2024/11/21 02:27
煉瓦焼(1928年 大阪中之島美術館蔵)
この絵は、2023年に大阪中之島美術館で開催された展覧会で初めて知った※。
祐三が死去する半年前に書かれた絵で、煉瓦を焼く窯が正面から描かれている。輪郭は太い線で単純化され、勢いのある筆捌きはリズム感がある。
「ガス灯と広告」(1927年 東京国立近代美術館蔵)で頂点を極めた感はあるが、フランス東部のヴィリエ=シェル=モランを訪れた際に書き上げた一連の風景画は、作風に変化が見られる。一つ所にとどまることなく、常に新しい絵を求めて鍛錬していた祐三には感動させられる。
この時期の絵は、線は単純化され、力強く、どこかしらユーモラスな作品が多い。
加えて、澄んだ空の青、煉瓦色の赤、少しの草の緑がバランスが良く、配色のうまさが際立つ作品でもある。
もう一つこの絵を語るのに収集家山本發次郎の存在が外せない。この煉瓦焼は、發次郎が初めて出会った作品である。
この絵をきっかけに数多くの佐伯祐三の作品をコレクションするのである。
数多くの作品が残念ながら空襲で消失したものの、疎開させていた40点ほどが残ったことで、今私たちは祐三の作品の変化やバリエーションを楽しむことができる。
※「佐伯祐三 ― 自画像としての風景」は、2023年4月15日(土)から6月25日(日)開催