
さあ、いよいよこのプロジェクトも最終日となりました。
当初より、長期間の実施は考えておらず、「スパッとやってスパッと形にする」つもりで30日未満の期間を設定しました。
それでも、想定よりはるかに早い達成に至り、心から感謝しています。
今回は少し、原点のお話をさせてください。
■ 私と3Dプリンターとの出会い

初めて3Dプリンターでマスコンを作ったのは2017年。
当時、「すずはるさん」という方が自宅運転会を頻繁に開催されており、私は毎週のようにお邪魔していました。
出会いはBVE忘年会。それ以前から、Twitterで実物廃品の800形マスコンをBVEで操作している動画を見かけていて、「すごい人がいるな……」と認識していました。
初対面の私は、興奮のあまり「運転させてください!!」と懇願。
若さゆえの無礼を今でも思い出しますが、すずはるさんは快く応じてくれました。
その後、すずはるさんが知人から3Dプリンターを譲り受けたことがきっかけで、実物ではない、オリジナル構造のマスコンを自作し始めます。
段数切り替えへの対応や、後には並行リンク構造まで実装してしまうその技術力に、私は圧倒されました。

それを間近で見て、「自分も作ってみたい!」と自然と思うようになりました。
「3Dプリンター買って、自分で印刷すればいいよ!」というすずはるさんの一言に背中を押され、AmazonでFDM式の安価なプリンターをポチったのがすべての始まりです。

当時3万円のFDM式で、届いたのはパーツの山。アクリルフレームの組立、ベルト調整、キャリブレーション……全部自分でやる必要がありました。


すずはるさんにコツを教わりながら苦労して完成させたこの経験は、今思えばかけがえのない訓練でした。
3Dプリンターの原理が手に取るように理解でき、耐久性にも見た目にも優れた物を作る“地力”を養ってくれました。
■ すずはるさんのこと
すずはるさんは、鉄道に限らずメカや電子工作にも非常に詳しく、マスコンの段数切り替え対応、並行リンクの製作など、今思えば“常軌を逸した”レベルで先を行っていた方です。
私の技術も彼の背中を見て育ちましたが、私がしていることは、あくまでその延長線上。
完全にゼロから切り開いた彼の偉大さを、今でも痛感しています。
■ 突然の訃報
運転士を目指し、地元九州に戻って学科研修を終えた頃、すずはるさんの訃報が届きました。
あまりの衝撃に、会社も休んで、ただただ泣きました。
もう一緒に運転会ができない、ドライブにも行けない、話もできない。
体調が悪そうだったので、連絡を控えていた矢先のことでした。
そして何よりショックだったのが、彼の運転台やBVEデータなどの作品たちに、もう触れられないことでした。
■ 鉄道と共に立ち直る
失意の中でも、自分を支えてくれたのは「鉄道が好きだ」という気持ちでした。
初めて本物の列車を運転した時、驚きました。
BVEで体に染みついた速度感・距離感が、実車とまったく違和感なく繋がったのです。

BVEは、単なるリアル“風”のシミュレーターではありません。
本物を知れば知るほど、その完成度の高さに驚かされます。
だからこそ、「本当にリアルな自宅運転台を作りたい」と強く思うようになりました。
でも、もうすずはるさんはいない。
だからこそ、自分でやるしかない。
そう腹をくくり、独学でモデリングソフトを触り、1週間で左手ワンハンドルマスコンを完成させました。


■ そして製品となる
T字ワンハン、ブレーキ弁、ツーハンドル、新幹線……気がつけば次々と作る日々。
そんな中、当時一緒に すずはる運転会に入り浸っていた友人から「売ってみたら?」と勧められ、ヤフオクに出品。
軽い気持ちで数千円のつもりが、落札価格は数万円。震えました。
でも、購入者の方から届いた「買える機会を作ってくれてありがとう」の言葉に救われました。
作ったものを誰かが喜んでくれる。こんなにも嬉しいことはありませんでした。
これが、でんちょく電機のはじまりです。
■ でんちょく電機として
それから5年、テレビ出演や雑誌掲載もして頂いたり。出荷台数は120台を超えました。
本当に、本当にありがとうございます。
そして今回、ついに夢だった「金属製マスコン」が形になりました。

試作品は内部構造のみの段階ですが、今後も一切の妥協なく完成させていきます。
■ この金属マスコンでやりたいこと
・レンタルシミュレータ
シミュレータ筐体をイベントや施設に貸し出すことで、体験機会を増やす。
・BVE運転会 全国版
金属マスコンの高耐久・高可搬性を活かし、全国各地で運転会を開催。BVEの輪を広げていきます。
・The Crew Lounge(鉄道シミュレータBAR)
運転台・車掌台を常設した“鉄道×バー”を10年以内にオープンさせたいと考えています。
これまで「夢」として語っていたことが、今回のクラウドファンディングを通じて、「現実の目標」になりました。
まずは、これまでのご支援に深く感謝申し上げます。
クラウドファンディングは 本日が最終日 です。
「ちょっと気になる」「応援したい」と思っていただけた方、最後のご支援・拡散をよろしくお願いいたします。
最後の最後まで、駆け抜けます!



