『京都 中京民商 商人・職人 生活史』第2部に「甦れ商人道」と題した文章を寄稿していただいている松尾匡さん(立命館大学教授)より、推薦の文章をいただきましたので、ご紹介します。
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財界や政府はこのかん、中小企業や個人事業を、「生産性が低い」として「ゾンビ」扱いし、淘汰する路線を進めてきました。海外に出るか、大企業の傘下に入るか、自ら規模拡大するかしなければ、商売畳めというわけです。コロナ禍は政府ブレーンたちによって、そのためのチャンスとされました。消費増税に加えてこれでは、彼らの思惑は成ったも同然と思われました。
しかしこの本を読んでわかるのは、京都の町の中小個人業者は「どっこい生きてる」ということです。老舗も新参も老いも若きも、「ゾンビ」どころか常に生き生きとコミュニティの生活を支えてきた姿。苦しいコロナ禍下でも、場合によっては瀕死のダメージを受けながら、やはり懸命にコミュニティの生活を支えて淘汰路線にブレーキをかけている姿。この町は、大企業の支配者の一方的差配ではなく、ひとりひとりが主人公となった日々の営みでつくられているのだということがわかります。
松尾匡(立命館大学教授)