本日は、五島のそれぞれの地域に共通して伝わる、ある島の話を載せたいと思います。
昔、高麗島(こうらいじま)という小さな島がありました。その島の住人に信仰の熱い男がいて、一体の地蔵に明け暮れお参りを欠かしたことがありませんでした。
ある夜、その地蔵が男の夢枕に立ち、「自分の顔色が変わったときはこの島に一大事変が起こるからよく気を付けていてこの島を逃れ出よ」とのお告げがありました。
まじめな男はそのお告げにびっくり仰天し、島の皆に教えて廻ったが島民の中にはその話を馬鹿にして相手にしない者もいました。
ある時、島にいる心良からぬ人が地蔵の顔を赤く塗りつぶしてしまいました。
お告げを信じていた男はその地蔵の顔を見て大いにおそれおののき、用意していた船を繰り出し気心の知れた仲間の者とともに島を離れました。
その様子をみて馬鹿にする者もいたようですが、男たちが島を離れてふと振り返ると、島の姿はなくすでに海中に没していたということです。
その後男たちは別の土地に流れ着きました。
高麗島のあった(とされる)ところは「こうらいぞね」と呼ばれ、格好の漁礁(暗礁)となり、今なお陶器類を吊り上げることがあるといわれています。