市報よこて 2025年1月号を見ていると、タイムリーな記事が載っていました。新春対談【命を描く】絵画作家永沢碧衣さんと横手市長の対談、見開きカラーページ。今回のAIRとも関連する問題意識が永沢さんの言葉で語られておりましたので一部ご紹介します。本プロジェクトの中で、2月7日(金)に映画監督 山﨑樹一郎と絵画作家 永沢碧衣による公開対談を予定しています。当初、横手駅前Ao-naでの開催を考えておりましたが、もっと相応しい横手城下某所に会場変更となる予定ですのでお楽しみに!(マタギ文化との出会い)【永沢】熊が生きてきた背景に想いを馳せながら、彼らが生きていた証しを後世まで残すような気持ちで、最初の一枚を描きました。(個展で得られたこと)【市長】五城目町で個展を開催したと伺いました。【永沢】はい。町の方にも協力いただき、11カ所を会場に作品を展示しました。県外や海外から来た方もいて、町に宿泊し、ゆっくりと会場を巡り、作品や秋田を堪能していただいたと聞きました。【市長】当市でも開催したいと思っているんですよ。【永沢】普段は観光資源に乏しい地域でも、空き家や古民家を、その空間ごと作品にしているところがあります。アーティストが滞在し、公開制作をするなどパフォーマンスの場が充実するといいですね。【市長】横手にも空き家が千件以上あります。【永沢】空き家などで、芸術祭のような期間を設けて作品を展示する場があることで、年間を通して人が行き来します。また、空き家を地域で管理することで、地域の人たちの間に交流が生まれ、集いの場になったらいいなと。【市長】秘められた空間の中がギャラリーになるというのはいいですね(後略)(今後の展望)【永沢】自然や生命の根源、感動の正体に少しでも近づきたくて活動を続けています。いつでも戻ってこられる『心のふるさと』を軸に、幅を広げた活動を地域の方たちと一緒に表現できたら楽しくなるだろうなと思います。【市長】当市も皆さんの『心のふるさと』になるような田園都市を目指します。
前回の続きで、横手城下語り部が今回のアーティストインレジデンスに取り組む理由を記そうと思いましたが、年越し準備のため力尽きました。秋田県南で最大の年越し準備といえば、言わずと知れた雪下ろし。山内三又ほどではありませんが車庫&主屋の下屋を下ろしてました。下ろすだけならまだしも、排雪が厄介。今回のAIRでは、山﨑監督に三又共助組合の活動に同行願う予定。共助組合とは高齢化が進む集落で、住民が互助により家々の雪下ろしや排雪を助け合う組織です。三又地区は共助組織の先進地区かつ雪の量たるや写真の比ではありません。山﨑監督の雪下ろしデビューが見られるかも!
横手城下語り部の簗瀬と申します。本CFの中の人です(笑)横手城下語り部がなぜ?山﨑樹一郎監督のアーティスト・イン・レジデンスに取り組むのか、そこらへんの話題から入りたいと思います。【あきた十文字映画祭】というローカルな地方映画祭をご存知な方は少なくないと思います。1992年から30年以上にわたって秋田県南の十文字町(現横手市十文字町)で続く映画上映運動体です。今年2024年5月に、岡山県津山市の城東重要伝統的建造物群保存地区の伝統的建造物のミニシアター城東津山シネマにて、あきた十文字映画祭がプロデュースした出前上映会が催されました。そこで上映された作品のひとつが山﨑樹一郎監督作品『新しき民』(2014年)。津山藩で起きた山中一揆をモチーフに、農民治兵衛の姿を通じて「弱さを引き受けること」「逃げることによって開ける未来」を描いた時代劇でした。山﨑監督最新作『やまぶき』を外し、あえて『新しき民』をチョイス、しかも主人公治兵衛が憎むべき武士のまち・津山藩お膝元の津山城下の核心部(重伝建エリア)でやることの意味。映画『新しき民』は津山のお隣・真庭の山中(さんちゅう)と呼ばれる地の民の視点を通して、社会を描いた作品でした。山﨑樹一郎さんが暮らす真庭の山間(やまま)にかつて生きた名もなき人々を描きつつ、今の社会を描いていたのです。第4回大島渚賞(山﨑樹一郎監督が受賞)で黒沢清監督が語った審査総評「社会というものは、人間ほど簡単には描くことができない」という言葉。土着の人間を描きながら社会やその社会に張り付いているものを描くのが山﨑監督の真骨頂です。「津山城下」という都市のモチーフ?から炙り出される土着の生が映画『新しき民』だとすれば、本当に描かれるべきは津山藩を構成していた土着の民の生であり、城下町という偶像を構成する民ひとりひとりにスポットを当てることで、現代にまで通じる「土着の生」を描いたのが他ならぬ『新しき民』でした。当団体が「横手城下語り部」と名乗っているのは、実はそうゆう城下町の偶像を構成する市井の存在にスポットを当てたいからに他なりません。今回のアーティスト・イン・レジデンスでは、山﨑監督があきた十文字映画祭に登壇し、最新作『やまぶき』を上映する!ということも含まれています。『やまぶき』は『新しき民』の後日譚なのではないかと個人的には思っています。真相は本プロジェクトの中で監督に直接ぶつけてみたいと思います。(つづく)