
「自信がなかった僕に“それめっちゃいいじゃん”と言った人がいました」
ビストロを辞めてカルチェラタンの面接を受けました
このレストランはアートクラブが併設されたコース料理を出すレストランでした
面接はまず料理長、パティシエ、マネージャー社長の4人との面接から始まりその後に社長との個別面接がありました。
4人での面接では前のビストロで洗い物、サービス、仕込み、ストーブ前、前菜を回していたことを伝えました。
ただ正直に言いました。
怒鳴られることもありましたし殴られることもありました。自分はまだまだだと思っていました。
だから「責任の重いポジションではなく、できればまず前菜からやらせてほしいです」
そう伝えました。当時の僕には正直自信がなかったからです。
するとカルチェラタンのシェフはこう言いました。
「すごいじゃん。めっちゃいいじゃん、それ。」
一瞬、言葉が出ませんでした。
否定される前提で話していた自分と目の前の反応が、あまりにも違ったからです
評価されたというより「ちゃんと話を聞いてもらえた」その感覚が妙に印象に残っています
その後、社長面接へと進みました。
この時はまだ、ここで働くことになるかどうかも分かりませんでした。
ただ一つだけ、前の店とは“空気が違う”ことだけは、はっきりと感じていました。

「新入社員と同じ給料でいいです、と言った日のこと」
社長との面接では、今後の店の話を聞かせてもらいました。
・野菜や付け合わせを担当しているスタッフが辞める予定であること・これから店をどう発展させていきたいか・文化的な価値を持ちながら、きちんと売上も上げていくレストランにしたいこと
そのビジョンには、とても共感できました。
何より、一度お客として食べたあの料理が忘れられなかったです。
美しくて、香りがあって、コースとしての流れもきれいで「この料理を一緒に作りたい」そう素直に思いました。
だからここで働きたいと思いました。
そして給与の話になりました。
「どれくらい欲しい?」
そう聞かれた瞬間、前の店での記憶が一気に蘇りました。
最後の頃はシェフからほとんど話しかけてもらえず「お前にそんな給料払えるわけないだろ」そんな空気の中で働いていました。
自分に値段をつけることが正直、怖かったです。
だから僕は、こう答えました。
「新入社員と同じ給料でいいです。」
その言葉は、謙虚さでも覚悟でもなく、ただの“自信のなさ”だったと思います
でもその時の僕には、それしか言えませんでした。
この選択が、この先どう影響するのか。
その時は、まだ分かっていませんでした。

「最初の1ヶ月、僕は“料理人”としてサービスに立ちました。」
カルチェラタンで働き始めて、最初の1ヶ月間、僕はサービススタッフとして立ちました。
それは、面接の時点で聞いていたことです。なので、不満はありませんでした。「まずはサービスから」この店では、それが当たり前の流れでした。
むしろ、料理人として働く自分にとって、この1ヶ月は“見る側”に立てる時間だと思っていました。
お客さんがどんな表情で料理を待ちどんな瞬間に会話が生まれ、どこでワインに手が伸びるのか。
次の料理を出すタイミングを厨房にどう伝えるのか。一皿遅れるだけで、空気がどう変わるのか。
厨房では見えなかったことが、目の前で起きていました。
この店には、マネージャーとソムリエ、二人のサービスマンがいました。
マネージャーは、店全体の流れを最優先するサービス。
ソムリエは、目の前のお客さんの感情を最優先するサービス。
考え方は真逆に見えて、どちらも理にかなっていました。
その二人の間で働きながら僕は毎日、「正解は一つじゃない」ということを突きつけられていました
料理を出す側になる前に、料理を“受け取る側”を知る。
この1ヶ月で、料理人としての技術は増えていません。
でも、「料理がどこで完成するのか」その輪郭だけは、はっきりしてきました。
まだ自分が、どんな料理人になるのかは分かりませんでした。
ただ、この1ヶ月がなかったら、その問いすら生まれていなかったと思います。

続く…
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