
今回「ビーグラー弁護士」を演じた奥村洋治です。
座長古城氏とのアフタートークにご登壇いただいた翻訳者の酒寄進一さんが、「(原作の)シーラッハは共感覚なんだ。」と仰っていました。
「共感覚」とは、「シナスタジア」「synesthesia(英)」で、Wikipediaによれば「ある1つの刺激に対して、通常の感覚だけでなく 異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象をいう。 例えば、共感覚を持つ人には文字に色を感じたり、音に色を感じたり、味や匂いに、色や形を感じたりする。」ものだそうです。
その共感覚ではないけれど、舞台という空間に満ちる空気を色に例えると、舞台の面白さ、奥深さを説明しやすいと私は思っていまして、以前稽古場で、いつもは黄色の空気を出してくるのに、ある日だけ濃い紫色を出してきた人がいたんです。もちろんいつものセリフ回しとかは完璧で卒がないのですが、いつもと全然色が違うので、私はこの色にどう対応しようかと、その人が何か違う思い入れを持ってきて空気色を変えたのかと、それなりにこちらも変化しなければと、懸命に演じたのでした。
あとで聞いたらその人はそのとき、体調不良気味だったそうで、私が感じた色の変化もそれに応じたものだったんだな、と納得しました。
このように、人はそれぞれその時々で、様々な色を放ち、他の色を持つ人と話す時、その色が混じり、さらにそれが人は変わらないまま色が変わっていき、場面変わってまた全然違う色の人が登場して、お客様はそれら変遷する色を約2時間通してみて、「今日の舞台は◯色だった」という記憶になる、と私は思っていまして、先ほどの私の経験の例の如く、演じる本人も意図せずしていつもと違う色を出してしまう…。
だから「ライブ」なんだと思えるのです。毎回毎回、何かが少しずつ違う。それが楽しくて。
シーラッハの「共感覚」とは、病気ではなくいわば「特殊な感覚」で一種の「感覚の混線」という言い方もできるようで、しかし、世界中で様々な研究が続いているもののようです。刑事弁護士だったシーラッハは、例えば訴状とかに書かれた文字が色に見えたり、そして私が感じるような、「人が色で見える」ことから劇作家の面白さにトリコになったりしたかも。
こんなことを感じながら、毎ステージ、お客様に、今日はこんな色だったけど大丈夫だったろうか?とか心配しながら、その色を楽しんでいただけたか?を心配しながら、演じ続けています。
もっと素晴らしい色を、もっと深い色をお届けし続けたい。その日、その舞台、その瞬間にしか感じられない深い濃い良い色をお客様と共有したい。
引き続き舞台で試させてください。必ずやその境地へお連れします。
ご支援を。
撮影:黒木朋子





