自己紹介
株式会社Huuuu代表の徳谷柿次郎です。どこでも地元メディア『ジモコロ』や長野県総合移住メディア『SuuHaa』など、全国47都道府県を旅しながら、新しいローカルの動きに触れて掴んで、その現象に名前をつけて泥臭く発信するような編集を生業にしています。
自分自身がローカルの実践者になるべく、長野県に移り住んだのは約7年前のこと。拠点を長野市に据えて、一言では言い表せない謎のショップ『シンカイ』、地元のプレイヤーや移住者のクリエイターをかき集めたコミュニティオフィス『MADO』、若者の溜まり場を目指したスナック『夜風』など、目先の利益ではなく未来の関係値を優先したトントンビジネスを立ち上げてきました。
実際、肌感覚として利益はトントンです。自社オフィスを兼ね備えた『MADO』は会費によって維持費がほぼゼロ。水商売といえども国内の関係性のある良い酒にこだわった『夜風』は、会計時に「こんな安くていいの?」と言われるぐらいの客単価で「若い子が気軽に飲みに来れるならしょうがなし」と割り切っています。決して経営的に甘くはないし、地方都市の飲食店のむずかしさも同時に勉強している段階です。
それでも、やり続けたい。
なぜなら、「全国のローカル取材で生まれた利益は、自分が暮らすローカルに還元する!」と7年前に決めたからです。ただのかっこつけでもあるし、淡い罪悪感でもある。こればっかりは実体験した人にしか伝わらないと思いますが、これまで積み上げてきた取材対象者の人生の言葉を1〜2時間聞いただけで、世の中に「こういう人なんです」「この場所なんです」と切り取って伝えるおこがましい行為でもあるんです。その取材の連続でメシを食っている。法人を成り立たせている。だからローカルに、手の届く範囲に還元しています。
我々は取材対象者の名刺代わりとなるような質量ある記事づくりを目指しています。WEBメディアの利点は、たったひとつのURLで、どれだけ文章が長くとも5分以内で読み終えられること。さらにその情報がアーカイブされて、誰でも辿り着くことができる。結構すごいことなんですよね。
過不足なく、わかりやすく、おもしろく編集する……これが仕事の醍醐味であり、クライアントの代わりに現場で信頼関係を築くことの重要な役割だとも捉えています。例えるなら、時には山伏のように土地土地に移動しながら新しい価値や噂話を落としていく。
人と人をつなげてミツバチのように新たな視点を交換して受粉させることもあるかもしれません。数少ない貴重な働き方ができている自信もありつつ、一方的に何かを受け取る立場ではダメだなと思い至って、せめて生活圏内には取材で得た知識を実践していきたいと考えるようになりました。
オフィスは変わらず長野市ですが、住まいは野尻湖を擁する自然豊かな信濃町に移り住みました。通勤は約40分。車で考えごとをしたり、Podcastを聴いたりするのは最適な距離感です。
このまま新しいことをしなければ良いバランスで生きていけるんですが、自社出版の在庫、撤退したシンカイの在庫、フェス出店用の什器、全国で買い集めてしまう古道具やアンティークなど、収集癖の行き着く先として「おれの人生には倉庫が必要だ!」となったため、自宅から車で15分の飯綱町・牟礼の倉庫物件を借りてしまいました。
1フロア150平米の二階建て。倉庫としては広すぎるぐらいです。そこそこの規模の物流拠点として活用できそうなぐらい。当初はシェア倉庫としてみんなで活用すればおもしろいんじゃないかな?と思っていたんですが、1階入り口にある元タバコ屋の跡地を見て思いついちゃったんですよね。
「誰かこのタバコ屋跡地でコーヒースタンドやればいいんじゃない?」
いい感じになる画は見えたんです。全国どこにでもある少子高齢化と時代の変化を受けた町なので、成功するかはわかりません。それでも、自分が日々暮らす生活圏内として捉えたらアリな気がする。観光地としてのカフェはあるけれども、パッと車を停めてコーヒーを飲める場所はコンビニしかない。そもそも宿場町の旧北国街道としてインフラのポテンシャルはあって車は多いし、すぐ近くは数少ない人気の定食屋、飯綱町役場もある。牟礼駅からも歩いて行けないこともない。
長野市の町中だったけれど、車の停めれないシンカイよりもトラフィックがあるんじゃないか? これが民俗学的フィールドワークから導き出したひとつの仮説です。
聞けば飯綱町の人は集える場所が少ないし、仕事の打ち合わせは自宅に招くレベル。妙高・信濃町エリアの観光地に向かい人も立ち寄れる「途中」の立地でもあるし、地元目線でいえば牟礼と三水(市町村合併前の町)の「途中」でもあるし、自分目線でいえば長野市と信濃町の「途中」でもある。言うたら宿場町はあらゆるモノと人が行き交いする「途中」なんですよね。
「よっしゃ、とりあえずこの物件全体のプロジェクト名を『途中』にしよう!」
「そしてタバコ屋跡地は、プロジェクト第一弾としてコーヒースタンドにしちゃおう!」
「今度立ち上げる新たな自然循環の会社パカーンにひっかけて、パカーンコーヒースタンドにしたら一石二鳥やん」
これが私の脳内会議G7が導き出した答えです。できるかどうかは考えません。ないなら、つくる。いないなら、なれ。誰もせんかったら、やったったらええねん。
そう、思いつきは全部やったったらええねん。
2024年7月に思いついて物件契約を正式に進めて、たった3ヶ月の準備期間で工事がスタートしました。倉庫物件なので水回り含めて、プロの工務店に施工をお願いしました。設計はシンカイで出会った飯綱町出身の一級建築士・小松さん。そして不動産管理はツチクラ住建さん。本プロジェクトのメンバーでもあります。地元の人を巻き込まないと何事もうまくいかないので。
しかし、建築費・資材高騰の影響で想定予算よりも1.8倍ぐらいかかることが判明……。そりゃそうだ。トントンビジネスの最初の難関は予算配分ですが、一度も予算内におさまったことがありません。プロの見積もりは基本オッケーで受け止めて、足りないところは知恵と創意工夫、つまりDIYで補うしかない!!
・地獄の150平米ペンキ塗り
・地獄の150平米床接着剤剥がし
ボランティアを募りながら、来る日も来る日もペンキを塗って、床の接着剤をスクレーパーで削り続けました。設計士の小松さんいわく「技術よりも時間と体力が必要とされるこの作業こそ、DIYの効果があります。この広さのペンキ塗りと床削りは業者にお願いすると100万円以上かかるはずなので」と言われて俄然やる気が出ました。やればやるほど節約になる!
そして自らDIYでお店づくりに取り組むのは初体験で、人生で一度はやり抜くタスクだと考えていたからです。
真夏の作業は汗だく……。無理な体勢でのペンキ塗り、力任せのスクレーパー作業は肩と腰に負担がかかって、接骨院に行くたびに「なにがあったんですか!?」と言われるほどの疲れっぷり。休みなく、社長自らやる姿勢が大事!だって自分で思いついたから!
ちなみにランチやイベント使いを想定してキッチンスペースを設けました。あくまでコーヒースタンドが入り口なものの、複合施設として展開を考えたらコストはあがっても必須だと思ったんですよね。これも全国取材で培った知恵のひとつ。
みんなでご飯を食べるスペースは人が出入りしますし、私自身も家から15分で食事の選択肢が増えるのはありがたいので。いや、ほんとに田舎は選択肢が少ないんです。広域で捉えてもシェアキッチンスペースはほぼない気がする。
このプロジェクトで実現したいこと
いきなり編集の会社がコーヒースタンドをやると言っても、プロの監修がなければ成り立ちません。自前で焙をやるわけでもなく、あくまで地域に必要な”機能の表現”だと考えています。
頼れる人は山ほど頭に浮かぶんですが、設計士の小松さんと京都のコーヒーショップ視察をしたときに、Huuuuと似たような編集の会社マガザンの岩崎さんとたまたま話せることに。彼も京都で『CORNER MIX』というカフェを経営していて、そこのコーヒーを監修しているsosoguの平井さんをたまたま紹介してもらいました。
事前アポなし。岩崎さんと話せたのも偶然、その日たまたま打ち合わせでお店に来た平井さんと出会えたのも偶然。平井さんの夢が野尻湖でバス釣りをしたいことなのも偶然。平井さんの両親が長野好きで、小さいときからスノボに連れて行かれてたのも偶然。つまり、すべては必然。あれよあれよという間に、平井さんにパカーンコーヒーのディレクションをお願いすることになりました。
全国行脚をしながら「こんなことやりたいんですよ」とあちこちで話してたら、なんか引き寄せられるんですよね。これが編集の魔法かもしれません。
元々考えていたコンセプトは「クイックコーヒー」。注文してからハンドドリップで提供するのではなく、客の流れを見ながら先に淹れてポットに保存、アイスコーヒーも冷蔵保存しておいて、注文後にすぐ飲めるコーヒースタンドが理想でした。
その理由は車移動の文化圏では、朝も夕方も用事に追われて忙しいから。前述の通りカフェ的なコーヒーを飲めるポイントはあるものの、ゆっくり過ごしてる余暇がない。
悲しい現代人の性は田舎暮らしも同様で、私の場合は家に帰ったら後片付け、犬の散歩、料理の準備と積み上げたタスクが山盛りで、いつだって暮らしは崩壊寸前……30分でも余裕があれば草刈りや除雪に時間を割きたいものです。
それに自宅の環境が自然豊かでリラックスできる空間のため、自分でコーヒーを淹れた方が早い。ただし、人が集まっていてそこに付加価値があれば軽く立ち寄りたい気持ちはあるんですよね。実体験に基づいた生活圏内の機能美こそ、クイックコーヒーなんです。ライバルはコンビニコーヒー。元タバコ屋なので嗜好品としてタバコを取り扱えば、地元の現場通いのおっちゃんや農作業の合間に立ち寄って雑談できる場所になれば完璧です。
また、物件の機能として駐車場をしっかり確保していて、車を5台停められるのは強みです。長野に移り住んでから、駐車場スペースが確保されているお店に気づいたら運ばれてる感覚は侮れません。イオンを作れば人が集まるのも納得。少し離れたパーキングに停めることの心理的抵抗感は、田舎暮らしの性なのかもしれません。町中の良いカフェほど車が停めづらかったりするからなぁ。近隣でも安く駐車場も確保できそうなのも、コーヒースタンドに踏み切った理由でもあります。
その上でコーヒー豆の産地は記載しません。「ホット」or「アイス」。カフェオレやハーブティーなんかも提供したいと思っていますが、地元のじいちゃんばあちゃんでも楽しめるコーヒースタンドが理想。
その上でsosoguの平井さんによるおいしいコーヒーをしっかり提供できたら、まだまだコンビニコーヒーやネスカフェゴールドブレンドが根強い地域でも「お、このコーヒーなんかおいしいな」の感情が伝播するんじゃないかなと。以下、平井さんのパカーンコーヒーブレンドの解説です。
「PAKAAN COFFEE STANDオリジナルブレンドはホンジュラスとブラジルのコーヒーをそれぞれ焙煎し中深煎りで仕上げました。味わいは酸味も苦味も控えめで、バランスや後味のキレを重視したブレンドです。
長野県飯綱町で提供していただくにあたり、はっきりとしたと特徴があり派手なコーヒーというよりも、コーヒー本来の味わいを見つめ極力シンプルな味わいが良いと思いました。お店やご自宅で飲んでいただいてもコーヒーを通じて心潤うような体験をお届けさせていただければ幸いです」
フードは、お仕事をしている「いろは堂(OYAKI FARM)」のおやきを提供。少し小腹が空いたときや甘いものが食べたいシチュエーションとコーヒーは、飲食店の選択肢が少ない土地だからこそ不可欠です。焼き菓子も取り扱います。
あと、いわゆる商談ができるようなスペースも圏内に存在しないため、おいしいコーヒーを飲みながら商談できるようなスペースを設ける予定です。秘密の話があまりできない田舎町……オプションの時間貸しでやってもおもしろそう。物件が大きいので思いついたことをいくらでも形にできるのは、脳みそ取っ散らかし人間には最適すぎます。
最後に
本プロジェクトは倉庫物件の再活用です。結果的に飯綱町がおもしろくなる自信しかありませんが、あくまで”自分がやりたいことをやるため”に新たなリスクと面倒を負うことにしました。
社会や大人の役割は、ポジティブに面倒を負うことから始まるんじゃないかと最近考えていて、自分の足元から湧き上がるようなエネルギーをDoする。口だけ出さず、手を出す金を出す。
ドランゴンボールの元気玉みたいに両手を空に掲げたら、「なんかまたおもしろいことやってんな」ってなるんですよね。そこに新たなエネルギーが集まる。結果、まちづくりみたいなことになる。今回はそういう衝動だけで立ち上げました。
今後、考えられる動きとしては…
①シェアキッチンの活用で食を通した賑わいが生まれる
②イベントスペースとして人や物の行き来が元宿場町として復活する
③プロジェクトメンバーのオフィスや雀荘、スタジオができる
④2階の個室スペースを誰かに貸し出して新たな事業が生まれる
⑤2階のだだっぴろいスペースをギャラリーとして展開する
⑥パカーン文脈で薪割りを通したエネルギー活用、薪ストーブを導入する
⑦ZINE専門書店、クラフトに特化した酒屋ができる(かも)
⑧物件情報、工務店、設計士が集うので移住者が増える
⑨町にどんどん新しいお店が増える!最高!!!!!
などなど、全国で取材してきた物語をこの土地にあてはめたら、どんどん夢が膨らみます。築120年の古民家でやれることが限られていたシンカイと比べたら自由度がぜんぜん違う。つまり、このプロジェクトはシンカイDXと言ってもいいかもしれません。
久しぶりのクラウドファンディングの挑戦ですが、面白そうだと思ったらぜひシェアしてください。まずは知ってもらうことが第一で、支援に関してはオープンしてから現地でも構いません。今回集めた資金はもちろん運営費用、寒すぎる冬対策の薪ストーブ導入費用にさせていただきたいんですが、みんなの限られた元気を分けてほしい気持ちです!
Huuuuが、パカーンが、徳谷柿次郎が、また勢いで何か始めたこのトントンビジネスの門出にぜひご協力ください。加賀、佐渡の金山⇔江戸を繋いだ牟礼宿場町の歴史が持つポテンシャルに新たな道をつくりたいと思います。
みなさん、どうぞパカーンコーヒーのことをよろしくお願いします!
最新の活動報告
もっと見るおかげさまで無事、クラファン成功で終えることができました!
2024/12/02 15:11パカーンコーヒースタンド代表の徳谷柿次郎です。みなさまのアツいご支援のおかげで無事クラファン終了しました。おかげさまで目標金額を大きく超える金額が集まりました。改めてありがとうございます。ここからがクラファン本番です。お礼と共にリターン品をもれなく発送したり、リアルイベント開催やハンドドリップ講習など、皆さんのご都合をお聞きしつつ、ひとつひとつ丁寧に大胆におもしろくやっていきたいと思っています。長野県外からのご支援も多かったので、冬はスキーやスノボ、春以降は長野の気持ちよさが全開になるので、みなさんの良きタイミングでパカーンコーヒースタンドに立ち寄ってもらえたら嬉しいです。すでに飯綱町広域のスポットとして地域住民、まわりのプレイヤーの方々が顔を出してくれていて「こんな場所が欲しかった!こんなことをやってみたい!」と誰かのやりたいことを実現できる空間として動きつつあります。あくまでコーヒースタンドは玄関口。コーヒーはコミュニケーションのきっかけに過ぎません。それでも1650年にイギリスで生まれた「コーヒーハウス」の文化が、近代にもたらした影響もまたはかりしれません。--イギリスのコーヒーハウスは、17世紀半ばから18世紀にかけて流行した社交場兼喫茶店で、社会に大きな影響を与えました。1650年、オックスフォードにイギリス初のコーヒーハウスが開業し、1652年にはロンドンにも登場しました2。王政復古と1666年のロンドン大火を経て、コーヒーハウスは急速に増加しました。●社会的役割・情報交換の場:新聞や雑誌を読み、政治談議や世間話を楽しむ場所となりました。・民主主義の基盤:世論形成の重要な空間となり、イギリス民主主義の基盤としても機能しました。・階層を超えた交流:社会階層の秩序が緩み、共通の関心事について階層を越えた集団を形成する場となりました。・ビジネスの発展:ロイズ・コーヒー・ハウスは船舶保険業務を取り扱い、後のロイズ保険会社の起源となりました。--ここからパカーンコーヒースタンドきっかけで何が生まれていくのか? 少なくとも誰かの役割とリアクションを作り続けることは間違いありません。まだまだ経営的にも厳しい初期段階ですが、ご支援いただいたお金を活用して、真冬の寒さ対策(いままさに工事中!)をしていきたいと思います。また追ってご報告させていただきます。どうぞ、これからも力強く、関心をもって応援してください。 もっと見る
無事店舗がオープンしました!
2024/11/25 15:4710月19日に無事にPAKAAN COFFEE STANDをオープンすることが出来ました。夏からみんなでコツコツと作業してきた倉庫が、コーヒー屋らしく?!人が集まれる場所になりました!プレオープンに引き続きオープン日には、地元の方をはじめ友人仲間たちと、たくさんの方にお越しいただきまして本当にありがとうございました!20年ぶりに開いたシャッターの前で町長をお呼びしてのテープカット。お集まり頂いた皆様に見守られながら、一緒にお祝いできたことがとても嬉しかったです!連日、多くの人に寄っていただき嬉しい限り。クイックにうまいコーヒーが買える、テイクアウトメインのコーヒースタンドなので滞在時間はわずかですが一言二言のコミュニケーションを楽しませていただいている日々です。ひとまずオープンはできたものの、キッチン周りや暖房器具などまだまだ揃えきれておらず…年内には倉庫部分も片付けていきたい…!ドリンクメニューやフードメニューも増やしていきたいしヴィーガン、アレルギー対応のお菓子も出していきたい…!!やりたいことはたくさんあるので一緒に動いてくれる方も募集してます〜!(文:店長 ユカ) もっと見る
コメント
もっと見る