早すぎる妊娠に直面する
10代の子どもたち
ケニアの首都ナイロビから陸路で8時間。
私たちが活動するホマベイ郡の約6割の人たちが1日1.9ドル未満で暮らしています。
貧困家庭で育つ若者・子どもたちは、SRHR(性と生殖の健康と権利)について知識・行動の両面からアクセスできずにいます。
そして、3人に1人が10代で妊娠し、望んでいた未来をあきらめざるを得ないー。
私たちが変えたいのは、そんな現状です。
本文と写真の女の子に関係はありません
3年間の事業計画
3年間の新しいプロジェクトを通して、地域の大人たちと720名の若者・子どもたちにリプロダクティブヘルスの正しい知識を届けます。

早すぎる妊娠の問題とは
12歳の子どもがお母さんになる、そんな女の子の姿を想像できますか。
「早すぎる妊娠」は女の子たちの未来を奪います。
ケニアでは、10代の若者・子どもたちの18%が妊娠・出産を経験しています。
中でもわたしたちPLASが活動するケニアのホマベイ郡における10代の妊娠率は33%であり、ケニア全47郡のうち2番目に高い地域です。

ホマベイ郡において妊婦健診で妊娠がわかった子どもの数は、2020年において15‐19歳では10,686人、さらに10‐14歳では1,181人であり、検診に来ていない子どもを含めるとその数はさらに多いと予想されます。現地パートナー団体からは、ホマベイ郡において9歳の少女が妊娠・出産した事例も報告されています。

早すぎる妊娠には4つの問題があります。

①女の子の教育機会の喪失です。
妊娠により、その子は学校に通う機会を喪失します。彼女たちは教育の機会や知識を得る権利を奪われ、将来の可能性が制限されてしまいます。特に、出産後に男性と一緒に生活をするようになる場合は、家庭で妻としての役割を果たさなければならず、学校に戻ることが難しいケースもあります。
②社会的・経済的な困窮です。
早すぎる妊娠により、彼女たちの社会的・経済的な困難をもたらす可能性があります。彼女たちは未熟な状態での出産や子育てによって、十分に教育を受けることができず、安定した収入を得る機会が失われ、将来貧困に陥る可能性が高くなります。
③妊娠した女の子への偏見と差別の問題です。
コミュニティからの偏見や差別の問題もあります。中等教育(14~18歳が通う日本の中学校にあたる)で妊娠した子はいけない子とみなされ、「その子と関わってはいけない」「悪いのがうつる」「関わると学校の成績が下がる」などといった言葉を浴びせられた女の子が調査をする中で、見つかりました。
④健康的なリスクです。
体が未発達の状態での妊娠は、母体や赤ちゃんの健康リスクを引き起こすことがあります。母体においては、妊娠高血圧腎症、マラリア・HIVなどの性感染症合併、うつ病などの精神疾患、さらに切迫早産、妊産婦死亡などさまざまなリスクが通常の妊娠より高まります。また、胎児においても、通常の妊娠に比べて低出生体重、早期新生児・乳幼児死亡、死産、などのリスクがあります。
本文と写真に関係はありません望まない妊娠をした子どもは中絶を選ぶ場合もありますが、ケニアで人工妊娠中絶が可能なのは、「訓練を受けた医療専門家が必要性を認め、緊急の治療が必要な場合、母体の生命または健康に危険が及ぶ場合(中略)」であるため、望まない妊娠をした子どもは、実際には非合法な安全ではない人工妊娠中絶に頼らざるを得ないのが現状です。
「何も知らなかったわたしは、
気づいたら妊娠5カ月だった。」
わたしはヴィオラといいます。16歳の時に妊娠したの。
「君のことを愛している」と言って彼が、私の体を触り始めました。
でも次に何が起きるか分からなかった。
だって性交渉も妊娠についても、避妊についても何も知らなかったから。
それから生理が来なくなり、心配になりました。
でも理由が分からなかったので、「なぜ」と自分に問い続けました。
ある日、学校の先生が違和感を感じて、私の母に診療所に行くように勧めました。
診療所に行ってみると、妊娠5か月でした。
私は彼に自分が妊娠していることを告げると、
「妊娠させた覚えはない」と言われました。
そこからずっと子どもの父親とは会っていません。
妊娠してからも毎日学校に通い続けました。
でも妊娠中は村の人や友達が、私の妊娠について話しているのがストレスでした。
出産は、自宅に1人でいる時にしました。
出産は痛く、苦しいものだったし、産道を治療するのに数か月かかりました。
今は子どもと一緒に、お母さんの支えのもと生活をしています。
現地調査を通して、見えてきたこと
2022年4月に保護者、保健師、宗教リーダー、そして子ども・若者へ、2022年11月には妊娠・出産経験のある子ども・若者たちに追加のインタビューも実施しました。

現地のインタビュー調査を通して分かったことは、4つあります。

①性行為や妊娠についての正しい知識を知らない子ども・若者たちが圧倒的だということです。「1回だけなら妊娠しない」や「それが性行為だと知らなかった」という言葉もありました。
②避妊を知らなかったり、その方法にアクセスできないことです。早期妊娠のケースストーリーを読んで、何ができたら結果が違っていたかを話し合ってもらったのですが、13人いた子ども・若者から誰一人、避妊方法を用いた性行為の考えが出てこなかったのです。また、のちにコンドームを知っていると数人手を挙げてくれましたが、その他のピルやIUD(子宮内避妊用具)といった他の避妊手段は聞いたこともない状態でした。
③周りに相談できる相手がいないということです。月経や性と生殖について疑問を持った時に、母親・父親に聞けるという子ども・若者は、0人だったのです。では村で頼りにされている宗教リーダーはというと、思わず笑い出してしまうくらいに聞けないそう。唯一学校の同性の先生になら相談できるかもしれないという意見が出ましたが、実際に相談したことのある子ども・若者は1人のみでした。
④最後にポジティブな発見として、性と生殖について、自分たちでアクションを起こしてみたいと反応する子ども・若者が多かったことです。例えばこんなことができたらしたい、というセクションでは、歌を作ってマーチングしながら街を練り歩きたい、水泳大会を開いて周知したい、仲間を連れてきて研修したい、などなど、たくさんのアイデアが出ました。SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:「性と生殖に関する健康と権利」)に関する興味関心の強さ、今まできっかけはなかったものの主体的に行動してみたいと思える子ども・若者がいることがわかったのは、事業形成の上でとてもポジティブなことでした。
このプロジェクトで実現したいこと
このプロジェクトを通して、私たちは2つのことを実現していきます。
①「子ども・若者が自分らしく、前向きに生きられること」と、②「地域コミュニティの意識を改革すること」です。

早すぎる妊娠をする女の子を減らすことだけではなく、現地の子どもたちが自分を大切にすること、必要な時に必要な選択をし、行動に移せることを目指しています。
彼ら・彼女たちが自分らしい人生を歩めるよう、私たちは全力でこの問題に取り組みます。
モデル事業とし、支援を広げていく
早すぎる妊娠がきっかけで夢を奪われる女の子はケニアのホマベイ郡だけではありません。
将来的に、本プロジェクトをモデル事業として確立し、他の地域や周辺の国に支援を広げていくことを目標にしています。
まずは3年かけてプロジェクトを実施し、以下のようなマニュアルの策定や必要に応じて計画の調整を実施していきます。
Flower事業で使用しているマニュアル
その後、プロジェクト評価・ブラッシュアップをしていき、早すぎる妊娠を防ぐためのモデル事業として、展開していきます。

私たちはこのプロジェクトを通して、若者・子どもたちの早すぎる妊娠をするを防ぎ、女の子の未来をつくろうとしています。
PLASの新しい挑戦は、「女の子の未来をつくること」
PLASのビジョンは、「わたしたちは、取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会を目指します。」です。
これまで貧困やHIV/エイズによって取り残された子どもたちに支援を届けてきました。今回、本プロジェクトを開始することで、新しくケニアの10代の女の子たちにも支援を届けることができるようになります。
彼女たちが正しい知識を身につけて、望まない性交渉にNOと言えることで、彼女たちの未来を守ることができます。
PLASが支援を届ける子どもたちの中には「将来は中等学校の先生になりたいな。大きくなったら、隣のウガンダに障がいがある子どもたちの学校をつくりたい。そしてお母さんに大きな家を建ててあげるのが夢なんだ。」
と語ってくれる13歳のケニアの女の子がいます。
※写真の女の子は本文とは関係ありません彼女のような、女の子が夢を奪われることなく、前向きに生きられる社会をみなさんと一緒につくりたいです。
PLASとしては、このプロジェクトは新しいことへの挑戦になります。
ぜひ、温かいご支援と応援をよろしくお願いいたします。
ご寄付の使い道
今回のクラファンファンディングでご支援いただきますご寄付は、これからの中長期的な活動を見据えた活動資金に充てさせていただきます。
■プロジェクトにかかる費用(1年間)※1ケニアシリング=0.99円で計算
・研修立案・実施費用:620,397円
・管理費(交通費・通信代など):205,182円
・カウンセリング実施費・カウンセラー人件費:1,092,418円
この他に2年目以降の追加プロジェクト費として
・研修立案・実施費用: 721,072円
・カウンセリング実施費・カウンセラー人件費:1,092,418円
※このほか日本人人件費・派遣費などの管理費(年間120万~140万円程度)を自己資金および助成金で補填します。
※この他にGoodMorning/ソーシャルグッドカテゴリ手数料は9%(税別)がかかります。
■1年目
2023年8月〜 対象となる受益者を選定・アセスメント基準の設定も行います。
2023年9月〜 選ばれた受益者にオリエンテーションと事業開始前調査を行います。
2023年10月〜11月 妊娠、避妊、パートナーとの関係性などに関する研修を実施します。
2023年12月〜1月 若者自身が興味のある性に関する課題とそれを解決する活動を考えていきます。
2024年2月〜3月 若者自身が主体となって、考えた行動計画を実行していきます。
※1年目の事業成果を踏まえて、2年目以降のスケジュールを立案していきます。
信頼する現地パートナー団体と協働
このプロジェクトは、現地パートナーNGO「VIAGENCO(ビアジェンコ)」と協働で行います。

ビアジェンコは今から25年前に設立されたNGOで、ホマベイ郡全域で活動しています。代表のベンソン氏を中心に、貧困やHIV/エイズに影響を受ける家庭の生計向上のために活動していて、約20名の職員が活動する組織基盤も比較的安定した団体です。
PLASとは2016年からパートナーとして、農業による生計向上支援やカウンセリング事業など複数の協働プロジェクトを行ってきました。
地域のニーズや慣習・価値観を理解し、地域の住民たちからも信頼を寄せられるビアジェンコと実施することで、子どもや若者に寄り添った活動ができます。
事務局長からのメッセージ

エイズ孤児支援NGO・PLASについて
特定非営利活動法人エイズ孤児支援NGO・PLASは、2005年にエイズ孤児の課題を解決するために当時大学生だった7名によって設立されました。
「取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会をめざす」をビジョンに、これまでにウガンダとケニアの2か国で、3147人の子どもたちと685のひとり親家庭に支援を届けてきました。
エイズ孤児や、貧困家庭の子どもたちが前向きに、夢を描ける社会をつくるため、
設立から18年、PLASは現地のパートナーNGOと協働しながら、「地域と共につくる支援」をめざして活動をつづけています。

※寄付型クラウドファンディングについて
NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLASは「NPO法人」として認定されていますが、このクラウドファンディングを支援することで、支援者が税制優遇を受けることはありません。
最新の活動報告
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正解を届けるのではなく、ともに考え続けた3年間 ― SRHRプログラム修了報告 ―
2026/07/06 18:00あたたかい応援とご支援をいただき、本当にありがとうございます。2023年からケニア・ホマベイ郡で実施してきた「SRHR(性と生殖に関する健康と権利)プログラム」が、このたび3年間の活動を終えました。このプログラムは、PLASにとって初めてとなる性に関する教育事業です。これまでPLASは、親子支援事業などを通じて、子どもたちを取り巻く環境づくりに取り組んできました。その中で、現地では早すぎる妊娠や出産といった課題が繰り返し見えてきており、長年活動を続ける中で、この問題に向き合う必要性を強く感じてきました。そこで新たな挑戦として始まったのが、このSRHRプログラムでした。このプログラムを担当したのは、海外事業プログラムオフィサーの牧野です。ピアエデュケーターと牧野現地パートナー団体ビアジェンコと日々オンラインでやり取りを重ね、何度も現地へ足を運びながら、若者や保護者、教師、地域の人々と向き合ってきました。3年間を振り返り、牧野が感じたのは、若者たちの確かな成長だけではありません。「支援する」とはどういうことなのか。現地の文化や価値観とどう向き合うべきなのか。そして、自分たちが良いと思っていることを、そのまま伝えることが本当に相手のためになるのか。現場で活動を続ける中で、答えがすぐには見つからない問いにも向き合い続けた3年間でした。今回は、プログラムを通して生まれた変化とともに、現場で牧野が感じた学びや葛藤もあわせてご紹介します。「自分で選び、決める」ための知識を届ける SRHRとは、「性と生殖に関する健康と権利(Sexual and Reproductive Health and Rights)」のことです。自分の体、性や生殖について、誰もが十分な情報を得られ、自分の望むことを自分自身で選択し、決定できること。そして、そのために必要な医療や相談へ安心してアクセスできることを意味します。牧野は、3年間このプログラムに携わる中で、SRHRは決してアフリカだけの課題ではないと感じるようになったと話します。「SRHRって、なかなか身近なトピックではないと思われがちなんです。でも、恋愛や結婚、妊娠、出産など、私たち自身の人生の選択にも関わることです。日本でも、周りの声や社会の価値観によって、自分の意思決定が左右されることがあると思います。」SRHRプログラムは、性について教えることだけが目的ではありません。誰もが正しい知識を持ち、自分自身や相手を尊重しながら、自分の人生を自分で選択できるようになる取り組みです。なぜ、この地域で取り組む必要があったのかプログラムを実施したケニア・ホマベイ郡は、ケニア国内でもHIV感染率や10代の妊娠率が高い地域です。HIV感染率は全国平均を大きく上回り、10代の妊娠率は約23%。これまでには、9歳の少女が妊娠・出産した事例も報告されています。その背景には、性について話すことがタブー視される文化や、正しい知識を学ぶ機会の少なさがあります。また、若年妊娠をした少女は学校を中退せざるを得なくなったり、周囲から偏見や差別を受けたりすることも少なくありません。その結果、教育や就業の機会を失い、貧困が次の世代へ引き継がれてしまうという課題があります。牧野は、こうした課題に向き合う中で、「知識を届けること」の意味について考え続けてきました。知識を伝えるだけで、本当に若者たちは未来を選べるようになるのだろうか。家庭や学校、地域の環境が変わらなければ、若者たちは安心して行動できないのではないか。そうした問いを持ちながら、プログラムは進められてきました。 若者だけではなく、地域全体とともにプログラムの中心となったのは、「ピアエデュケーター」の育成です。15〜18歳の若者たちがSRHRについて学び、その後、自分たちの学校や地域で同世代へ知識を伝えていきます。ピアエデュケーターたちしかし、PLASが目指したのは、若者だけが変わることではありませんでした。家庭へ戻れば、保護者がいます。学校へ行けば、教師がいます。困ったときには相談できる医療施設が必要です。そして、その地域には行政や地域のリーダーがいます。だからこそ、このプログラムでは、保護者への研修、教師への研修、医療施設との連携、行政との関係者会議など、地域全体を巻き込んだ取り組みを進めてきました。牧野は、このプログラムの特徴を次のように話します。「全体としては、ピアエデュケーターの育成と啓発活動ということになるんですけれども、そこから学校、家庭、地域を巻き込むプロジェクトの設計になっています。」地域の中に、若者が安心して相談できる人がいること。家庭でも学校でも、将来について話せる環境があること。そうした積み重ねが、若者たちの選択を支える力になるとPLASは考えています。そして、牧野はピアエデュケーターについて、こんな言葉で表現しました。「ピアエデュケーターというのは、パッと問題を解決する存在ではありません。すごく長い目で知識を届けていかなければいけない存在です。地域の中で変化を生み出す入り口であり、きっかけになる存在だと思っています。」目に見える変化は、すぐには現れないかもしれません。それでも、一人の若者が勇気を持って声を上げることが、友人へ、家族へ、そして地域へと少しずつ広がっていく。PLASは、その小さな積み重ねこそが、地域の未来を変える力になると信じています。たくさんの子どもたちの前で話すトレバーさん若者たちの挑戦が、地域を少しずつ変えていった3年間のプログラムを通して育成したピアエデュケーターは28名。学校や地域で実施した啓発活動には延べ1,628名の子ども・若者が参加し、6つの医療施設を通じて約21,000個の避妊具と約3,800個の避妊薬を届けました。こうした数字は、プログラムが届けた成果の一部です。しかし、牧野が3年間で最も大きな変化として感じたのは、数字では表せない「人の変化」でした。「伝える側」へと成長した若者たちリリアンさんは、学校で同級生が若年妊娠やHIV/エイズによって将来の選択肢を失っていく姿を見て、「自分も地域を変える一人になりたい」と思い、ピアエデュケーターになりました。活動を始める前は、人前で話すことが苦手で、自信もありませんでした。しかし、研修や啓発活動を重ねる中で、今では地域の人々に性感染症や望まない妊娠について自信を持って伝えられるようになりました。ロジャースさんもまた、若年妊娠や学校中退が身近にある地域を変えたいという思いから活動に参加しました。活動を続ける中で特に印象的だったのは、若者と親世代との間にある「世代間のギャップ」だったと言います。「親や祖父母の世代は性について話すことに抵抗がある。でも、若い世代には正しい知識が必要です。」そう感じたロジャースさんは、地域だけでなく、自分の家庭でも少しずつ話し合いを始めました。その結果、家族の中でも将来や家族計画について話せるようになり、「チームワークで地域を変えられること、人は誰かに良い影響を与えられることを学びました」と話しています。牧野は、こうした若者たちの姿を間近で見続けてきました。「以前は人前で話すことが苦手だった子が、自信を持って地域で話せるようになる。そういう変化を見られたことは、本当に大きな成果だったと思っています。」 地域にも少しずつ広がった変化変化は、若者たちだけにとどまりませんでした。学校の先生からは、「ピアエデュケーターは学校にとってとても大切な存在です。先生は恥ずかしくて話題を避けてしまうこともありますが、生徒同士だからこそ安心して話せることがあります。」という声が寄せられました。また、医療施設のスタッフからは、「以前は若年妊娠した少女が毎日のように来ていましたが、今は着実に人数が減っています。」という変化も聞かれました。一方で、「若い世代は以前より情報を得られるようになってきました。次は地域の大人たちの意識も変えていく必要があります。」という声もありました。若者たちが変わることで、学校や家庭、医療施設にも少しずつ変化が生まれ始めています。だからこそ、このプログラムは若者だけではなく、地域全体を巻き込む形で進めてきました。データが裏付けた「対話」の変化プログラムでは、開始前と終了後に同じアンケートを実施し、参加者の変化を確認しました。その結果、家族とのコミュニケーションには大きな変化が見られました。「心配事や身の危険について親と話せる」と答えた若者は大幅に増え、「性や生殖について家族と話したことがある」という回答も大きく伸びました。また、・若年妊娠が将来へ与える影響への理解・妊娠が分かったときに取るべき行動・性的同意の大切さ・性について友人と話すことへの抵抗感など、知識だけでなく、自分で考え、行動する力にも変化が見られました。一方で、データだけでは見えてこないこともありました。例えば、アンケートでは「家族と話せるようになった」という結果が出ても、その背景には、勇気を出して初めて親に話しかけた若者がいます。人前で話すことが怖かった子が、何度も練習を重ねて地域で啓発活動を行うようになった姿があります。そうした一人ひとりの変化を見てきたからこそ、牧野は「数字だけでは測れない成果がある」と感じています。現場で見えてきた問い3年間の活動を通して、若者たちには確かな変化が生まれました。一方で、牧野の中には、活動を続けるほど簡単には答えを出せない問いも生まれていきました。その一つが、「ジェンダー」についてです。アンケートでは、性や生殖に関する知識や、性的同意への理解は大きく向上しました。しかし、男女の役割に対する考え方については、大きな変化は見られませんでした。活動地域では、宗教や文化の影響もあり、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という価値観が、長い年月をかけて地域に根付いています。その現実を目の当たりにした牧野は、「変わらなかった」という結果だけでは語れない思いを抱くようになりました。「私たちが『ジェンダー平等でなければいけない』と伝えることが、本当に現地にとって良いことなのか。理想だけれども、現実は全然違う。そのギャップの中に若者たちを置き去りにしてしまっているんじゃないか。そんなことも現地で考えるようになりました。」PLASが目指しているのは、価値観を押し付けることではありません。地域には、その土地の歴史や文化、人々の暮らしがあります。だからこそ、外から「こうあるべき」を伝えるだけではなく、現地の人たちと対話を重ねながら、一緒に考えていくことを大切にしています。ヒアリングに協力してくれたピアエデュケーターのウィクリフさんとクリスフィーンさん(中央)牧野は、この問いに対する答えは、まだ見つかっていないと言います。「データだけ見れば、『変わらなかった』と言えてしまうかもしれません。でも、それだけではないと思っています。答えはまだ見えていません。」その一方で、この3年間を通して、一つ確信したこともありました。「知識は必ずついていることはデータからも見えています。その知識を持った上で、お互いを尊重するパートナー関係を築けること。その大切さを伝えていくことが、今の私たちにできることなんじゃないかと思っています。」現場では、ほかにもさまざまな課題が見えてきました。例えば、HIVに関する感染経路についてです。研修を重ねても、「唾液で感染する」といった誤った知識が繰り返し聞かれることがありました。また、USAIDによる支援縮小などの影響を受け、避妊具や避妊薬の供給をPLASに頼らざるを得ない医療施設もあります。牧野は、このことについても率直に語っています。「PLASとしては『あげる支援』ではなく『つくる支援』を目指しています。避妊具や避妊薬についても、現地で持続的に入手できる方法を模索していきたいと思っています。でも、どうすれば依存を減らし、現地だけで続けられるのか。まだ答えは見えていないところです。」若年妊娠は、知識だけで防げる問題ではありません。貧困や教育、社会制度、文化、偏見など、さまざまな要因が複雑に重なり合っています。だからこそ、このプログラムも「知識を届けたら終わり」ではなく、地域の中で対話を続けながら、一歩ずつ環境を変えていくことを目指してきました。 次の挑戦へ3年間のプログラムで得られた経験は、新たな取り組みへとつながっています。現在、ホマベイ郡では、若者たちが安心して学び、相談できる「チルドレン&ユースセンター」の建設が進んでいます。建設中のチルドレン&ユースセンターセンターにはパートナー団体ビアジェンコのカウンセラーが常駐し、研修や相談対応、若者同士が学び合う場として活用される予定です。また、新たに50名のピアエデュケーター育成も始まりました。さらに、ケニアで培った経験は、2026年からウガンダでも新たなプログラムとして展開されています。もちろん、ケニアとウガンダでは地域の状況が異なります。だからこそ、同じ方法をそのまま当てはめるのではなく、現地の人たちと話し合いながら、それぞれの地域に合った形を一緒につくっています。ムコノ政府との会合(ウガンダ)若者たちの勇気を、これからも牧野は、この3年間を振り返り、最後にこんな言葉を話しました。「ピアエデュケーターは、すぐに問題を解決する存在ではありません。時間をかけて知識を届け続けることで、地域の中に少しずつ変化を生み出していく存在だと思っています。」一人の若者が勇気を持って声を上げること。その声が友人へ届き、家族へ届き、地域へ広がっていくこと。その積み重ねが、少しずつ地域を変えていく力になると、PLASは信じています。修了証書を手にしたピアエデュケーターたち。修了式後の集合写真。3年間のプログラムは一区切りを迎えました。しかし、若者たちが自分らしい未来を選択できる地域をつくる挑戦は、これからも続きます。現地の人たちとともに悩み、ともに問い、ともに答えを探し続けながら。この3年間の歩みは、皆さまからのあたたかいご支援があったからこそ実現することができました。これからも、若者たち一人ひとりが自分らしい未来を選択できる社会を目指して、現地の人々とともに歩みを続けてまいります。PLASは設立20年という節目を迎え、これまで培ってきた支援の知見を他の地域へ広げる新たな挑戦を進めています。「子どもたちに夢を。支援の知見を分かち合う、20年目のPLASの挑戦」については、こちらからご覧いただけます。 もっと見る
6月27日(土)SRHRプログラム修了報告会のお知らせ
2026/06/05 13:09こんにちは。PLASです。クラウドファンディング「「12歳で母に」早すぎる妊娠を防ぐ!ケニアの女の子の未来をつくる新たな挑戦」にあたたかい応援とご支援をいただき、誠にありがとうございます。このたび、SRHRプログラム修了報告会を開催することとなりました。PLASのSRHRプログラムでは、若者たちが性に関する健康と権利(SRHR)について学び、同世代へ知識を届けるピアエデュケーターとして活動してきました。性に関する正しい知識を学び、同世代に届けること。ときに話しづらさや偏見のあるテーマに向き合い、仲間たちに声をかけることは、決して簡単なことではありません。それでも若者たちは、自らも学びながら一歩を踏み出し、それぞれの地域で活動を続けてきました。その一歩は、すぐに大きな変化として見えるものではないかもしれません。けれど、正しい知識に出会う人が増えること。自分のからだや未来について考えるきっかけが生まれること。そうした小さな変化が、少しずつ地域に広がっています。今回の報告会では、若者たちの挑戦や、活動を通じて生まれた変化についてご紹介します。「PLASの活動を応援していて、現地で生まれた変化を知りたい」「応援した事業の、その後を知りたい」「性に関する教育やSRHRについて、もう少し理解を深めたい」「国際協力や社会課題に関心があり、自分にできる関わり方を考えたい」そんな思いをお持ちの方に、ぜひご参加いただきたいイベントです。ご支援いただいた皆さまとともに育んできた若者たちの挑戦と、その先に生まれた変化を、ぜひお聞きいただければ嬉しいです。【イベント概要】日時:6月27日(土)10:00~11:15開催方法:オンライン(Zoom)参加費:無料申込方法:https://peatix.com/event/5036303皆さまのご参加を心よりお待ちしております。 もっと見る
クラウドファンディング「自分の体と未来は僕たち、私たちが決める ケニアの若者が広める性教育を応援したい!」がスタートしました!
2024/07/18 18:00こんにちは、PLAS代表の門田瑠衣子です。昨年挑戦したクラウドファンディング「「12歳で母に」早すぎる妊娠を防ぐ!ケニアの女の子の未来をつくる新たな挑戦」にご支援と応援をいただき、誠にありがとうございました。みなさまのご支援により、早すぎる妊娠を防ぐ事業(SRHR事業)を継続することができています。今年のプロジェクトページに1年間の活動の様子を掲載していますので、ご一読いただけますと幸いです。PLASでは、7/16からクラウドファンディング「自分の体と未来は僕たち、私たちが決める ケニアの若者が広める性教育を応援したい!」をスタートしました。▼プロジェクトページはこちらからhttps://camp-fire.jp/projects/view/686813今回のクラウドファンディングでは、ケニアの若者が広める性教育で女の子たちの早すぎる妊娠を防ぐ事業の活動資金を募っています。目標金額は【200万円】実施期間は8月31日(土)23:59までの46日間です。※すでにご支援いただいたにも関わらず、ご案内が重複してしまいましたら申し訳ございません。11歳で妊娠した女の子この活動を始めるにあたって、私たちは地域の6つの医療施設と提携をしています。そのうちの一つのヘルスセンターで、施設責任者と会議をしていると「11歳で妊娠した女の子がこの前来たの」と暗い表情で話をしてくれました。部屋の空気が一瞬にして重くなり、私は言葉を失いました。11歳の体はまだ未発達で妊娠・出産には健康リスクが伴います。もちろん体だけでなく心の負担も大きいです。変化していく体への戸惑い、学校に行けば差別や偏見にさらされることもあります。学校に通い続けられるだろうか、将来どうなるんだろうかと、たくさんの不安が女の子にのしかかります。こうした早すぎる妊娠の背景には、さまざまな要因があります。・正しい性に関する知識を持っていない・男性優位な価値観が地域に根強く、例えば男性に性交渉を迫られた際に女性が「No」と言えない・貧困から、学用品などをもらうために性交渉に応じてしまう立ち上がった子どもたち私たちはこうした現状に対して、子どもたちが正しい性の知識を持ち、自分の行動を自分で決められるように啓発活動を行っています。この活動の特長は、若者自身がリーダーとなることです。彼らはPLASの支援により研修を受け、その学びを他の子どもたちに伝える役割を果たしています。子どもの頃、心や体の変化について、性について、親や先生には言いにくいけど、友だちとなら話せる、相談できると思ったことはありませんか?同世代から同世代へ伝え、正しい知識を教えるリーダーたちは「ピア・エデュケーター」と現地で呼ばれています。ピア=同世代に、エデュケーター=教える人という意味です。ケニアの若者たちが同世代のために立ち上がり、地域の子どもたちに共感を呼び起こし、効果的に知識を広め、行動を変えようと働きかけているのです。彼らの情熱と勇気が、新たな未来を切り開くことを信じて、私たちは伴走しています。未来への希望をクラウドファンディングでつなげる今回のクラウドファンディングでご支援いただいたご寄付は、ケニアの若者たちが広める性教育を通して、早すぎる妊娠を防ぐために使われます。ピア・エデュケーターたちは、地域の子どもたちに性教育を行い、医療施設や学校とも連携して同世代に啓発活動を届けます。医療施設にはコンドームや緊急避妊薬などの設置を支援し、必要な時にだれでもアクセスできるようにします。また、保護者や地域の大人たちにも啓発活動を行い、子どもたちを支える環境を整えます。私たちの目標は200万円。ケニアの子どもたちが、自分の体と未来を自分で決められる社会となるように、応援・ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。▼プロジェクトページはこちらからhttps://camp-fire.jp/projects/view/6868137/25のランチタイムに開催!クラウドファンディング・トークイベント当日は、この事業の特徴でもある「ピア・エデュケーター(意欲のある地域の15~18歳の子どもたち21名)」の様子を中心に、1年間の事業の成果や2年目からの新しい取り組みについて、事務局長の小島からお話しさせていただきます。事前お申し込みが不要なので、お昼を食べながら、お気軽にご参加ください。みなさまのご参加をお待ちしております!■イベント概要PLASチャンネル特別回 「 自分の体と未来は僕たち、私たちが決める ケニアの若者が広める性教育を応援しよう!」 登壇者:事務局長 小島 美緒日時:7月25日(木)12:15~12:45場所:Youtubeライブ(無料・事前登録不要)▼ご視聴はこちらからhttps://youtube.com/live/idiNqsrFiN4?feature=share もっと見る




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