北広島町岩戸(岩戸村平田)に生まれた故隅井竹一先生(1923~2019年)は、学校長を退職後の昭和60年(1985年)に「絵で見る 昭和初年代の 農村のくらし」という画集を残されている。そこに『牛市』と題した1頁があり「秋に入って牛市が立つ。峠を一つ越えて島根県側の田所村の亀谷市や出羽村出羽市は大きな市だった。二、三日前後は毎日延々と牛の行列が続いた。・・・」とあり、博労たちが売買する牛たちは追い子に追わせて、それぞれのところを往復した。1人の追い子は3~4頭の牛を追っていて、牡牛は竹竿に繋がれ背中にえびす菰を飾った様子が分かる。
この県境のしずく峠を越えた博労たちが宿泊した出羽市の「牛宿帳」には、広島県の安佐郡久地村、鈴張村、山県郡戸河内村、加計町、安野村、本地村、八重村、壬生村等々の博労の名前を見ることができる。