそれだけでトップリングはじゅうぶんに潤滑されるものなんでしょうか。不思議な感じがしますよね。トップリングはずいぶん過酷な条件の下で仕事をしているようにみえます。
この辺りのことを色々な人に尋ねてみるのですが(現在ピストンリングメーカーさんにもお問合せをしています。)なかなか明快な回答が得られていません。
実はオイルリングは過剰なオイルを掻き落とす一方で、必要なオイルをシリンダー上部に供給する役割を果たしているのではないだろうか。
だから4ストにはオイルリングが必要なのではないだろうか。
というのが現状の仮説なんですが、こういうことも含め、全てこれからの2スト水素バイク開発の過程で色々と実験して確かめていくしかないだろうと考えています。
2号機もこの後の実験の初期段階では、2ストオイルを供給して、煙を出して走ろうと思っているんです。
煙を吐かない2ストの可能性についてお話しすると言いながら期待はずれかもしれませんが、これなら焼き付く心配はないでしょう。そこから始めて最終的には煙を吐かないでも潤滑する方法があるのかどうか、これを試していきたいんです。
そして、この方法で期待するような性能を発揮するようなら、オイルの量を減らしていくことになるでしょう。
どこかの時点ではきっと焼きつきも経験することになるでしょう。
でも、任せてください。そんな時こそ、我々内燃機屋の出番ではないですか!(^o^)
むしろここにこそ、内燃機屋が水素バイク開発などというとんでもないことに挑戦する意義があろうってもんです。
再メッキでも、スリーブ製作でもドンとこい!です。わはは。(^o^)
と言ったところで、実は近々NPRさんがご来社して技術相談に乗っていただけることになりました。続きはその結果をご報告ということにしたいと思います。