木工専科教師の藤原です。クラウドファンディングも残り2日あまりとなりました。毎日少しずつご支援いただく方が増え、お名前を拝見し、そのたびにありがたい気持ちでいっぱいになります。最後までどうぞ、応援のほど宜しくお願い致します。
本日は、今年の春休み中のエピソードをご紹介したいと思います。
昨年度、おひさまの丘では24年度のクラス編成と時間割、高学年のエポックを誰が担うかなど長く話し合いが続きました。1年を通して授業を担うのは、3名の担任教師と、5人の専科教師、そして専門科目の講師の先生方です。
複式クラスで授業を行いながらも、できうる限り、その子の年齢・成長にあった学びをもたらそうとすることは、地方の小さなシュタイナー学校では、非常にたくさんの工夫が必要です。
最終的に、それらを実現しようとすると、中等部校舎の教室の5部屋が絡む大移動、大改造が必要となりました。
春休み直前に決まったこの計画。なかなかに大変なことが予想されましたが、一番は、9年生となる子どもたちの「最後の一年は日当たりがよくて明るい教室で過ごしたい」という切なる願いを叶えたいという、学園の大人たちの思いがありました。
中等部校舎は、少しお山を下った谷あいにあり、日中でも少し薄暗い部屋がありました。今となっては、なぜだったのか?という気持ちですが、6年生から8年生までの3年間、一期生の子どもたちは一階の日当たりのよくない教室で過ごしていたのです。
保護者や教師が協力し、早速改造に取り組むことに。さらに、そこで大きな力を発揮してくれたのは、新9年生となる子どもたちです。
「自分たちが使う教室なのだから」と、春休み中にもかかわらず、そして誰に頼まれるでもなく、何日も何日も登校し、教室の改造を手伝ってくれました。
図書の大移動をし、自分たちのおすすめの本は表紙がみえるように飾ったり、読みやすいように机や椅子の配置も考えてくれました。この機会にと、収納物を見直し、不要品の整理もてきぱきと。担任の先生に聞きながら、自分たちの教室の設えもこだわりました。
今回の改造で、中でも大変だったのは、二階にあった創作室を一階の和室へ移動することです。創作室は彫塑、水彩、木工の授業が行われていましたが、さすがに畳の上ではできないね、ということで、床に張り替えることに。二間合わせて14畳の床はりです。
まずは重たい畳はがし。幸いにも畳はその多くを引き取って使っていただけることになりましたが、そのあともたくさんの工程がありました。
次は根太打ち。床は四角にカットした合板でしたが、その下地として根太を打ちました。インパクトドライバーも使いましたが、回数をこなすと慣れた様子で手際よくビスを打っていました。
その後、保護者の方のアイデアで、もみがら燻炭を新聞紙などに包んで根太の間に入れ、断熱材としました。その後がやっと床張りです。
何しろ5部屋が絡む大移動だったので、この作業が終わってからやっとこれが移動できる、といった具合で毎日いろんな部屋が少しずつ進んでいきました。
新9年生の子どもたちは、新7年生が使う教室もせっせと準備を進めます。力を合わせて1階から大きな黒板も移動しましたし、新7年生の黒板も、自分たちの新しい黒板も、塗料を塗る仕事も担ってくれました。開閉式の大きな黒板も、大人と協力して取り付けました。
ほんとうに頼りになる子どもたちです。(あまりに頼りすぎだと、ご覧になる皆さんは思うかもしれません...)
最初の方に、「自分たちが使う教室なのだから」と言っていたと書きました。一緒にいろんな作業を終えて思ったことは、必ずしもそうではなかったんだな、ということです。
明るい部屋で過ごしたいと言ったのも、図書コーナーを整えたのも、床はりを手伝ったのも、自分たちの最後の年への思いも確かにあったことと思います。けれど胸の中には、自分たちの卒業後、ここで過ごす子どもたちへの思いがあったのでしょう。
違う言い方をすれば、後輩たちに加えて、担任の先生たち、専科の先生たち、学園のおしごとで時折、あるいはしばしばやってくる保護者の皆さん、専門的な授業の講師の先生方など...
学園に集う様々な人々。彼女たちの「わたしたち」の「たち」に含まれる人は、実はきっと、とても多いのだろうと思います。
それを特別に意識をしているわけでも、あえてはっきりと言葉にするわけでもないけれど、9年生の彼女らにとって、それはごくごく自然な気持ち、行いだったのではないでしょうか。
ただ実際に、彼女らの気持ちは大人を動かし、自分たちもたくさん手を動かしたことで、確かに新たな道を切り拓いたのだ、そう言えると思います。
6歳からこの小さな学校で過ごした9年生は、もうみんな15歳になりました。私が一緒に過ごしたのは6年生からの3年と8ヶ月ですが、この期間でも子どもたちはどんどん成長し、どんどん変化していきます。
青年期にさしかかった子どもたち。やがて社会に羽ばたき、仲間とともに力を合わせて人生の目的を果たしていくだろう、その片鱗を、間近で見させてもらうことになりました。
それは私にとっても、かけがえのない経験であり、この学園で過ごす中での、大きな励ましとなっています。