────────────────────
1. 自己紹介
────────────────────
こんにちは、KOSEKO DESIGN&PRESSのコセコです。パートナーの小瀬古やふぁと2人でデザインユニットとして関西を拠点に活動しています。書籍・アートブックを中心とするデザインスタジオとして機能しながら、アートブック発行を通じて新たな視点をリサーチするデザインラボとして東アジア各地域で活動しています。(詳細はこちら)
擬態デザインってなに?
生き物の擬態のように、あるものを別の何かに見立てる作品を作っています。例えば、下のgifアニメはフィンランドの地図を赤くして牛肉に見立てた作品で、水と森の国というくらい無数にある湖沼が牛肉の脂身に見立てられ、霜降りのように見えてきます。そして、その成果をアートブック「gitai」シリーズとして発行しています。(アートブックの詳細はこちら)
(MAP=MEAT(2016)|地図が肉に擬態する作品)
(これまでのアートブック「gitai|擬態」と「410|視点」)
────────────────────
2.プロジェクトについて
────────────────────
アートブック新刊「存在しない景勝地(英語名:Taiwan Geo Graphics)」
台湾のある場所の岩肌の写真を、青色や黒色でプリントすると、海の景色のような写真ができたので、海に擬態する台湾の岩の写真集を作ろうというプロジェクトです。
滞在制作やそれに伴う渡航費・材料費などの費用面のほか、内容が濃くなりそうなので、いつもの薄いマガジンではなく厚めのブック(当社比3倍!)に近い仕様にするハードモードなのもあり、プロジェクトを立ち上げました。
Webサイトにも、このプロジェクトのページを作りました。
https://gitaipress.com/taiwan-geo-graphics-project/
(アートブックのイメージ)
(BEFORE:台湾の岩肌の写真)
(AFTER:Photoshopで青く色調整をすると海っぽく見えてくる)
ー
岩肌の場所
海に見立てる岩肌があるのは台北から電車で1〜2時間ほど東に行った外澳という場所で、波のような岩肌を持つ堆積岩がが特徴的で、海岸沿いに不思議な形の岩石が点在しています。面白い岩肌が多々あるのですが、旅行ついでに行く短期滞在だと、全然写真が撮れません。。。台北から絶妙に遠かったり、電車の本数が少ない上、よく雨が降ってしまって、写真素材としておじゃんになってしまいます。なので、現地滞在して天気の良い時を狙って、岩肌の撮影を行いながら、雨の日は制作中心にしようと思っています。
(岩肌のある台湾・外澳付近の風景)
(素材となる外澳の風景と特徴的な地形)
────────────────────
3.アートブックの仕様と実験の内容
────────────────────
アートブックは3冊組に分けました。アートワーク中心の「存在しない景勝地」上・下巻と、リサーチのドキュメントからなります。
①存在しない景勝地・上|海に擬態する岩肌の写真集
上巻では最初の実験をアートブック化で、上の「2.プロジェクトについて」で書いたように、Photoshopで岩肌の写真を青色に変え、海に擬態する岩肌の写真集を作ります。本を眺めていると、海の風景が広がっている・・ように見えるけど、実はほぼ全て岩の写真集!と言うコンセプトで作ろうと思っています。
(上巻のイメージ)
(左が色調整前。右が調整後)
ー
②存在しない景勝地・下|岩肌の海化のプリント実験のアートブック
下巻では上巻のコンセプトである「海に擬態する岩肌」をさらに発展させ、インク・紙というアナログ性の強いプリント作品を作り、現地での新たなプリント実験を収録したアートブックを作ります。
デジタルだと綺麗なプリントが生まれますが、リソグラフやシルクスクリーンなどの孔版印刷を使うと、クセがあるけど魅力的なプリントが生まれることがわかりました。この2種類のプリント実験をアートブックとしてまとめたいと思います。
(表紙の文様はシルクスクリーンのインクを拡大した景色)
(下巻のデザインイメージ[10.1更新])
【プリント実験①リソグラフ】
リソグラフは(リトグラフとはまた違います)孔版印刷の一種で、アートブックやZINEなどで見かける印刷の一つです。普通の印刷では出ない色合いや風合いが面白い印刷方法で、いつもはデザインを決めてポスターを作っていたのですが、今回は実験性の高いプリントを作ります。
青と黒の2色の版を製版してプリントすると、それぞれの版の位置がズレることで、ピントが一部のみに合ってそれ以外がボケたり、ふと振り向いた時に景色がブレるような効果が生まれ、光学現象的なプリントに仕上がります。この実験ではリソグラフの特性を活かした現象的なプリントの表現の実験を行います。
(Slogan Studioさんでの実験風景)
端を見ると青と黒がずれているのがわかる
(2色のインクがずれると、流れるような視覚効果が!)
【プリント実験②シルクスクリーン】
シルクスクリーンはTシャツによく使われる印刷手法で、フィルムの穴からインクが通り抜けることで描画する印刷法です。インクの厚みを感じる印刷であるとともに、こぼれやかすれといったノイズも生まれます。デザインの現場では本来これらのノイズはNGですが、それらのノイズが魅力的な抽象図形を生み出したり、霧がかかったような天候の効果が生まれ、却って魅力的な表現となります。このリサーチではノイズを活かした表現を実験します。
(シルクスクリーンでのプリント検証風景)
(端に抽象画のようなインクのこぼれが生まれる(Photo: FabCafeKyoto))
シルクスクリーンでの印刷風景(Photo: FabCafeKyoto)
ー
③ 「存在しない景勝地」 リサーチドキュメント
現地滞在での岩肌の海化のリサーチをドキュメント化します。プロジェクト概要から、撮影方法、撮影時の天候などを記録し、アーカイブ化します。
(表紙デザインイメージ)
────────────────────
4.プロジェクト立ち上げの背景
────────────────────
台湾でのアーティストインレジデンスプログラムで滞在制作できることになりましたが、費用の問題に直面しています。
台湾は2011年に現地の大学とワークショップして以来、個展の開催やアートブックフェア参加など、交流の盛んな目的地でした。かねてより、地域の特性を活かした作品を・・とは思っていたけど、擬態作品シリーズは地域ネタとのコラボレーションがこれまた難しい。見つからないまま時間だけが過ぎていきました。(外澳は最初2015年に訪れていて、この時は青写真化は考えずに、岩肌の造形が面白く、写真をただ撮っただけでした)
(2015年のフィールドワーク)
2020年、アートブックも5冊発行し、擬態デザインが板についてきたのでgitaiというマガジンとして再スタートを切りました(その時のクラウドファンディングプロジェクト)。その頃に、以前撮った岩肌の写真を青写真化してみたところ、海景の写真のように見えてくる、という発見がありました。しかし、その頃はパンデミックの真っ只中で、発表の機会がなく、コロナ後レジデンスプログラムを調べるも、台北から離れたこの地域で見つけることができませんでした。そこでまた、しばらくお蔵入りすることになります。
(当時のプロトタイプZINE)
2023年、転機が訪れました。岩肌の写真のことがあって、再度外澳の海岸で写真を撮影した後、HyperWaveのアーティスト・Steven氏と出会うことになります。宜蘭でアーティスト・イン・レジデンスを運営していて、ちょうどこのプロジェクトを受け入れてもらえることとなりました。この偶然の出会いから、このプロジェクトを進めるときは、今だ!となりました。
今回のアーティストインレジデンスでは宿泊場所を提供してもらえますが、渡航費や材料費などに費用が色々と発生します。日中通訳ができるやふぁと一緒に行った方が、専門用語などより解像度の高い交流が可能になるため、二人分の費用を賄う必要があり、今回のプロジェクトを皆様に応援していただきたく、プロジェクトを立ち上げました。
(レジデンスでの展示風景 Photo by 邱杰森)
────────────────────
5. 現在の進捗状況
────────────────────
上巻の材料はこれまでの取材から一通り揃っており、あとはデザインと制作を進めるのみとなっています(12月に発行予定)。下巻・ドキュメントの内容は滞在制作が前提になるため、滞在時の撮影以外の部分を進めています。
手持ちの岩肌の写真を使っていくつかプリントの検証を行いました。単色プリントの手法として、リソグラフ・シルクスクリーン・サイアノタイプの3種を実験してみました。実験前はサイアノタイプが有力候補でしたが、実際にやってみると、意外なことに黒インクによるシルクスクリーン版画の表情が美しく、プリント作品をシルクスクリーンで作ることにしました。
シルクスクリーン版画の細部はドット絵のようになっている。
────────────────────
6. リターンについて
────────────────────
① 新作アートブック「存在しない景勝地(仮)」(初回盤)
詳しい内容は「3.アートブックの仕様と実験の内容」で書いていますが、今回のプロジェクトの集大成としてアートブックを作ります。3冊組の冊子で構成され、オビを巻いています。アートブックプロジェクトの本体なので、基本的にこちらをおすすめしています。
サイズ:A4/印刷:デジタル印刷/ページ数:合計60p前後
※内容・仕様は調査結果によって内容を変更することがあります
ー
②gitai #09「存在しない景勝地・上」
①を構成するアートブック「存在しない景勝地(仮)」を構成する三冊のうち、上巻のみ12月に先行発行する予定です。手軽かつ、リターンが早いのが良い方におすすめです。
サイズ:A4/印刷:デジタル印刷/ページ数:24ページ前後 ※①の内容に②も含まれています。
(10.1更新:デザインアップデートしました)
ー
③実験パック
今回の実験で生まれたプリントプロトタイプの現物という生のサンプルを一式同梱します。同梱されるのは元の岩肌の写真、デジタル彩色した岩肌の青写真、シルクスクリーン、リソグラフの計4種です。現物という生のサンプルを見立てによる見え方の変化、それぞれのプリントの違いや視覚効果を実際に体感することができます。1枚1枚仕様が違うので、図柄やサイズはランダムとなります(A4以下)。実際のプリントの標本が欲しい方におすすめです。
内容物:
・元の岩肌の写真
・デジタル彩色による岩肌の青写真
・シルクスクリーンによる触感のあるプリント(青か黒)
・モアレやノイズが生まれたリソグラフプリント
注意点:
・色・図柄・はランダムですので、選べません
・元のプリントが大きい場合はA4にカットします
・サイズ:ランダムとなります。B5〜A4程度を想定しています
(シルクスクリーンやリソグラフのプロトタイプ)
ー
④アートブック「月と地球(仮)」
※先行発送可能
これまでの惑星の擬態シリーズの集大成として発行するアートブック。ハム・玉子をはじめ、すべての惑星の食品のアートワークと新作も収録します。
ページ数 計56ページ程度(3冊組)
サイズ:210x210mm(仮)
ー
⑤Tシャツ
今回のアートワークやgitaiロゴをあしらったTシャツです。自分がYシャツ派だったのもあって、これまであまりTシャツをリターンにすることはなかったのですが、最近はTシャツを楽しめるようになってきたので、満を持して?Tシャツを制作します。3種類のバリエーションから選べます。AとBは今回のクラファンのみでのデザインです。プリントはUTme!を使っています。
サイズなど仕様はこちら(UTme!のページ)をご覧ください。
(Tシャツのデザイン)
ー
⑥擬態デザイン大学・公開講座
オンライン or オフライン(※注1参照)で公開講座という名のデザイン相談室を開設します。デザイン、アートブックなどの相談をお聞かせください。時間は1時間程度を想定しています。下記のトピックの中から、いくつかを選んでいただき、資料を交えてお話しします(約60分)。下記のトピックの関心がある方におすすめです。(擬態デザイン大学は小瀬古文庫が主催するワークショップによる、架空の大学名です)
・日程:2024年12月1日〜2025年11月31日の任意の日時
・場所:google meetsもしくは任意の場所での開催(注1参照)
・人数:1名〜(注2参照)
トピック
・制作編:自分でコンテンツを作る
・制作編:表紙や誌面のデザインってどうやってるの?
・制作編:擬態デザインの作り方
・制作編:展示や作品の販売の活動について
・制作編:ワークショップの活動について
・流通編:海外・日本のアートブックフェアとそれぞれの特徴
・流通編:本屋さんとの関わりについて
・継続編:ライフワークとライスワークのバランスについて
・自由枠(上記以外に聞きたいことがあればトピック化できます)
リターンの流れ
・クラウドファンディング終了後、こちらよりご連絡いたします
・スケジュール、トピック、開催方法/場所、をヒアリングし、内容の調整を行います
・オフライン開催で交通費が発生した場合の請求を行います
・予定の時期にデザイン相談室を開催し、リターン完了となります
注意点
注1. オフラインでの開催の場合、交通費・滞在費の追加費用が発生する場合があります。
京都市・大阪市・阪急京都線沿線以外での開催の場合、交通費・滞在費が発生します。
場所をこちらで用意する必要がある場合、そのコストも発生します。
注2. 複数名で参加可能ですが、オンラインはgoogle meetの無料プラン40分の範囲内となります。
もし、google meetsやzoomでビジネスプランをお持ちであれば、60分程度に延長可能です。
(トークイベントでの風景 (Photo: FabCafeKyoto))
ー
⑦サイン
ZINEの裏面にサインをお入れします!
ー
⑧クレジット掲載
ZINEの巻末の奥付にサポーターの項目を作り、あなたのお名前を掲載します!サイズについては、下の画像を参考にしてください。
────────────────────
7.スケジュール
────────────────────
10月 クラウドファンディング終了
11月 制作
12月 gitai#09(存在しない景勝地・上)の発行(先行発送)
2025年
1月 台湾でのAIR(アーティスト・イン・レジデンス)開始
2月 展示・AIR終了・帰国
5月ごろ リターン発送
5月 国内でも展示予定
────────────────────
8.資金の使い道
────────────────────
まずは最低限となる下記の費用の金額分を目指します。渡航費は現地での展示・トークイベントで中国語通訳が必要になるため、二人分の渡航費を計上しています。他には現地での制作費・リターン費・手数料に使用する予定です。
渡航・滞在費(2人分):約15万円
材料費:約5万円
手数料(17%+税):約5万円
────────────────────
9.最後に
────────────────────
この滞在制作を台湾での活動の足がかりにしたいと考えていますので、応援どうぞよろしくお願いいたします!クラファンでの支援のほか、台湾でのアート・デザイン・出版に関する情報もぜひお寄せください!また、1月〜2月に台湾に来られる場合はぜひお声がけください!
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見る先行発送分のリターンを、12月末より発送開始します。
2024/12/28 15:33こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
応援ありがとうございました!
2024/11/02 08:2910月31日をもって、クラウドファンディング「存在しない景勝地」プロジェクトが終了しました。151800円の支援を集まり、台湾での滞在制作の資金として、ありがたく活用させていただきます。今後の流れについて今後の本プロジェクトの流れをこちらに共有します。多少ズレるかもしれませんが、概ね予定通りに進める予定です。12月アートブックのリターンで上巻の先行発送を希望された方、もしくは上巻(gitai09)のみの方は、12月で「存在しない景勝地」「月と地球(Delicious Planetsにタイトル変更します)」を発送いたします。1月台湾での滞在制作を行います。現地の岩肌の撮影と、プリント実験を行います。3月台湾より帰国し、アートブックの制作を行います。5月アートブック完成。アートブック及び他のリターンの発送を行います。今回のクラウドファンディングを通して台湾での活動の励みとなりました。まだこれからが始まりですが、スタートの励みになりました。本当に、応援ありがとうございました。 もっと見る
今回のプロジェクトの特徴
2024/10/30 17:00もうすぐ、10月31日にクラウドファンディングが終了します。今回の「存在しない景勝地」プロジェクトは、擬態プロジェクトの中ではかなり実験的な領域に位置付けているため、これまでとは異なりちょっと難解なものに感じるかもしれません。。。なので、既存の擬態作品にはないこのプロジェクトの特徴をまとめてみました。岩肌の写真から海の景色を刷るシルクスクリーンやリソグラフのように、穴を開けたフィルムの版から、インクを通すことで刷る孔版印刷の版画作品であることがこれまでと大きく異なります。岩肌の写真から孔版印刷の版を製版し、青と黒の2色刷りを行うと、そこに海の景色が浮かび上がるプロジェクトです。高性能印刷機でデジタルデータを写実的に再現するこれまでの手法も行いますが、孔版印刷を使うことで風合いや身体性のあるプリント表現を目指しています。(注:アートブックはコストの関係でデジタル印刷で行います)岩肌の写真と青く色変換した岩肌の写真鮮やかな色孔版印刷の色の鮮やかさも一つの特徴で、普通の印刷だったら出ないような、鮮やかで深みのある青を目指しています。印刷はプリンターと同様4色のインクを混ぜて表現するため、どうしてもくすんでしまいますが、孔版印刷は一つ一つのインクが特色であるため、より色鮮やかな表現が可能です。また、背景が黒だと色が鮮やかに見える彩度対比の効果を取り入れ、青インクと黒インクのドットを交互に交差させて鮮やかに見える効果を狙っています。網点を粗くして、黒インクと青インクが交差するジェネラティブアートのようなドリフトプリント今回は実際の視覚が持つ中心視と周辺視を表現に取り入れています。リソグラフのプリントで2色刷りすると、青と黒のインクがずれて、ピントの合う中心視と、ぼやけて見える周辺視が生まれてきます。しかも、ずれ方がそれぞれ異なるため、同じデータでも一枚一枚が異なる見え方のプリントが生まれます。このプリントを横ずれに準えてドリフトプリント(Drift Print)と名付けました。青インクと黒インクのズレ時間軸のある表現ドリフトプリントで生まれたプリントたちを並べてみると、その表現に時間の連続性が生まれることがわかりました。例えば、映像のフィルムや連写した写真を見た時の感覚にも似ています。この辺りはまだ実験が足りないので、これから進めていくところです。右上にピントが合っている左下にピントが合っている全体的にピントがずれている引き続き、応援どうぞよろしくお願いいたします! もっと見る
コメント
もっと見る