【解体が宣告された“さいたま市の海”を映像で後世に残したい!】
これは昭和53年の沼影市民プールの様子です。
小学生の頃から暮らしてきた埼玉県さいたま市で映画を撮ろうと決意を固めたのは、ちょうど1年前の2022年冬のことでした。沼影市民プールの近くで弁当店を営む男性より、「解体される沼影市民プールを記録映画として後世に残せないか?」という相談をいただいたのです。当初、私たちとしては企画に賛同したい気持ちもありつつ、プールというプライバシーに関わる場での撮影は許可が降りないだろうと難しさを感じていました。しかし、沼影市民プールの所長さんをはじめ、利用者の方・近隣の皆さまの賛同やご理解をいただくことができ、プールでの撮影を許可いただくことができました。また、さいたま市が募集をした「さいたま市レジャープールのあり方方針(案)」パブリックコメントにはさいたま市発足以来、過去2番目の多さとなる710名から905件のコメントが寄せられるなど、地域のプールへの関心の高さも再認識することができました。
私自身もさいたま市で小学生の頃から育ってきてプールで遊んだ記憶もあり、残念な気持ちでいっぱいです。世界各地で都市開発が実施されていますが、大切な場所を失う地域の住民への心のケアは充分に考えられているでしょうか?人間の肉体的な死と建物の解体に差はあるのでしょうか?
止まらない再開発の計画に対し、地域の思い出・記憶の集積の場所でもあるこのプールを映像で残すこと、再開発のあり方を問い直すことなどは社会を映す鏡としてドキュメンタリーという表現で社会に向き合ってきた私どもの使命だと考えています。
映画『沼影市民プール』監督 太田信吾
写真提供:さいたま市総務局総務部アーカイブズセンター