
みなさん、おはようございます。
かけがえのない大切な人を失い、ぽっかりと空いた心の穴は、
まだ塞がりそうにありません。
深い悲しみの中で、改めて「生命の繋がり」と
「自分に今できること」について、
静かに自問自答する時間を過ごしています。
かつて高校時代、私の生き方の「羅針盤」となる言葉をくれた
恩師・村上徹先生。
先生は、私にこう教えてくださいました。
「農業(agriculture)は、アグリのあとに
『カルチャー』がつくように、『文化』である」
文化とは、人類が様々な知恵を絞り、
大自然と共生しながら代々継承されてきたもの。
「継続できる」からこそ、「継承」されてきたのだと。
さらに先生は、憂いを帯びた表情で、こうもおっしゃいました。
「利益や効率ばかりを優先し、
大自然や生命の理を無視した『略奪や搾取』が続けば、
継続はおろか、地球環境そのものが破壊されてしまう。
今の人類は、大自然や地球にとっての『ガン細胞』ではないか」
この痛切な言葉は、当時の私の胸に深く突き刺さりました。
先生の師匠である福岡正信氏の自然農法や、
地球環境の未来を熱く語ってくれた数々の教え。
それこそが、私のすべての原点です。
◆ 現代科学が及ばない「先人の知恵」に触れた日
その教えを胸に、かつて青年海外協力隊として
南米パラグアイの地へ渡り、
村の人々と共に「井戸掘り」に挑んだ時のことです。
政府が発行する地下水脈図という、いわば「現代科学の地図」。
それを頼りにいくら掘り進めても、
一滴の水すら見出すことができませんでした。
照りつける厳しい太陽の下、期待のまなざしを向けてくれる
村人たちを前に味わった、深い絶望と無力感。
心が折れそうになっていたその状況を打破してくれたのは、
村の長老(シャーマン)でした。
長老は、森の薬草や植物のわずかな生態から、
静かに、そして的確に「水の気配」を読み取ったのです。
そして、長老が指し示した場所をほんの少し掘っただけで……
大地から、勢いよく水が噴き出しました。
あの瞬間の、全身に鳥肌が立つような衝撃。
吹き上がる水しぶきの中で感じた畏敬の念は、
今でも決して忘れることができません。
それは、現代科学が遠く及ばない、
大自然と生命の理に寄り添う「先人の知恵」。
その圧倒的な深さを、まざまざと思い知らされた瞬間でした。
◆ 里山の遺構から読み解く、先人の技と祈り
そして今。
限界集落と呼ばれるこの地での
開拓生活に時間を費やせば費やすほど、
当時の記憶と恩師の教えが、
これ以上ないほど鮮やかに蘇ってきています。
激しい雷雨に見舞われ、川が急激に増水した時のこと。
「水源は無事だろうか…」と不安に駆られ山へ入りましたが、
この芳井集落の水源は、まったくの無傷でした。
豊かな「涵養(かんよう)の森」という天然のダムが、
しっかりと守ってくれていたのです。
森がその深い懐に水を湛え、静かに、
そして力強く「生命の水」を蓄え続けている。
その途方もない保水力と大自然の恩恵を、
泥だらけになる開拓の日々の中で、身をもって実感しました。
また、水源を守るため、重い配管を担いで
道なき山中を歩いていると、
ふと足が止まり、ハッとさせられる光景に出会います。
谷の勾配が急な場所に、不自然なほど大きな石や、
意図的に組まれた見事な石積みが現れるのです。
苔むしたその石たちは、ただの石ではありませんでした。
激流による谷の侵食を防ぐための、
先人たちの「緻密で優しい配慮の結晶」でした。
特に私の心を強く打ったのは、
水が一直線に流れ落ちて斜面をえぐってしまわないよう、
水の流れを「ジグザグ」に誘導する工夫が施されていた場所。
その美しい流路を目にした瞬間、
私の脳裏に故郷松山の情景がフラッシュバックしました。
伊予松山藩の足立重信が築いた「岩堰(いわぜき)」の記憶。
暴れ川の急流を巨大な岩でいなし、洪水を防ぎつつ、
人々に豊かな水の恩恵をもたらす。
そんな高度な治水思想と大自然への畏敬の念が、
この名もなき小さな谷の石積みにも、息づいていたのです。
◆ 悲しみを超えて。生命のバトンを次代へ繋ぐ使命
限界集落と呼ばれるこの地の里や森に、ひっそりと、
しかし力強く残されたこれらの工夫。
それは、限りある生命を懸けて、未来を生きる誰かのために
先人たちが遺してくれた「祈り」そのものです。
森を育て、生命の水を慈しみ、
今日までバトンを繋いで守り抜いてきた確かな足跡。
それを辿れば辿るほど、
深い畏敬の念と感謝の思いが込み上げてきて、
思わず山の中で涙が溢れそうになります。
生命をいつか失うことは、大自然の理です。
しかし、その生命が遺した愛や想い、
そして知恵という名のカルチャーは、
受け継ぐ者がいる限り決して消えることはありません。
実を言うと、私自身もかつて、
利益や数字ばかりを追い求めるあまり
「すべてを失う」という痛ましい失敗を経験しました。
大きなマイナスと深い失意の中から始まった、
この7年間にわたる限界集落での開拓生活。
泥を這うような苦しい日々の中で、誰よりも私を信じ、
最期までずっと支え続けてくれたのが、
今回旅立ってしまった大切な恩人でした。
私を信じ抜いてくれた人を失った今。
ただ悲しみに暮れるだけでなく、
私にできる最大の恩返しとは何なのか?
それは、この大自然から「貴重な生命の水」を使わせて頂き、
生命を育む一人の生産者として、
このかけがえのないカルチャーを次世代へ引き継ぐこと。
利益や効率だけを追い求めるあまり、
大自然や生命を「略奪・搾取する」時代は、
もう終わりにしなければなりません。
泥にまみれ、そして今、身が引き裂かれるような別れを通して、
本当に大切なことを心の底から学んでいます。
恩人が最期まで信じてくれた、この農園の未来。
先人たちが遺してくれた、大自然との共生という知恵。
私は今日も明日も、悲しみを抱えながらも泥にまみれ、
一歩一歩、この限界集落の里や森を切り拓いていきます。
決して平坦な道ではありません。
心が折れそうになることも、くじけそうになることも、
正直たくさんあります。
それでも、託された「生命のバトン」を
未来の子どもたちへ確実に繋ぐため、
私は全力を尽くします。
どうかこれからも、私の挑戦を
温かく見守っていただければ幸いです。
天国のあの人にも届くように、
今日もつるはしを手に「挑戦」します。
それではみなさん、今日もよい一日をお過ごしください。
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