外国人と共に育んだ洋風お惣菜
港町・神戸のトアロード沿いに佇む「トアロード デリカテッセン」。そのクラシカルなロゴマークを目にすると、まるで海外に迷い込んだかのような気分になります。このお店は1949年(昭和24年)、ノルウェーで出会ったハムやソーセージの味に魅了されたご夫婦が創業しました。
しかし、開業直後にご主人が急逝。その後、奥様の高橋コトさんが単身で店を守り続けることになります。居留地の外国人のお客さまから製法を教わり、試行錯誤を重ねた末に、現在まで続く「本物の味」を完成させました。
当時、日本ではまだ珍しかった西洋風の惣菜を提供する店として、瞬く間に人気を博し、1950年代にはトアロードの端まで行列ができるほどだったそうです。
店内に足を踏み入れると、ハム、ソーセージ、ウィンナー、スモークサーモン、チーズなど、約200種類ものオリジナル商品がずらりと並んでいます。一つひとつが丁寧に作られたこれらのアイテムは、どれも「今夜のおかずにぴったり」。贈答用のセットもありますが、ほとんどの商品が家庭用に販売されており、地元の人々が足しげく通う光景さえ、この店の名物とも言えるでしょう。
村上春樹も愛したデリカテッセンの魅力
お店の2階には、人気商品を使った料理を楽しめるカフェが併設されています。著名人にもファンが多く、村上春樹氏や司馬遼太郎氏、田辺聖子氏など、関西を代表する作家たちにも愛されてきました。村上春樹氏の『ダンス・ダンス・ダンス』では、「理想のサンドイッチ」としてこの店の名前が登場するほどです。
個人的におすすめなのは、スモークサーモン、ローストビーフ、ハム、ソーセージを贅沢に挟み込んだミックスサンド。このほかにランチプレートでは、神戸の洋食を支えたさまざまなお惣菜が楽しめますよ。
神戸の食文化とともに
創業者の高橋コトさんは、同じく神戸を代表する子供服メーカー「ファミリア」や、先にご紹介した「にしむら珈琲店」の創業者とも親交が深く、人望が厚い方だったそうです。彼女の努力と情熱が育てたこのお店は、ただのデリカテッセンではなく、神戸の食文化を代表する存在となりました。
トアロードという名前の由来は、1868年の神戸開港時に整備された道路で、旧居留地と山手を南北につなぐ通りのこと。この歴史ある通りにふさわしい青いテントの「トアロード デリカテッセン」は、神戸のハイカラ文化を象徴する存在として、いまもこうべっこに親しまれています。
ぜひ神戸を訪れた際には、西洋と日本の食文化を融合させようと奮闘した高橋さんの思いも味わってくださいね!
トアロードデリカテッセン http://tor-road-delica.com/




