13日目、無事に終わりました。
先週と同じ案内になりますが、火曜日はお店を休ませてもらって野菜の移動販売をしています。
おばあちゃんのフリートークが面白いという話を先週は書きましたが、今週はおばあちゃんの味覚がすごいという話を書きたいと思います。
僕が行っている移動販売で扱う野菜で特別なものはありません、スーパーでよく見かけるラインナップを仕入れるように心がけています。
マルシェで見かける移動販売や◯◯直送!などと謳っている期間限定店舗等では珍しい野菜や、珍しい地域の野菜を楽しめたりしますが、僕の八百屋はそうではありません。
理由はとてもシンプルで、需要がないからです。
おばあちゃんたちが求めているのは珍しい野菜ではなく、ごく一般的な野菜なのです。
そして一見どれも同じに見える野菜をそれぞれ手に取り「こっちの方が熟れている」とか「これはお尻がとがっている」などと比較しながら買い物をするという、体験を求めているのです。
なので僕が用意するのは一般的な野菜なのですが、いつものように野菜や果物を並べていると常連のおばあちゃんがいつものようにやってきてくれました。
着くやいなや「先週のスイカは三浦の木村さんが作ったやつじゃない?」と、おっしゃるんです。
八百屋が市場で野菜を仕入れる時、大手であれば一つの野菜を何十ケースと仕入れるため難しいのですが、僕のような小さな八百屋はよく「生産者名」や「生産者番号」を確認するんです。
例えば今の季節ならキャベツは群馬の嬬恋が旬なのですが、嬬恋のキャベツであればどれも一緒かといいますとなかなか違うんですよね。
農家さんも人なので野菜に愛を注いで仕事が丁寧な方もいれば、あくまで物として雑に扱う農家さんもごく一部にはいらっしゃいます。
中身を見ずにケースで仕入れて、自宅で蓋を開けてみたらとんでもないことになっている…なんてこともあったりします。
なので八百屋は生産者の名前を気にすることもあるのですが、小玉スイカは現在三浦半島が最盛期のタイミングです、市場では三浦のスイカが入ったダンボールが山のように積み上がっていて、その数ある箱から好きな生産者さんを探し出すのは至難の業です。
ですがおばあちゃんがそんなことをおっしゃるので、箱を確認してみると確かに「木村」という生産者の名前が書かれていたんです。
「毎年、木村さんのスイカを頼んでるからわかるのよね」って言うんですけど、スイカはスイカですし、木村さんも色んな品種のスイカを育てているはずなのにそれを当てちゃうなんてとんでもない味覚をしていますよね。
さすが主婦歴60年、頭が下がります。
コーヒー業界には様々な大会があるのですが、カップテイスターという味覚の正確性とスピードを競う大会があるのですが、そのおばあちゃんにHAYAKAWA coffee代表として出て下さいと頼もうか真剣に悩んでいます…。
大会に出る出ないは別として、コーヒー屋にとってとても大切なクオリティチェック、要は美味しいコーヒーなのかどうかを日々チェックするのですが、当然優れた味覚がないことにはチェックできません。
そのため日々トレーニングの積み重ねがとても大切なのですが、おばあちゃんたちは毎日台所に立ち続けたことで自然と特殊能力が身についていたんですね。
「センス」イコール「才能」と思われがちですが、センスは磨けば光るものです。
逆に言えば毎日少しずつでも磨かないことにはセンスが良くならないですし、少しでも磨くためには数を積み重ねていくしかありません。
移動八百屋はまもなく12年になりますが、コーヒー屋はまだまだ1年。
地道に丁寧な仕事を積み重ねることを心がけていきますので、皆さまにも末長く通ってもらって、おばあちゃん並の味覚を手に入れる努力を早川が怠っていないかどうかを引き続き見守ってもらえると幸いでございます。
HAYAKAWA coffee
早川 侑