\皆様のご意見を受けてサイトをリニューアルしました/
2020年7月、熊本県人吉市を襲った豪雨。
茶色い濁流が新温泉をのみ込み、屋根まで達しました。
内部は泥で埋め尽くされ、番台も浴槽も見えなくなり、
まちを見守ってきた90年の歴史が一瞬で奪われました。
それでも建物は奇跡的に外形をとどめ、今も静かに建ち続けています。
だからこそ、90年の歴史をもつこの温泉を被災の記憶を伝える「水災メモリアル」として未来に残すために、まずは象徴である番台の復原から、地域の未来への第一歩を踏み出します。
写真提供:永見明子
自己紹介と新温泉への思い
はじめまして。プロジェクト運営:捌水塾(はすいじゅく)代表の奥羽未来(おくばみく)です。
(捌水塾と運営体制については後半部分にて説明しております)
建築・都市計画を専攻する大学院生で、現在はカンボジアで住民参加型の空間管理(道の修理作業)について研究を行っています。
学生時代を過ごした熊本南部が令和2年7月豪雨で甚大な被害を受けたとき、私は遠く長野で映像を見て愕然としていました。
現地を訪れ、被災した新温泉に出会い、地域とつながる多くのご縁をいただきました。
その出会いが、今の私の活動の原点です。
大学4年次の卒業設計では、新温泉を中心に据え、
人吉市全体の復興まちづくりを提案しました。
新温泉について
新温泉は、現在の千葉県君津市小糸・小櫃で明治中期に確立し、国指定重要無形民俗文化財にも認定されている深井戸掘削技術の「上総(かずさ)掘り」という技法で掘削されました。
新温泉を含む人吉温泉は、明治、大正を経て多くの人々の尽力により盛況となりましたが、大自然の力や大きな時代の流れで苦労した時代もありました。
球磨川は恵みを与えてくれる存在であると同時に、古くから「暴れ川」として畏れられる存在でもありました。新温泉も開業以来、台風や豪雨による水害で被災するとともに、その記憶を今に留めています。
温泉の壁には2代目の永見八郎が過去の水害の水位を記したプレートが並びます。

被災状況について
2020年7月4日未明。
熊本県人吉市に降り続いた豪雨は、ついに球磨川支流・山田川の堤防を決壊させました。
茶色い濁流は一気に紺屋町を飲み込み、新温泉も瞬く間に泥流の中に沈みました。

水位は昭和40年の「7.3大水害」をも上回り、ついに屋根まで達しました。
これまでの水害はゆるやかな浸水が多く、オーナーも自宅2階へ物品を運ぶ余裕がありました。
しかし、この日は違いました。
駐車場に渦を巻く濁流を前に、身ひとつで母屋の2階に逃げるしかありませんでした。
水が引いた後に残ったのは、変わり果てた新温泉の姿。
内部は泥に覆われ、泉源もボイラーも被害を受け、 すぐに営業を再開することは到底できませんでした。

90年にわたり地域を見守ってきた番台は、原型をとどめることなく濁流によって破壊されてしまいました。
プロジェクトに至った経緯
被災から1年後の2021年7月、人吉市と熊本県との意見交換会が開かれました。
市の担当者からは次のような話がありました。
中心市街地や各地区で懇談会を行ったところ、「新温泉を中心にまちづくりを進めてほしい」という住民の声が挙がっている
新温泉は人吉市にとって価値のある建物であり、「所有者にもぜひ残す方向で考えてほしい」
市としても新温泉の価値を十分に認識しており、
復興まちづくりの中での活用方法や建築物としての位置づけを検討する方針が示されました。
同時に、所有者と相談を重ねながら、地域にとって最良の方向性を見出したいとの意向もありました。
しかし、建物を存続させるには修理工事が必要です。
新温泉は旅館やホテルのように営業収入で修繕費を回収できる施設ではなく、
私費だけで修理と維持を続けることは現実的に困難です。
そのため、社会的な支援が不可欠だと私たちは考えています。
こうした経緯を経て、新温泉は2023年に国登録有形文化財に認定されました。

今後は有識者や新温泉を愛してくださる皆さまと共に、
「残し方」「活用方法」「維持に必要な支援の形」を検討していきます。
私たちCF新温泉プロジェクトチーム(捌水塾の塾生を中心とするメンバー)も、
永見さんや地域の方々との対話を通じて強く感じました。
新温泉は、地域に愛されてきた人々の居場所であり、必ず再生させなければならない。
数々の水害を乗り越えてきた新温泉だからこそ、ここでしかできないことがある。
そう確信し、永見さんや関わってきた皆さまと共に、
新温泉の再生に向けたクラウドファンディングを立ち上げました。

プロジェクトの意義と目指す姿
新温泉の再生は、ただ建物を直すだけではありません。
このプロジェクトには、3つの大きな意味があります。

1.当事者意識を育てる
令和2年7月豪雨で甚大な被害を受けた人吉市と球磨川流域。
被災範囲は限られており、同じ人吉に住んでいても、水害を「自分ごと」として感じられない方もいました。
新温泉を通して水害の記憶を伝えることで、
地域の人も、外から訪れた人も、災害に向き合う当事者としての意識を持てるようにしたい。
再び水害が訪れても、地域が自ら備えられる力を育てたいと考えています。
2.地域の人々に寄り添う場を残す
新温泉は、長い年月をかけて人と人、まちと人をつなげてきた場所です。
私たちは、単に建物を残すだけでなく、使われ続けることで心に残る建物にしたいと思っています。
「もう一度、公衆温泉として復活してほしい」という声も多く寄せられます。
しかし、幾度の水害を乗り越えた新温泉だからこそ、
「水災メモリアル」として水害の記憶を発信し続ける責務があると考えています。
3.新しい復興まちづくりの形を示す
災害から5年、人吉市は少しずつ復興の歩みを進めています。
けれども、全国で災害が頻発する今、画一的な再整備だけでは地域は蘇りません。
新温泉は、人吉のアイデンティティそのもの。
その再生を通して、住民の思いや地域性を活かした復興まちづくりの新しい形を示したいと考えています。
将来の利活用イメージ
Q. 誰が利用するの?
地域の人々や学生を中心に、幅広く利用を想定しています
もちろん、地域外から訪れる方の利用も大歓迎です!
Q. どう利活用するの?
劇場のように、用途を自由に変えられる柔軟な空間にします。
利用する人々と共に成長し、最終的には地域の共有資源(コモンズ)に育てます。
【具体的な活用例】
・復興活動に携わる人々の拠点
・地元クリエイターの展示・交流スペース
・学生のミーティングや学びの場
また、修復中も建物を眠らせません。
大工・左官・指物師などの職人を目指す学生が学びの教材として現場を活用することを想定しています。
こうして、多世代が関わりながら、次世代に希望を手渡せる場を育てます。
資金の使い道(目標360万円)
・番台復原工事費(番台復原の材料費・制作費:建物の軽微修繕※)
※資金調達の度合いに応じて、出入口のドアや傷んだ窓の修繕、屋根修復・内部改修も実施します。また、作業工程は改修ワークショップ・イベントに展開することも予定しております。
・返礼品および発送料
・CAMPFIRE手数料(支援総額の12%)
皆さまの支援を一円も無駄にせず使います。
なお、新温泉の改修の方法を示す図面はすでに完成しています。
「番台」については、昔の資料をもとに復原図の作成を進めております。
返礼品一覧(詳細はサイト内に別途掲載)
金額 内容
500円 お礼メール
1,000円 お礼メール + 活動報告書
3,000円 上記 + 泥染めはがき
10,000円 上記 + オリジナル和手ぬぐい
30,000円 上記 + 球磨焼酎(銘柄選択)
50,000円 上記 + 銘板にお名前掲示
100,000円 上記 + 人吉球磨産新米10kg
200,000円 上記 + 人吉球磨産新米20kg
実施スケジュール(目安)
2025年7月上旬 クラウドファンディング開始
2025年9月末 クラウドファンディング終了
2025年11月 番台復原作業着手(参加型イベントも検討)
2026年春~初夏 返礼品発送/お披露目予定
最後に
「新温泉の再生」は、地域に灯をともす挑戦です。
ここが、未来の人吉を支える拠点になり、
学生たちの学びと成長の場になり、
そして、災害からの復興の象徴「水災メモリアル」となる。
その実現に向けて、皆様のお力をぜひお貸しください!
*チーム紹介と運営体制
*新温泉三代目オーナー:永見明子
*CF新温泉メンバー(捌水塾)
奥羽、高木、小出、野田、上田
*地域住民・有識者・ボランティアのみなさん
■運営主体「捌水塾」について
新温泉は、これまで日本の学生の卒業設計や海外の研究者による研究論文のテーマとしても取り上げられてきました。
永見さんや専門家、建築系の学生たち、大工や石工などの実務者も参加した捌水塾の一連の設計・研究活動は、プロジェクトメンバーである学生によって一つの提案としてまとめられ、令和4年3月に現地での総括・公開展示を通して地域住民の方や有識者によるディスカッションを行いました。

本サイトの文章の一部は、新温泉の公式ウェブサイトの文章を加筆・修正したものです。
【新温泉公式サイト】https://shinonsen.jp/
参考資料
・昭和六年陸軍特別大演習並地方行幸熊本県記録 熊本県(1934年(昭和9年)発行)
・九州の観光 第七巻六十八号 九州旅館連合会・観光の九州社(1934年(昭和9年)発行)
・上総掘り 深井戸掘削の技術(2011年(平成23年)10月12日発行) 君津市立久留里城址資料館
・千葉県:上総掘りの技術
・熊本県:球磨村紹介
・広報ひとよし No. 990(2013年(平成25年)7月号) 人吉市
・第16回 ふるさと探訪 深田銅山(2016年11月11日) あさぎり町中部ふるさと会
・球磨川下りに見る観光人吉の歴史 一般社団法人青井の杜外苑街作り協会(2021年(令和3年)2月13日発行)
・人吉のあゆみ(明治時代以降) 一般社団法人青井の杜外苑街作り協会
最新の活動報告
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残り7日!永見さんの現在の思い
2025/09/13 22:44新温泉プロジェクトをご支援いただき、心より感謝申し上げます。おかげさまで現在 122名の方からご支援をいただき、総額は 120万円 を突破 いたしました!プロジェクト終了まで 残り 7日 となりました。目標の 360万円 に向けて、最後の応援をお願い致します!また、新温泉三代目(建物所有者)の永見明子さんが、新温泉への思いを語って下さいました。動画の中では、豪雨直後の記憶や地域との歩み、そして豪雨から5年経過した現在の思いをお話しされています。ぜひご覧いただき、新温泉が地域にとってどんな存在であったのか、そして未来に託された希望を感じ取っていただければ幸いです。 制作者:株式会社じぶんメディアを準備中の大窪孝浩様そして、よろしければ ご家族やご友人など、周りの方々にもシェアしていただけると幸いです!残り7日、引き続きのご支援・応援をどうぞよろしくお願いいたします。 もっと見る
捌水塾(はすいじゅく)って何?
2025/07/18 12:00■お礼まずは、プロジェクトを支援していただきありがとうございます!支援金金額が70万円を突破しました!皆様のおかげです。温かいお言葉、応援が、新温泉再生への大きな励みとなっております。そして、目標の360万円に向けてまだまだ頑張っていきます!水災メモリアルとしての新温泉の再生にご支援よろしくお願いします。■捌水塾について今回、皆さまにご支援いただいた「新温泉クラウドファンディング」は、「捌水塾(はすいじゅく)」が運営を行っています。ところで、「捌水塾」とは一体何なのか、ご存じでしょうか?今回は、その「捌水塾」について、ご紹介させていただきます。「塾」と聞くと、一般的には子供向けの学習塾を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際、人吉で活動しているとき、近隣の方々から「勉強ば教えてくれるとね?子供を習わせたいんだけど」と尋ねられることもしばしばありました。間違いではありません。しかし、捌水塾では「水捌けの良い家や、水捌けの良い町や村」を作る技術(知恵)を学ぶ学習活動を行っています。「捌水塾」→捌水→水捌→水捌け(みずはけ)というのが由来で「捌水塾」は誕生しました。属するもの皆が塾生!先生は、大工の棟梁や石工、米農家のおじさんなどの実務者、時には球磨川を泳ぐ魚たち!令和2年7月に発生した豪雨災害後から新温泉を含む球磨川流域、トンレサップおよびメコン川流域(カンボジア)を対象として学生を中心に設計・研究活動を行ってきました。令和3年度は、新温泉と同じ紺屋町にある築94年の木造住宅兼酒造場である「渕田酒造場」を活動拠点としていました。 活動拠点:渕田酒造場■これまでの活動令和2年 9月 人吉市紺屋町にある新温泉とその界隈を調査し模型を制作人吉市街地模型 1/40令和3年 8月 捌水塾講座&実技講習〈水を捌く建築技法を問う〉 開催 9月 出張捌水塾 in大柿地区(稲刈りに参加) 令和4年 2月 出張捌水塾 in 甲佐 3月 捌水塾中間報告会 捌水塾卒業制作展捌水塾卒業制作展で発表する塾生 令和5年 9月 紅河(ベトナム)・メコン川(カンボジア)フィールドワーク令和6年 8月 ・11月 メコン川、トンレサップ川(カンボジア)フィールドワーク村長にヒアリング調査する塾生たち in カンボジア令和7年 現在 新温泉クラウドファンディング令和3年度は、一般財団法人ハウジングアンドコミュニティ財団の2021年度住まいとコミュニティ活動助成、令和5年度は、前田工学記念振興財団の海外グループ助成に選ばれ活動してきています。以上の活動の中で私たちは、水を「防ぐ」のではなく、水を「捌く(さばく)」建築技法を磨き続けています。支援頂いた皆様には、【 捌水塾の活動をまとめたご報告書】を送らせていただきます。新温泉の再生や歴史的建築の利活用、カンボジアでのフィールドワークなど、人吉とカンボジアをつなぐ挑戦の軌跡を一冊にまとめています。これ一冊であなたも水害への備えの達人です!ぜひご覧ください。読んでいただきありがとうございました。以上、今回は捌水塾についての説明でした。次回からは活動内容について書いていく予定です!引き続き、新温泉クラウドファンディングのご支援をよろしくお願い致します! もっと見る







プロジェクトスタート開始おめでとうございます。 一つ質問させて下さい。 温泉としての再開は今後検討されているのでしょうか? 場としての復原、劇場としての使用なのでしょうか。 ご教授いただけましたら幸いです。