真浦。この小さな漁港は日本海に面し、周囲を山々と断崖に囲まれた、隠れた宝石のような場所です。この地に足を踏み入れると、過去の営みや、なぜここに住み始めたのかという疑問が心を掴みます。ここは過去と現在が融合し、時間が重なり合う奇跡のような空間です。限界集落を現代集落へと変えるこのプロジェクトは、このユニークな環境の中でこそ可能です。
先日、岡倉天心によって建てられた六角堂での制作を終えました。この建物は太平洋に面した北茨城の五浦にあり、横山大観らが再起を図った場所です。この地で彼らが抱いた思いに触れながら過ごした日々は、私の創作活動に新たな視点とインスピレーションをもたらしました。
私は大切な人との思い出を忘れないため、常に現代から過去へのアプローチを試みて作品を作ってきました。奥能登との繋がりは、芸術祭の制作で訪れることが増え、ますます深まっています。車で移動するときは旧道に心惹かれ、徒歩で移動していた時代の真浦に繋がる今はなき小道の記憶を辿りながらハンドルを握っています。真浦での制作がどんな出会いや驚きをもたらしてくれるのか、とても楽しみです。
観月会2023 茨城大学五浦美術文化研究所 / 六角堂
© 2023 Motoi Yamamoto
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