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今回も『時折2024』収録作の紹介をしていきます。
【時折2024 作品紹介】では、それぞれの月のテーマとなる12の作品について一つずつご紹介したいと思います。
※作品写真は本番の紙で折る前の「試作」状態のものを含みます。商品に掲載されるものはより見栄えのする状態になっているかと思いますのでご期待くださいませ。
今回の特集:2月掲載分「鬼」
このモチーフは、2月の行事である節分から連想したものです。
1月の鷹に引き続き年初のため、難易度がなるべく易しめになるよう、全身ではなく顔だけの鬼の面を作ることにしました。
顔のみであればその分リアルな作り込みが可能なので、全身を作るよりもカレンダーのビジュアルに迫力が出ると思ったからです。
強調したいツノ、目、口には紙の裏の色が出るようになっています。折り紙界隈では「インサイドアウト」と呼ばれる技法です。
折り紙の端をペロッとめくると、当然その部分だけ裏の色が見えますよね。これを精密にコントロールして狙った部分で行えるようにするのが、インサイドアウト(≒裏返し)です。
この技法を自在に用いるためには、色を変えたい場所に、裏返すための紙の外周部分をちょうど持ってくる必要があります。これまた当たり前ですが、紙の中心部分は裏返しようがないからですね。
さて、鬼の面で強調したいツノ、目、口をインサイドアウトで表現する場合、大まかな構成は2通り考えられます。
①ツノ、目、口になる色の面を表にした正方形からスタートして、裏から肌の部分を持ってくる
②肌になる色の面を表にした正方形からスタートして、裏からツノ、目、口になる部分を持ってくる
※ブリル式(説明は割愛しますが、局所的に裏表自体を反転させてしまうような技法です)などを用いる例外もありますが、デメリットも大きいためここでは考えないことにします。
①、②どちらを選択するかは、色分けをしたい部分の位置が一つの基準になってきます。
①は紙の中心に近いところの色分け、②は外周部分の色分けに強いのです。
今回の題材では、顔の中心部分に位置する鼻ではインサイドアウトをする必要がありません。そのため、②の手法を選択しました。
このように指針を明確に固めておくことで、スムーズな作品づくりが可能になります。もちろん、いくら構成を固めても大小さまざまな壁にぶつかることはありますが……。
完成した「鬼」は、インサイドアウトの活用に加え、立体的な加工を施すことで迫力のある造形にすることができたのもあり、お気に入りの作品となりました。
ぜひ製品版でお楽しみください。
それでは、また次の作品で!
文:山本大雅