NPO副理事長の鳥居勝幸と申します。わたしたちは営業職・販売職の人々を応援するために、10年以上前から千葉柏、秋田横手、島根松江、愛媛松山、高知、軽井沢など、日本各地でボランティア営業セミナーを行ってきました。その名の通り「ワクワク営業しましょう! その方が楽しいし業績も上がるんです!」というセミナーです。また専門学校ではアジア各国の留学生に営業マネジメントを体感してもらう講座を持ち、日本における営業の考え方を教えています。それ以外に「何か営業職・販売職の皆さんにお役に立つ方法はないものか」と思ってやり始めたのがこの漫画製作「The Sales Ways」です。ぜひ読んで頂きおもしろかったら「いいね」をください。そしてもし共感して頂けるのならお気持ちのご寄付をお願いします。皆様のあたたかい応援が私たちのモチベーション。その思いを続編に乗せて、全国の営業パーソンにお届けしたいと思っています!
原作者が、京都の地で飛び込み営業を行っている時に、気づいたことを紹介します。漫画では、大山先輩が発する言葉の土台になった出来事に当たります。大山先輩もこのような経験をしたから関根君にアドバイスできたのでしょう。飛び込み営業は、ひたすら断わられることを繰り返す仕事です。でも、たくさん断られる先にいい話に出会います。多分100件に1,2件という確率でしょうか。5,60件訪問すると、そろそろいい話があるかなという希望が出て、頑張るといった具合です。営業パーソンは、その少ない出会いを求めて断りに耐えているわけです。よく言う「犬棒セールス」(犬も歩けば棒に当たる)と言うやつです。コールセンターからアウトバウンドの架電(電話をかけること)を行うインサイドセールスの方も同じ心境かもしれませんね。当時は、テリトリー(担当地域)があって、そこにはたくさん(多分数百社)の企業がありましたので、行く先に困ることはありませんでした。偶然の出会いを求めて、断られる訪問を続けていたわけです。さて、ある時、会社の方針が変わり、今までより少し規模の大きな企業だけを対象とするようになりました。自分の担当先は約100社ほどです。企業規模が大きくなったので、自分も偉くなったような錯覚を持ちましたが、いざ回ってみると、今までより企業側のガードは固く、いい話は全くありません。2日間で全ての対象先を訪問し、まともな面談はゼロという状況です。これは困りました。この状況で、京都の四条大宮(京都の中心街より500mほど西に行ったところ)を、ボーっと歩いた時でした。「どうしてこんなに辛いんだろう。お客さんは『来るな、迷惑だ』と言う。会社では、『売れないセールス』と罵られる。俺は京都くんだりまで来て、なんでこんなことをしているんだろう」と考えていた時です。突然、自分の頭の中で、先ほど自分が飛び込み営業をしていたシーンが浮かんできたのです。自分を上から眺めている感じです。先ほど訪問した企業の総務の担当者が、「お宅には用がないから」と言って私を追い返しています。このシーンを思い浮かべながら、私は呟きました。「そりゃそうだよなー。勝手に訪問してきて、複写機を売りにこられても迷惑だよな」恥ずかしながら、今までずっと売る側からお客様を見ていましたが、初めてお客様の側から自分を眺めることができた瞬間でした。「もう売るの、やめようか。どうせ売れないんだから、一緒だ。それじゃ何するかな? お客さんの役に立つ情報を届けるだけにするか」との考えが沸き起こってきたのです。自分の行動が変わった瞬間です。後年心理学を学んで、このように自分を客観視することを「メタ認知」であるということを学びました。このメタ認知から始まった行動変容は、大きな変化をもたらしました。お客様に役立つ情報(付近のランチマップ・お客様の業界が掲載された記事・用紙の湿気対策などのお役立ち情報)を届けに行くという訪問に変えたのです。この訪問を何度か繰り返すと、お客様の担当者が声をかけてくれるようになり、訪問自体が苦痛でなくなりました。お客様と話す内容も、売り込みではなく、お客様の業務のことになり、その地域に多い呉服関連の業務も少しわかってきました。そうすると自分でも勉強しだします。呉服や帯が作られる工程がわかってくると、お客様と話す内容も変わってきて、複写機を提案するネタも見えてきます。お客様もこちらが来るのを待っていてくれるようになりました。「売るのはやめた」と決めてましたが、自然と提案するようになり、売れるようになってきました。こうなると結構楽しくなってきて、営業という職種が好きになってきました。不思議ですね。あの時のメタ認知から全てが始まったのです。行き詰まっていたからこそメタ認知ができたのでしょうか。皆さんも、何かに行き詰まった時、一旦立ち止まってメタ認知してみませんか。何かが見えてくるかもしれません。NPO法人ワクワク営業応援団 理事長 渡邊茂一郎
漫画で登場した損保の代理店の岩田専務(仮名)との久しぶりの歓談でのお話を紹介します。損保代理店から独立されて自分で損保代理店を経営され、息子さんが後を継いだことは聞いていました。「京都に来たら、連絡してな」と常々言われてましたので、旅先から電話してみたところ、ちょうど仕事の終わりだったため、喫茶店でお茶を飲みながら1時間ほど昔話も含め色々と話しました。気さくな人柄は相変わらずで、楽しいひと時を過ごしました。私はもう引退されているものと思い込んでいましたが、まだまだ現役でばりばり仕事されていました。さて、話すうちに、営業の話になり、岩田さんから面白い話を伺いました。今も本人自ら新規開拓の飛び込み営業をしていると言うのです。これには驚きました。まずは、今の時代に古希間近の方が飛び込み営業なんてできるものだろうかと、疑ったわけですが、根掘り葉掘り聞いてみると本当でした。ご本人から「飛び込み営業は、勉強になるわー」と言われて、思わず「どんなふうに飛び込むのですか」と尋ねました。「飛び込んで、社長に会いたいと伝えるとまずは断られる。これは当たり前。その上で、何か社長に役立ちそうな情報を置いて帰る。年配者が多いから、健康や病院に関する情報が喜ばれる。これを何回か繰り返すと、必ず会ってくれるようになる。会ってくれても保険の話はせず、役に立つ情報を提供し続ける。その内先方から保険の話も聞いてきてくれる。全てではないが、結構商売になる。また商売にならなくても構わない。お客様の話を聞くことで自分の勉強にはなるのだから」。このような話でした。飛び込みの対象先は地場の中小企業ですので、比較的ガードはゆるいのかもしれません。また岩田さんは京都の地元の方で、あちこちの取引先から様々な情報が入るため、ネットに比べて裏付けのある情報をお持ちです。これも相手先に喜ばれるのでしょう。このお話を聞いて、改めて営業の原点を思い起こしました。営業とは、商品を売り込むのではなく、お客様のお役に立つことからスタートするのだと。私たちは、何かのアクションをするとすぐリターンを求めたくなります。しかし、リターンを求めない行動の方が、人の心には響くのでしょう。お客様へのお役立ちを続けることで、何かのきっかけでお客様は「この人に一度相談して見よう」と思い至るのだと思います。もう一つ大切なことは、岩田さんが、飛び込み営業を楽しんでいることです。「飛び込み営業は、勉強になるわー」の言葉が象徴的に表しています。「お役立ちする。お客様から学ぶ」、この2つを自らに言い聞かせて、新規開拓に臨むことで、誰もが嫌がる飛び込み営業ですら楽しむことができ、結果として成果につながるのでしょう。現在では、飛び込み営業というやり方は、行われないことが多いですが、この考え方は通常の商談の中でも活用できませんか。「今日はどのようなお役立ちをしようか」、「今日はお客様からどのようなことが学ベるだろうか」この2つを自らに問いかけながら、お客様と面談することを楽しんでみませんか。ワクワク営業応援団 渡邊茂一郎
私は、1978年に当時の富士ゼロックスに新卒として入社し、6ヶ月の研修を経て京都営業所にセールスとして配属され、そこで悪戦苦闘しながら、営業パーソンとしての考え方・技術・知識を学んで成長してきました。後から、振り返るとその時の経験は自分にとって貴重なことであり、その後の自分の成長に大きく貢献してくれたものでした。しかし当時は、成績は全く上がらず、同期には置いてきぼりで、ただ苦しいばかり。毎日いつ辞めようかということばかり考えていました。なんとか思いとどまったのは、先輩・上司・同期の仲間と未熟な私を受け入れてくれたお客様のおかげでした。私は、たまたまそういう周囲の助けに恵まれましたが、そのような状況がなかったならば、早いうちに退職して、二度と営業・接客の世界には、立ち入らなかったのではないかと思います。しかし、営業や接客の世界は、実はとてもおもしろいのです。悩んでいる方にとっては、「えー、うそー」と思うかもしれませんね。でも、本当です。「営業マンは話し上手でズーズーしい人がうまくいく。真面目で話し下手な僕は向いていない」なんて思っていないですか。私も真面目で話し下手でした。学生時代を知る妻が「あなたが営業なんてできるなんて、考えもしなかった」と言っているくらいです。今でも記憶に残っているお客様の言葉は、京都言葉での「コピー1台買っただけやけど、これから一生の付き合いやで!」の一言です。そのお客様とは、一昨年お亡くなりになるまで、連絡が途絶えることなく、本当に一生の付き合いとなりました。京都にプライベートで旅行した時にもお会いしていました。漫画で登場した損保代理店の岩田専務(仮称)です。この他にもたくさんの出会い・気づき・おもしろさを、営業・接客という仕事はもたらしてくれました。この経験の中で、どの時代にも通用する変わらないことを抽出して、営業・接客で悩んでいる方たちに伝えていきたいと思っています。これから、その思い出を語っていきます。次回は、その岩田専務との一生の付き合いのお話です。




