注目のリターン

大分県佐伯市船頭町で生まれ育ち、現在は休業中の「宝来家旅館」を再開させたいと日々葛藤している、染矢弘子と申します。宝来家旅館の三人姉妹の次女として生まれ育ち、市外県外に暮らしましたが、佐伯に戻り思うのは、佐伯の暮らしやすさです。人の良さ、食べものの美味しさ、温暖な気候や風土、水があうのはもちろんですが、住むにつれて(実家でもありますが)「宝来家」という建物を大事にしたいと思うようになりました。
今年、築95 年を迎える木造三階は、隙間風が通り、雨漏りする建物ですが、住むにつれ思わず深呼吸をしたくなる、心地よい空間でもあります。
この建物を残したいという思いで、18 年前に旅館内でカフェの営業をスタート。当時は母が旅館の女将として運営していたので、お互いに助け合ってきましたが、6年前、脳梗塞で母が倒れ、コロナ禍とも重なり旅館は休業。現在に至ります。
建物を残すということは、古いというだけで維持費がかかります。
建物を活す方法をあれこれ考えてもみましたが、やはり旅館を再開するのが最良だとの考えに至りました。
人生をかけての旅館再開です!
なんとしてでも旅館を再開するために、クラウドファンディングに初挑戦します。

宝来家は明治25年(1892年)、料亭としてはじまりました。昭和6年(1931年)に建て替えられた木造三階は、改築を重ねながら今なお残る建物です。
昭和6年の建築当初、木造三階はモダンな洋館の様相でした。(写真参照)
明治から続く料亭に加えて、昭和6年からダンスホールとカフェを営みました。戦後、一時的に商工会議所が入り、やがて旅館へと業態を変え、130年にわたり佐伯の歴史を見守ってきた建物です。

建築に詳しい方には「二度と建てられない建物」と言われます。懐かしい思い出を口にする方もしばしばで「昔、カフェで生まれて初めて食べたハヤシライスの味を今でも覚えている」「大広間での結婚式に呼ばれて来たことがある」「高校受験の日に宿泊した」など。移り変わる時代の記憶を懐かしむ話は、目には見えない当時を思い起こしてくれます。木造3階と2階の入り混じった複雑な建築は、唯一無二の存在感があり、この建物を残すことは、かつての町の記憶をとどめることでもあると感じるのです。
古い建物は毎年どこかに不具合が出てきて維持費がかかります。そのため、父からは残すことに対してなかなか賛同を得られずに随分と仲違いしてきました。
父も、自分の親から「古くて大きな旅館を残すことの大変さ」を聞かされて育った経緯があり、娘に残して良いものかという葛藤があったのだと思います。
クリエイティブカレッジという大分県が開催した、県内のクリエイターを育てながら、実際に県内企業の困りごとを解決するという事業があり、宝来家旅館の再建を目指し参加したこともあります。とにかく再開したい一心で応募して、最後のプレゼンをいただく日には父を伴い参加。地域を巻き込んだ旅館再開のアイデアに心からワクワクしました。しかし、父の賛同を得ることができず、家を飛び出したこともあります。折下、母の病にコロナ禍が重なり、宝来家は休業しました。1年半の後、家に戻ってカフェの再開はしましたが、父とのわだかまりは残ったまま、旅館の再開を説得することはとにかく時間がかかりました。
ですが、この6年に及ぶ休業中も家族で建物を守ってきました。取り壊したら楽なのかもしれませんが、宝来家には、宿を超えた「可能性がある」と思うのです。どれだけ反対されても、この建物を残したいという強い気持ちがあったから、諦めることはできませんでした。
今ここから目指すのは「歴史を残しながら未来へつなぐ宿」です。
宿を再開すると決めたものの、高齢の両親の手を借りることはできません。まずはひとりでも運営できるように、複雑な動線を解消する必要がありました。そのために、宿の入り口(受付)を一つの空間に改装することにしました。スムーズな受付と、コミュニケーション作りのできる空間を兼ねたものです。

この改装工事は自費で行いましたが、古い建物には目に見えないほころびがあちこちに生じています。客室に至っては、畳や壁の老朽、鍵のないドア、電気配線問題、エアコンの不備など。そして、消防設備の改修。1つしかない風呂場に、シャワー室の増設。さらには、ホームページ開設、経営システム管理など開業にかかる経費は続々と露出。それでも宿を再開するためには、皆さんのお力をお借りしてでも叶えたいと、クラウドファンディングを決意しました。
100 年前の梁、木の温もり、少し不便な造り。改修を重ねてきた建物ですが、そこにあるのは「時代の積み重ねが生み出す心地よさ」です。どれだけ改修しても、あえて「古き良き懐かしさ」を感じる空間であり続けたいと思います。そこに、現代のおもてなしを加えることで「懐かしさ」と「快適さ」が同居する空間をつくりたいと考えています。
畳を打ち替え、照明を整え、必要な部屋にはベッドを設置。エアコンを整えます。wi-fi は使えるけれど、電気配線は昔のまま。少しの不便を楽しんでもらうのも、昔ながらの宿の楽しみ方の一つだと思うのです。

宝来家の一角には、スローカフェ・茶蔵という体が喜ぶ食事を提供する料理店があります。30歳になった頃、この建物を残すには何をしたらいいだろうか?と考えていました。そんなとき「循環農法」を提唱する、なずな農園の赤峰勝人さんに出会い『すべてのものは循環し、循環しないものは淘汰される』ということを理解していく中で、ライフスタイルが大きく変化しました。食べものによって体調が変わることを周囲の人々にも知ってほしいと思い、それまでやってきたデザインの仕事を辞め、店を出すためのノウハウを身につけようと東京へ1年半。そこで得たものは「大分の尊さ、地元食材のおいしさ」でした。「スローカフェ」というのも、フェアトレードビジネスを薦めるウインドファームの中村隆市さんと出会い、スロービジネススクールで学んだことによります。ファストなものに溢れた時代に、一旦立ち止まって「ゆっくり」周りを見渡すことで見えてくるものこそ大事。自然から遠ざかる生活スタイルを、少しだけ自然に還すお手伝いができたら!そうして、20年前にカフェ営業をスタート。自然豊かな佐伯だからできることだと実感してきました。
2017年〜2023年、カフェの傍ら生産に携わる人と消費する人をつなぐ情報誌「さいきあまべ食べる通信」の発行に携わりました。そこでは地元食材の「作り手」とつながり、「食」に向き合ってきました。その経験を生かして食の情報発信できる空間を、つくりたいと思います。
玄米と季節野菜のランチプレート
昔ながらの建築を残す宿を楽しんでもらい、ローカルな食事の提供をしつつ、食にまつわる情報を提供。宿の1階にあるカフェ兼コミュニティスペースにて、顔の見える関係を紡いでいける活動を行っていきます。生産者(食べものを作る人)と消費者(食べる人)が出会い、語り合い、つながるイベント。一緒に料理を作り、食べることの大切さを体験するワークショップ。地産地消することで、目の前でどのように作られたかを知って安心して食べることができる大事さを伝えていきたいです。
「食べること=生きること」を感じてもらえる宿を生み出したいと考えています。
これまでにもカフェスペースを活用し、顔の見える関係を紡ぐイベントを行っています。2025年10月には、地元食材をクローズアップしてお料理をご提供するイベントを開催。ナチュラルワインとのペアリングを楽しんでいただきました。お酒を楽しむイベントであれば、そこに宿があることで遠方の方にも気軽にご参加いただくことができ、佐伯という地域をより楽しんでもらうこともできます。結果、地域への貢献につながると信じています。

2024年にスタートした「宝来家ガーデンマルシェ」は、2026年の2月に9回目を迎えました。佐伯市内外から多くの方にご参加いただき、作り手と買い手が繋がることのできるマルシェとしてご好評いただいてます。顔の見える身近な世界を楽しむことは、豊かな生活を送る始まりの一歩。より深く繋がってもらえる関係づくりを、「宝来家」を通して広げていきたいです。
暮らしの中から生まれる「自然」と「循環」を感じてもらえる宿。
旅する人々が「還りたい」と感じる、関係性を紡ぐ場所。
宿という名の、出会いと集いの空間を目指します。
人が集まって、町になる宿。 町宿 宝来家です。
今となっては貴重な木造3階の建物。この稀有な建物をもっと多くの方に知っていただくことで、建物の価値をより高めていくことができたら、宝来家は次の世にも残すことができると信じています。どうぞみなさんのご支援をよろしくお願いします。

客室リフォーム(畳・照明・ベッド・エアコン・施錠ドア・カーテン)
客室備品
消防設備の申請に係る費用
予約システム導入・ホームページ製作
看板製作費
旅館再開に必要な総額は約650万円。これまで自己資金約300万円を投じて改修を進めてきましたが、必要経費を見積もると約350万円不足しています。
今回のクラウドファンディングでは、その第一歩として200万円を目標に設定しました。この挑戦を成功させることで、再開に向けた現実的な一歩を踏み出したいと考えています。
目標金額200万円は、宿の再開に必要な資金の「スタートライン」です。ご支援いただいた資金は、内装改修工事や備品購入費などのほか、リターンの製作費、キャンプファイヤーへの手数料(17%)に充てたいと考えています。
200万円の内訳
消防設備の改修:20万円
客室リフォーム2室分:76万円
システム・広報(予約システム+看板):16万円
リターン製作費:50万円
CAMPFIRE手数料(17%):約33万円
予算外(今後、必要となる改修)
シャワー室2室新設:150万円

3,000円:【お礼のメッセージ】感謝の気持ちをお届けします
5,000円:【グッズ】宝来家オリジナルステッカー & お礼メッセージ
8,000円:【グッズ】宝来家オリジナルステッカー & 手ぬぐい & お礼メッセージ
10,000円:【グッズ】宝来家オリジナルTシャツ & お礼メッセージ
10,000円:【チケット】スローカフェ・茶蔵の珈琲チケット(20杯分)
10,000円:【グッズ&チケット】1泊チケット & 宝来家オリジナルステッカー
15,000円:【体験】再生物語ツアー宝来家の歴史と再生の裏側を体感できる特別ガイド
20,000円:【グッズ&チケット】宝来家オリジナルTシャツ & ステッカー & 手ぬぐい & 茶蔵珈琲チケット(6杯分)& お礼メッセージ
20,000円:【グッズ&チケット】<ペア> 1泊チケット & 宝来家オリジナルステッカー
30,000円:【お名前掲載】宝来家館内にサポーター銘板を設置
50,000円:【チケット】1泊チケット & 宝来家御膳
100,000円:【体験】宝来家の今昔を感じる1日+お茶菓子付き50畳の大広間、貸切り
100,000円:【チケット】<ペア> 1泊チケット & 宝来家御膳
1,000,000 円:【限定製作】「ツクリテ通信」発行権(限定1組)※大分県内の生産者限定
※宿泊チケット、体験のご利用日は要相談となりますことをご了承ください。
2026 年
4 月 下旬 クラウドファンディング開始
4 月 下旬 広報活動開始
5 月 下旬 クラウドファンディング終了
5 月 下旬 客室および館内の改装工事
5 月 下旬 消防設備改修工事、点検結果報告
6 月 上旬 予約システムほか準備
7 月 中旬 旅館業リスタート
8 月 上旬 リターン発送開始
宝来家はただの建物ではないと感じます。人が集い、笑い、涙を分かち合い、歴史を刻んできた「記憶の器」なのだと。だからこそ、宝来家旅館を残したいのです。一人でも多くの方に「宝来家があってよかった」と思っていただけるように。そのために、これからの人生をかけて、自分で決めた道を貫き歩んでいきます。どうか皆さんのお力を貸してください。宝来家を未来に残す挑戦を、共に歩んでいただけたら嬉しいです。心からの感謝を込めて。
最新の活動報告
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応援メッセージ 道の駅かまえ Buri Laboratory 早川光樹さん
2026/05/04 18:44クラファン9日目。80万円を越えて100万円の壁まであと一歩のところまで来ることができました。今日も温かいご支援に感謝です。ありがとうございます。なんと今日はご来店のお客様に「旅館再開するんですか?」とお声がけいただき、クラウドファンディングにご支援いただきました!!佐伯市民にもかかわらず、泊まってみたいとのことで、宿泊チケットのリターンをチョイス^_^嬉しいご縁に、お泊まりに来ていただく日が今から楽しみです。待ってますーー!* * *今日ご紹介するのは、道の駅かまえ駅長、早川光樹さんです。応援メッセージ・第8弾 「横浜から佐伯に来た、泣き虫の熱い人」道の駅かまえ Buri Laboratory 代表早川 光樹 さん早川くんが大学卒業後に選んだ道は、横浜から佐伯へのIターン。当時は佐伯でも話題になるほどで、「そんな奇特な人がいるんだ?」と思ったのが正直なところでした。そのきっかけは、お爺さんが佐伯出身で幼い頃から佐伯に遊びに来ていたこと。20代初頭で「道の駅かまえ」の駅長という道を選んだ早川くんと知り合ったのは、さいきあまべ食べる通信を通じて。20代後半を迎えた今、駅長に加えて牡蠣養殖を行う作り手にもなっています。蒲江は佐伯市の中でも養殖が盛んなエリアですが、高齢化により事業を辞める会社も多く、その養殖事業を継承したのが早川くんです。さらに高平キャンプ場の運営も行う彼は、お宿では先輩。蒲江という町全体を元気にするキーパーソンです。一緒に飲むと必ず号泣する、熱くて真っ直ぐなキャラは誰からも愛される存在。宝来家ガーデンマルシェの出店も常連になりつつあり、5月24日も牡蠣を焼いてくれます!* * *早川光樹さんからの応援メッセージ食べる通信でお会いしてから、食の大切さや食材の背景、その先にいる生産者の想いを本当にたくさん学ばせていただきました。つくり手の方々ともつないでいただき、そのご縁は今も大切なお取引につながり、道の駅の仕事をする自分の考え方や日々の取り組みにも大きな影響をいただいています。そして、地域だけでなく産業を未来へ残していく動きにもつながっています。今、自分自身も生産者として進もうとしている中で、変わらず背中を押していただいていることにも心から感謝しています。弘子さんとの出会いがなければ、今の自分には見えていない景色がたくさんあったと思います。宝来家旅館の再開は、人が集い、想いと記憶を次の世代へつないでいく、本当に大きく尊い挑戦だと思います。心から応援しています!* * *「弘子さんとの出会いがなければ、今の自分には見えていない景色がたくさんあったと思います」—— 熱すぎるメッセージ!私の方こそ、早川くんの行動力と熱さに、元気の源をいただいてます。これからも引き続き、よろしくお願いします!!染矢弘子 もっと見る
宝来家の思い出
2026/05/03 22:44クラウドファンディング8日目。会う人会う人に、「クラウドファンディングやってるね!」と、声をかけていただいてます。ここまで存じていただいているのだと驚きです。支援はまだ!という方、ぜひご支援よろしくお願いします ^_^今日は少し趣向を変えて、宝来家の思い出をご紹介したいと思います。どうぞお付き合いください〜!宝来家の思い出ばなし〜宝来家で育った、わたしの原風景〜「庭」この建物への想いを語るとき、いつも頭に浮かぶ風景があります。そんな思い出をご紹介します。まだ幼い頃の昔、(50年くらい前のお話し)リヤカーを押して野菜や魚を売りにおばさんが来ていました。夏の暑い時期になると、リヤカーを横にして庭でひと休み。涼んでいくのが日課のようでした。門をくぐった中庭は、外の気温よりも涼しいので、今でも「涼しい」と言われると思い出す記憶の一コマです。庭の入り口には大きな銀木犀の木があります。10月になるとなんとも言えない良い香りと共に黄色い小さな花を咲かせます。2~3日すると小さな花がポツポツと落ちてきて、庭いっぱいに黄色い絨毯を敷いたようになります。子どもの頃は、溢れる花をお茶碗によそって、母や姉を相手にままごとをしていたのを覚えています。やがて冬が近づくと、本物の絨毯を庭に広げて、日干しをする日があり、日向ぼっこをしながらうとうとしたこともありました。今も昔も変わらない庭の思い出。ぜひ覗きに来てみてください。近年は、京町通りのみんなが集まって、花の植え替えや、年末のお餅つきなどで賑わうことも増えました。夏には、ご近所さんとお庭バーベキューなんてことも。時々、ご宿泊のお客様も飛び入り参加したり、楽しい思い出がたくさんよみがえってきます。引き続き、ご支援よろしくお願いします。染矢弘子 もっと見る
応援メッセージ 有限会社らすたはうす 林田純子さん
2026/05/02 20:00クラファン7日目となりました。あっという間、だけど、深くて分厚い1週間でした。人と人とのつながりの素晴らしさを、身を持って体感しています。ご支援に、心から感謝いたします。応援メッセージ・第7弾「また一緒に仕事がしたい人たち。パート2」有限会社らすたはうすクリエイティブディレクター林田純子さん林田さんとの出会いも「さいきあまべ食べる通信」を通じて。昨日ご紹介した木村さんと同じく、編集長・平川さんのご縁で繋がりました。元来ライター志望だった私にとって、林田さんは憧れの存在です。木村さんのデザインもカッコいい、その上で林田さんと木村さんのタッグが最強すぎて、雲の上の人たちと仕事ができた喜びは、正直言葉にするのが難しい。林田さんはどんな時も、嘘のない、的確な言葉を紡いで文章を書き上げる。そのプロの仕事を間近で見続けた6年間は、本当に貴重な財産です。林田さんからの応援メッセージは、宝来家の空気をそのまま言葉にしたような、圧巻の文章。ぜひじっくり読んでいただけると嬉しいです。* * *宝来家旅館クラファンに寄せて。元「さいきあまべ食べる通信」編集、林田です。こんにちは。副編集長、お久しぶりです。クラファンスタート、おめでとうございます。足掛け6年半、創刊から休刊まで、宝来家旅館は、私たち編集部のベースキャンプでした。コロナ以前は、合宿のように宿泊もさせていただき、ここから取材にでかけてここに戻り、遅くまで打合せをして、翌朝も早朝から、大阪へ戻る最終便の飛行機ギリギリまで飛び回りましたね。あの濃厚な日々のお陰で、さいきあまべの浦々は、心の故郷です。そもそも、創刊に携わらせて頂くきっかけになった会合も、宝来家旅館にあるオーガニックカフェ「茶蔵」でした。ここで、平川編集長と語らい、染矢副編集長の玄米おむすびを頂き、その場でスーパーデザイナーの木村さんに応援要請の電話をかけ、チームが出来上がりました。創刊ひと月前だったでしょうか。「副編集長の実家が老舗旅館なんです」と泊めていただくことになったのですが、着いたとたん、門構えからして空気が変わる存在感に圧倒されました。引き戸をガラリと開けて玄関から入り、階段を上がって二階へ。廊下の左手に続く座敷、右手に現れるアンティークなタイルの手洗い場。黒光りする廊下はやがて中二階へと続くゆるやかな上り坂に。(廊下なのに坂!)波打つ透明なガラスと飴色の木枠が美しい窓からは、一階の瓦屋根が街頭の白い光りを反射させて鈍く光る。突き当りまで昇り詰めると、赤い壁に木枠の扉が現れて、まるで異世界に誘うようでしたが、私の部屋は手前だったので、左にくるりと踵を返しました。その夜、不思議な夢をみました。亡くなった父親が赤い壁の向こう側にいる夢です。水産物を扱う商社マンで、魚と釣りが大好きな父でしたので、創刊を応援してくれているように感じました。幽玄無限、新しいものには宿せない、魂のある旅館です。旅館は生き物です。一度、完全に死んでしまったら、生まれ変わることはできません。新しいホテルや旅館は、いくらでも建てられる。でも、宝来家旅館は、二度と建てられません。副編集長の人となりと行動力が大好きです。感性豊かで博愛な心をもつ女性です。誰かがひとりじめできるような人ではなくて、「みんなのもの」という存在感は、その名の通り、彼女が持つひろい心故なのでしょう。人一倍気を遣うのに、誰よりもおおらかで飛び回ることもできる。でも、肝心なことには、なかなか腰が重かったりもします。そんな副編集長が、ようやく、自分のベースキャンプのために、立ち上がりました。これは、佐伯のためになる。そう、確信できたのだと思います。となれば、全力で応援するしかありません。* * *「旅館は生き物です。一度、完全に死んでしまったら、生まれ変わることはできません。」この言葉が、私の背中を押し続けています。何度読んでも号泣です。林田さん、ありがとうございます。引き続き、応援よろしくお願いします。染矢弘子 もっと見る












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