ご覧いただきありがとうございます。
私からは、特に緊張したクランクイン前のおはなしをさせていただきます。
撮影初日、メイクのためスタジオへ入ると制服に身を包んだ細谷がいました。同じ高校に通っていたこともあり、見慣れない姿では無かったはずですが、私の知っている先輩細谷はそこにはありませんでした。役者の彼女が自分と同じ制服で目の前にいることがなんだか小っ恥ずかしいような、嬉しいような、妙な気持ちでした。
メイクしている時間は好きなミュージカルや地元のことをメイクさんを交えて話していましたが、心の内ではよく分からない的はずれな気負いを振り払うことに必死でした。
ロケ地へ車で移動し、そこから撮影までの間、ひとりで高校時代のことを少し思い出しました。学校から20分歩いたところに看板が錆びたコンビニがあったこと、そのコンビニでよく肉まんを買っていたこと、制服に合わせる靴下はふくらはぎに届かない長さがお洒落で、鞄は肩掛けがイケていたこと、日に焼けた肌がかっこよかった先輩のこと、女子バレー部のあだ名で呼び合う文化が妙に羨ましかったこと、通学路にある神社の階段でグリコをしたこと
えりかと過ごしたゆうこの高校時代が私の想像の中できちんと色をつけて、記憶になったような気がしました。
撮影の準備が整い、川沿いの道で傘をさして細谷と並びました。普段友人として会っている細谷と私から、物語のえりかとゆうこにふわっと変化しました。そこに明確な違いはありませんが、お互いにそれを感じたように思います。
カメラが回り始めたことに気付かないほど、穏やかに、いつもの私たち が 作品 になっていきます。
この作品の状況が、身近な生活の地続きにあると感じています。
是非、より多くの方にご覧いただけたらと思います。
写真は、高校時代と普段の私たち、そして、撮影時の私たちです。