■失語症の課題とは
朗読劇を公演するきっかけのひとつに、
失語症の課題を、社会に認識してもらいたい気持ちがあります。
失語症は「見えない障害」とも言われ、その存在が社会に十分理解されていない現実があります。多くの社会課題を引き起こしています。
全国に約50万人以上いるとされていますが、社会的認知、保健、医療、福祉などのあらゆる分野で対策が遅れている疾患であるため、具体的な患者の人数は明らかになっていないのが現状です。
脳の障害により言葉の使用や理解が困難になることで、当事者自身が社会生活やコミュニケーションにおいて大きな障壁を感じ、しばしば社会から孤立してしまう非常に厳しい状況に直面しています。
失語症の発症は、それまで健康だった人にとって、人生を大きく変える出来事です。突然、言葉によるコミュニケーションが困難になるため、仕事や日常生活に大きな影響を受け、精神的なストレスや社会的な孤立を経験することも少なくありません。
多くの人がこの状態を認知症と混同しがちですが、失語症の場合、認知機能自体は損なわれていません。
突然、言葉を失うことは、自己喪失感を強く感じさせ、特に働き盛りの年代である20代から50代の人々が職を失い、経済的困窮に陥るという非常に厳しい状況に直面します。
言葉に障害を持つことで、しばしば誤解を受け、信頼を失いがちです。
このような誤解を解消し、失語症に対する正しい理解を深めるために、私たちは啓発活動を続け、誰もが困っている時に助け合うことの大切さを、失語症の課題を通じて社会全体に広げたいと考えています。
現代医療の進歩にもかかわらず、失語症に対する治療やリハビリテーションは依然として難しい課題の一つです。
病院やリハビリ施設で提供される訓練は、一時的な改善をもたらすことはあっても、その効果は長期にわたって継続することが難しく、日常生活での実践的な訓練が大きく不足しているのが現状です。
医療機関において 後遺症である「失語症」に関する説明や機能訓練が不十分であったこと、地域生活において言葉が出ないことやコミュニケーションができないことへのサポートが欠如していることが原因にあげられます。
※公益社団法人 日本脳卒中協会 脳卒中患者・家族は何に困り、何を求めているのか?
■失語症当事者の復職の困難
国立障害者リハビリテーションセンター第38回業績発表会によると、失語症者の復職は困難で、職業レベルを維持するのは非常に難しく、復職率はわずか8%という調査結果を報告しています。
※国立障害者リハビリテーションセンター第38回業績発表会
失語症によるコミュニケーション障害が原因で、職場での適応が難しく、失業や転職を繰り返すことが多い。また、職場の理解不足により、必要な配慮が行われない場合があります。
失語症患者の就労支援を強化し、職場での合理的配慮を義務付ける、企業向けの教育プログラムを実施し、失語症への理解を深めることが求められます。
※独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センタ- 失語症のある高次脳機能障害者に対する 就労支援のあり方に関する基礎的研究
■言語回復施設・サービスや専門職の不足
どんなサービスを優先するかによって、言語のリハビリの時間が十分確保できないことがあります。また、言語聴覚士が在籍する言語リハビリテーションを受けられる事業所が地域に不足していることも問題だと言われております。
このように、言語聴覚士の不足、専門職による長期的な機能訓練の不足が課題となっております。
※厚生労働省所管国家資格一覧(保健医療・福祉関係) 常勤換算、医療施設(病院・診療所)で勤務 する者「令和2年医療施設調査」
失語症者の長期的な言語改善のためには、民間の言語回復施設やサービスの取り組みが不可欠です。
失語症の特性や必要とする支援の形態を十分に反映していないため、失語症当事者やその家族が適切な支援を受けられず、社会から孤立するケースがあります。
このような背景から、地域に根ざした、失語症当事者のニーズに応じたサービスの提供体制の整備、専門的な人材の配置などが求められています。
これにより、失語症患者が社会参加を促進し、家族が受ける負担を軽減し、当事者自身の人権と尊厳を守ることができるようになります。
この重要な課題に対処するために、
失語症患者とその家族が直面する課題に目を向け、彼らが再び社会の一員として活動できるように、このプロジェクトへのご支援とご協力を心からお願い申し上げます。ご支援いただくことで、失語症者が言葉を通じて心をつなぎ、新たな希望を見出すことができます。
あなたの小さな一歩が、大きな変化を生み出すきっかけとなります。