KURA ONE®は、当初から日本酒缶を目指していたわけではありません。私が経済産業省の支援を受けたプロジェクトに参画し、47都道府県を回りながら地域産品のストーリーを国内外に発信し、地域力や職人力の価値をお伝えする取り組みを行っていました。この活動の中で、日本酒との出会いがありました。
日本酒は、主原料が米・米麹・水と非常にシンプルです。しかし、各地の風土、水質、醸造技術、職人の哲学によって、香りや味わいが大きく変わります。この「個性」が地域や酒蔵の価値となり、ユーザーのブランド体験として記憶に残っていくと考えました。「地域の個性」「酒蔵の個性」を届けるために何をすればいいのか、このことを自問し、考え続ける中で具体的な施策を模索していきました。
私たちは、日本酒の販売免許を取得後、国内外の日本酒イベントや試飲会に参加し、徹底してヒアリングを行いました。その中で、どこに壁があり、どのような課題が市場の成長を阻んでいるのかを探りました。
私が注目した課題は二つあります。まず一つ目は容器の課題です。市場に出回っている日本酒は、720mlの四合瓶や1800mlの一升瓶が主流ですが、飲み慣れていない人にとってこれらのサイズは気軽に飲みきれる量ではありません。開封後に飲み切らなければならず、無理して消費してしまうこともあります。小瓶にしても瓶の重量は重いのです。冷蔵庫での保管も難しいです。
二つ目の課題はコミュニケーションの難しさです。日本酒の専門用語は分かりにくく、銘柄すら読めないことがあります。これから日本酒を試してみようとする人にとっては、ハードルが高く、飲む前に味わいが分からないため、特定銘柄を選ぶ理由が見当たらず、最初の一歩が踏み出しにくいという現状があります。
これらの課題が、日本酒が消費者に届きにくくなる要因と考え、KURA ONE®の企画に至りました。